最後ノ決戦 1話 突入前日
その日の夜、《メージェント》全員が二期生の部屋に集められた。
「皆、集まったわね」
全員の顔を見て、詩乃が言う。
「……それでは、これから重要なお話をいたします」
▫▫▫
明日の午前10時、《反組織部隊》の施設へ強行突破をいたします。
この強行突破の目的は、組織員の捕獲及び、水嶌汐莉の保護となります。
念の為、メンバー全員には『防弾・防刃ベスト』の着用をお願いします。
施設の辺り一帯は、警察の特殊部隊によって包囲されます。
そこら辺は、一般の方々に被害が及ばないよう配慮すると、上の人間から聞いております。
過去一危険な事案ではありますが、皆様の協力無くして成功はありません。
どうか、よろしくお願いします。
▫▫▫
そう詩乃が言うと、頭を下げる。
「……やるしか、無いですね」
智利が言うと、皆は頷く。
「汐莉さんは奥に閉じ込められていると考えて……誰が行きますか」
めいが口を挟む。
「あの、行かせてください」
私が割って入る。
「塩小路、それは危険過ぎないか?そこは先輩に任せた方が……」
ネオンそう言うが、私は首を横に振る。
「そうね、私が付き添うのであればって思うんだけど、どう?」
そう詩乃が入る。
「……それだったら」
私がそう言うと、詩乃は頷いた。
「じゃあ皆、明日はよろしくお願いします」
詩乃が言うと、深々と頭を下げた。
▪▪▪
(……ふぅ)
皆が解散してから、詩乃はまだ部屋へ残っていた。
資料製作の残りを、片付けていた。
「明日、私も死ぬかも知れないわね」
そう、詩乃は呟く。
不謹慎だが、そうなる可能性も拭いきれないからだ。
「詩乃殿、少々良いか。話がしたくてな」
剛条寺巡査部長が、話しかけてきた。
「はい。資料も大分片付いたので」
剛条寺巡査部長は頷いて、机の向かいに座る。
「で、お話というのは?」
詩乃が聞くと、彼は物悲しそうな顔をする。
「この一件が終わったら、警察を辞めようと思っていてな」
その言葉に、詩乃は言葉を失う。
余りにも突然過ぎたからだ。
「……どうして、辞めようと?」
「こうなってしまったのは、こちらにも責任があると考えていてな。来る前に、仁川刑事部長にも事情を話して辞表届けを預けている」
「そんな、そんな事しなくても……」
詩乃が言うと、剛条寺巡査部長は首を横に振る。
「警察側も、責任を取らなければならない。それだったら、私が責任を負う方が筋だと思う」
そう返され、詩乃は俯く。
▫▫▫
「私達、どうなるんだろう」
詩乃と剛条寺巡査部長の話を部屋の外で聞きながら、めいが呟く。
「二期生は事実上解散して、三期生と合流となるかもしれませんね」
そう智利が返す。
「……そんなの、嫌」
まいがそう呟く。
「二人が居なくなったら、嫌だ。私、絶対、嫌……」
まいは目に涙を溜め、口唇を噛み締める。
「それなら、一つ僕から。二人共、着いてきてくれますか」
そう智利が言い、部屋へ入る。
それに釣られ、まいとめいも入っていく。
「……あら、三人とも。聞いていたのね」
そう詩乃が言う。
「すいません、剛条寺巡査部長が入るの見てしまって」
そう、めいが言う。
「あの、お二人。僕から、一つ提案させて頂きたくて」
智利が口を開く。
「なんだね、智利殿」
剛条寺巡査部長が、返す。
「辞めても……どうか、僕らの仲間で居て欲しいと思いまして。外部でも、非公式でも……それでも良いので、完全に身を退くのは、考え直して頂けませんか」
そう言って、頭を下げる。
二人は、黙り込む。
「……わ、私も、智利君と同じ、考え。お二人が居たから、私、成長できた……だから!」
まいも頭を下げる。
「私も、そう思います。……お願い、します」
めいも、そう付け加える。
「三人とも……」
「詩乃殿、如何なさいますか」
剛条寺巡査部長が、詩乃に聞く。
「……分かったわ。形式の上では辞めるけど、暫くしたら、外部として貴方達と合流するわ」
そう聞いて、三人は安堵の表情を見せた。
▫▫▫
「これで良かったのですかね、詩乃殿」
三人を見届けた後、剛条寺巡査部長が言う。
「ええ……やっぱり、取っ捕まえる方が性に合うのかもしれないわ」
そう言って、詩乃は微笑んだ。
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その頃、三期生の部屋では。
「……姉ちゃん」
ベベロが、私に話しかけた。
「ん、どうしたの。ベベロちゃん」
「なんか、暗い顔しとるから……心配になってな」
ベベロが、そう返す。
「心配は、俺達もそうだぞ」
ネオンの声がし、三期生の皆が入ってくる。
「翠子さん、本当に良いんですか。危険な仕事を請け負うなんて」
そう冬馬が言う。
「こればっかりは、私がやらなくちゃって感じていてね。詩乃さんも居るから、大丈夫だと思うし」
その時、のぼるが上着のポケットから、何かを取り出した。
それを私に渡す。
「……これ、実家の近くにある神社のお守りです。絶対に、生きて帰ってください」
そうのぼるが言う。
私は、そのお守りを見る。
『安全祈願』、と書かれている。
「皆、明日……頑張ろう!」
私がそう言うと、皆は頷いた。
▫▫▫
「樹也巡査?」
雷都は、部屋の外に居た樹也巡査に話しかける。
「ああ、雷都さん。失敬、皆が話しているのを見かけて……」
「心配、ですかね?あの子達の事」
雷都に言われ、樹也巡査は苦笑いをする。
「まあ、そうですね。いくら能力者とはいえ、高校生が危険が伴う場に向かう訳ですから」
「あの子達なら、きっと大丈夫ですよ。……何かあれば、サポートをお願いします」
そう雷都が言うと、樹也巡査は頷いた。




