第14話 学校、襲来
(……まさか、隊長が居なくなるなんて)
お昼、父が作ってくれたお弁当を食べながら、私は回想していた。
数日前の事だ。
二期生の詩乃隊長から、彼女が居なくなった事。
それが《反組織部隊》が企んでいた事。
「どうにか、汐莉を確保して欲しい」と言われた事。
(まあ、三期生が手助け出来ればね)
そう思いつつ、食べ終わって弁当を片付けた。
▪▪▪
教室へ戻り、授業の準備をしていた時だ。
外から拳銃が発砲する音が聞こえてきた。
(……っ!?)
私は窓から外を見る。
警備担当の警官が、誰かに向かって発砲しているが……
「あのマント、もしかして!」
間違いない、《反組織部隊》だ。
「何か騒がしい音がしているが」
その時、担任の先生が教室へ入ってくる。
「先生!今すぐ、生徒を安全な場所へ連れていってください!」
私はそう言いつつ、教室を出る。
「塩小路、あまり無茶な事は……」
後ろから先生の声がする。
私は、その声に一回立ち止まる。
「相手は、突然変異の持ち主です。対処出来るのは、変異を持った人だけですから」
その言葉に、先生は静かに頷いた。
▫▫▫
「塩小路!」
正面玄関を出ようとした所で、ネオンに話しかけられる。
「何でまた、俺らの学校を狙うのか」
靴を履き替えつつ、ネオンが呟く。
「それは分かりません……が、今は対処するのが優先です」
その言葉に、ネオンが頷く。
どうやら、学校に来た《反組織部隊》は一人のようだ。
「後は任せてください!生徒の安全を、どうか!」
警官の人に向かって、私が言う。
「分かった、よろしく頼む」
警官は、学校の方へ向かう。
「《メージェント》の人、オデマシねぇ」
爪を噛みながら、相手が言う。
「……気を抜くな、塩小路」
ネオンが小声で、そう言う。
「分かってます」
「ウチの変異、なめんなヨォ!」
相手が言うと、『分身』が現れる。
「憑依……!」
そうネオンが呟き、『分身』に殴り掛かる。
私は手に力を入れる。
「『スクリュー・ウォーター』!」
▫▫▫
あれから、何分経っただろうか。
全然キリがない。
いくら倒しても、『分身』が現れてくる。
いつかの自分達が捕まえた、『絵を具体化する術』みたいだ。
「アンタら、まだまだねぇ。これでチェックメイトッ」
『分身』が襲いかかる。
「城川先輩、私の背に隠れて!」
私は、そう言う。
背中にネオンの気配を感じつつ、私は天に向かって手を伸ばす。
「『ウォーター・ウォール』!」
『分身』は、水の壁に弾かれる。
「チッ」
そう、相手が舌打ちした時だ。
私達と相手の間に、急に誰かが割り込んで来た。
『彼女』は、《反組織部隊》のマントを着ているが……
「隊長……!?」
どう見ても、汐莉だ。
私とネオンは、理解が追い付かない。
「あら、もう『コピー』したのね」
闘っていた相手が、そう呟く。
そして私達が瞬きをした瞬間、『彼女』は虎に姿を変える。
「マズイ、ここは一旦距離を取るぞ」
ネオンがそう言った時だ。
何処からか、玉みたいなのが飛んできた。
それから、煙が出てくる。
「後輩に手、出すんっすか。堪忍してください!」
誰かが、また割り込んでくる。
煙が消えたかと思うと、男性が私達の前に立っている。
「………」
汐莉の姿に戻った『彼女』は、相手の人に後ろ指を指した。
「仕方がないねぇ、遊戯はここまでヨォ。それじゃっ」
二人は、それ以上手を出さずに去っていった。
▪▪▪
「お二人、怪我は無いっすか」
男性が、そう話しかける。
「大丈夫ですが、貴方は?」
ネオンがそう言うと、彼は懐から名刺を出す。
「シラガヤ鍵屋の、白賀谷珠希と言います。鍵関連の突然変異を持っていて、たまに警察や《メージェント》の手伝いをしているっす」
白賀谷は、そう言う。
「でもどうして、私達の所に?」
白賀谷は、今《メージェント》が抱えている事情を把握していると話した。
たまたま通った時に、この騒ぎに出くわしたとの事だ。
「でも、隊長があの姿で来るとはな」
ネオンがそう言う。
「そう言えば」
私は、さっき相手が「もう『コピー』をしたのね」と呟いた事を思い出した。
それを白賀谷に話すと、顔を曇らせる。
「さっきの話、僕から《メージェント》に一回話を通しますね。何か、嫌な気がするんすよ」
そう、白賀谷が言う。
学校に被害は無かった為、そのまま私とネオンは学校へ戻っていった。
「……さて、行きますか」
そう白賀谷は呟くと、学校を後にした。
▪▪▪
「失敬、詩乃さんは居ますか」
白賀谷は、特別施設の『Ver.205』の部屋へ出向く。
「どうしたの、白賀谷君」
資料に目を通していた詩乃が、そう返す。
「さっき、後輩の学校に《反組織部隊》の輩が押し入ったんっすよ」
「ああ、その話は剛条寺巡査部長から話を聞いているわ」
白賀谷は、表情を曇らせる。
それに、詩乃は気付く。
「どうしたのよ、白賀谷君」
白賀谷は、事の一部始終を話した。
それを聞いた詩乃は、血の気が引くのが分かった。
「もしかして、既に彼奴らの所に居るって事よね」
詩乃の言葉に、白賀谷は頷く。
「……分かったわ。部下の保護と情報提供ありがとう、白賀谷君。この事は上の人間に話しておくわ」
「詩乃さん」
「何?白賀谷君」
「……僕に出来る事があれば、何でも言ってくださいっす。ここの《メージェント》じゃ無いっすけど、汐莉さんと詩乃さんにはお世話になりましたから」
そう白賀谷が言うと、詩乃は微笑む。
「その時は、よろしくね……白賀谷君」




