第15話 憾みと哀しみ、それから
汐莉は、目が覚めた。
今自分が居るのは、ちょっとした倉庫みたいだ。
(……いたた、全身が痛いわね)
誰かにあちこち殴られたような、そんな全身の痛み。
それに手足が縛られていて、身動きは不可能だ。
「目覚め、か?」
男性の声が聞こえた。
「……あんたっ、誰よ」
声を振り絞って、聞いてみる。
「分かっているだろうに、どうして聞くんだね」
目の前に現れた人を見て、汐莉は目を見開く。
「武瑠……!」
「その名前を言われるのは、何時ぶりだろうね」
テイトが言う。
「あんた、私をどうするつもりよ」
汐莉は更に聞く。
「勿論、決まっているだろう?《メージェント》の輩を、誘き出すつもりさ。ついでに、警察の野郎もね」
テイトは、少し笑いながら返す。
「……人を一人殺しといて、よくそんな事を言えるわね」
負けじと汐莉が返すが、その言葉にテイトは目を見開く。
怒りと憎しみのオーラを感じる。
「貴様らこそ、俺の姉を殺しといてよく言えるな!」
「あれは、私の責任でもある。《メージェント》の後輩達は関係ない!」
そう汐莉が返した瞬間、テイトが蹴りを入れる。
その束の間、テイトは汐莉の胸ぐらを掴む。
「それ以上言うな、この野郎。部下であろうが、なんだろうが……《メージェント》を潰す目的は変わりはねぇよ」
その言葉を言うと、テイトは部屋を出た。
(……ほんと、こうなるんだったら……)
テイトの後ろ姿を見ながら、汐莉は目に涙を溜めた。
▪▪▪
私が施設へ顔を出すと、詩乃が三期生の部屋に居た。
「ちょうど良かったわ。貴女のお母さんの件でね」
開口一番、そう詩乃が言う。
「どうか、しましたか?」
私がそう聞くと、詩乃は少し哀しそうな顔をする。
「汐莉が残した手紙にね、貴女のお母さんの仏壇に手を合わせたいっていう文面があって。今、彼女が居ない分……私がしなければって思っていて」
「行ってこいよ、塩小路」
ネオンが口を挟む。
「……はい。それでは、寮の部屋に案内しますね」
二人は、部屋を出た。
▫▫▫
寮の部屋へ案内する。
父が、出迎える。
「確か、二期生の隊長さんでしたな」
父がそう言うと、詩乃は頷く。
「あけみさんの仏壇に、手を合わせたいと思いまして」
詩乃がそう言うと、父は案内する。
仏壇の扉を開け、詩乃は手を合わせる。
「あけみさんの事、聞いていますか」
詩乃が聞くと、父は頷く。
「翠子から聞きました。……弟が居たことは知っていたのですが、このような事だとは知りませんでしたが」
「そうでしたか。……それともう一つ、お伺いをしたくて」
詩乃は、紙を出す。
《反組織部隊》の潜伏場所とされる、外観の写真だ。
その写真を見て、父は少し考える。
全体をまじまじと見た後、父が口を開く。
「……もしかしたら、あけみの個人事務所があった場所かもしれません」
「それ、本当ですか!?」
詩乃は少し驚いた声を出す。
「はい。この外観、特殊だなと覚えていましてね。家賃が安い所を探していて、ようやく見つかったと話してくれた事を思い出しましてな……」
それを聞いた詩乃は、頭を深々と下げる。
「……ありがとうございます……!」
▫▫▫
詩乃は、刑事部長の部屋へと向かう。
扉を叩くと、仁川刑事部長の声がした。
「失礼します」
詩乃は中へ入っていく。
「どうしたのかね、詩乃殿」
「《反組織部隊》の居場所、分かりました」
詩乃が言う。
「それは本当か」
仁川刑事部長がそう返すと、詩乃は頷く。
「一応、塩小路さんの父上に施設の写真を見せました。……そうしたら、あけみさんの個人事務所があったビルだと仰って。遠目の偵察で、確認が取れました」
「そうか」
「仁川刑事部長、どうしましょうか」
詩乃が言うと、仁川刑事部長はゆっくりと席を立つ。
「明日《メージェント》の諸君で強行突破をし、汐莉殿の保護と《反組織部隊》全員を確保をしていただきたい」
▪▪▪
「……〈ウェイト〉の輩は、主の姉が構えていた場所に占拠か」
イヤホンから流れる音声を聞きながら、白賀谷がそう呟く。
「本当、あの主は馬鹿な事をするねぇ。《メージェント》を潰したところで、実姉が喜ぶとでも思ってるのかよ」
事情を全部知っている白賀谷には、彼奴の考えている事が正直分かりかねない。
「それに、出くわしちゃいけねぇ人物が《メージェント》に居るっつーのに。仁川刑事部長も無茶な事をするね」
そう呟きつつ、白賀谷は携帯を取り出す。
そして、電話をかける。
「あ、どうも。〈ウェイト〉の居場所、分かりましたよ。明日に強行突破らしいです……はい、僕もいきますよ……分かっています。誰も傷付かないように気ィつけます」




