第13話 彼が遺した道しるべ
あの一件から、詩乃は施設へ戻った。
「詩乃さん、一体どうしたんっす?こんな夜遅くに……」
部屋には、知り合いの鍵屋である白賀谷が居る。
「……これ、調べて欲しいんだけど」
詩乃は、白賀谷に鍵を渡す。
「何の鍵なんです?これ」
白賀谷が聞く。
「詳しい話は後で話すけど、重要な情報が隠されているモノの鍵なのよ」
そう詩乃は返す。
「……そうすか。じゃあ、調べますよ」
白賀谷はタブレットを取り出し、鍵を調べる。
ものの数分で、調べ終わった。
「これ、部屋の鍵ですね。千代田区の……多分っすけど、施設があるここら辺のアパートじゃないですかね?」
(……もしかしたら)
丹緒が住んでいた部屋かもしれない。
「ありがとう、白賀谷君。これ、気持ち程度だけど」
詩乃は懐から、封筒を渡す。
「いいっすのに」
白賀谷は封筒を押し返す。
「受け取って欲しいわ」
「……じゃあ、そうしますわ。また何かあれば、呼んでくださいっす」
白賀谷は、部屋を出た。
(流石に、今日は遅いかな)
そう詩乃は思い、寮へと戻っていった。
▫▫▫
翌朝、詩乃は丹緒が住んでいたアパートの部屋へ向かった。
扉に鍵を入れてみると、鍵が回った。
「……お邪魔、するわよ」
小声で言いながら、部屋へ入る。
机の上に、USBメモリーが置いてある。
(彼が渡したかったのは、これね)
その場でノートパソコンを開き、メモリーを挿す。
写真と音声データが残ってある。
「音声データ?」
写真は後で見るとして、音声データのファイルを開く。
その音声を聞いた詩乃は、血の気が引くのが分かった。
(……まさか!?)
詩乃はUSBメモリーを持って、彼の部屋を後にした。
▪▪▪
詩乃は、汐莉の部屋に向かった。
まだこの時間帯なら、彼女は出勤していないはずだ。
「汐莉、居るの?」
チャイムを鳴らし、呼び掛けるが……返事がない。
部屋の鍵は開いているみたいだ。
「邪魔するわよ」
中にも、汐莉は居ないみたいだ。
「遅かったかしら……」
ふと、部屋の片隅にある仏壇に目がいく。
そこに封筒がある。
「もしかして」
詩乃は封筒を手に取り、中から一枚の手紙を取り出す。
それを読んだ詩乃は、口唇を噛み締める。
「これは、報告するしかないわ」
そう呟くと、詩乃は部屋を出た。
▪▪▪
「……申し訳ありませんでした!」
刑事部長の部屋で、詩乃は仁川刑事部長に頭を下げる。
「なぜに、一連の情報を渡さなかったのだ」
そう、仁川刑事部長が返す。
「不確定なところで、情報を出すのはと思いまして」
少し頭を上げて、詩乃はそう言う。
「仕方がない。この件に関しては、今……汐莉殿の安全を確保が最優先だ。片が付いて、それから詩乃殿の進退を決める」
「はい」
詩乃は、お腹に力が入るのが分かる。
これは自業自得だ。
自分の判断で、仲間の一人が死に、もう一人が危機に晒されている。
途轍もない、重い任務を言い渡された。
「《メージェント》全員には、特に気を付けて行動するように」
最後に、そう仁川刑事部長が言う。
「……了解しました」
詩乃は、部屋を出る。
「隊長」
部屋の前に、二期生全員が居た。
「なんで、皆が?」
「詩乃殿には、重荷を背負わせてしまった……そう感じまして」
そう智利が言う。
「聞いていたのね、さっきの話」
詩乃が言うと、皆は苦笑いをする。
「……ともあれ、今から色々と考えましょう」
皆は頷き、歩き始めた。
▫▫▫
「汐莉さん、本当にこれで良かったんです?」
白賀谷が、そう汐莉に話しかける。
「いいのよ。元々は私が彼奴らに片を付けないとって、思ってね」
汐莉はそう返す。
「詩乃さんに全部、責任を負わすつもりっすか。それじゃあ、可哀想ですよ」
そう言われて、ふと詩乃の顔を思い浮かぶ。
今頃、私のせいで仁川刑事部長に色々言われてるだろうな。
「もちろん、私も責任を負うわ。詩乃だけ背負わせる訳にはいかない」
「だとしたら、もっと平和的に片を付ける事だって……」
白賀谷が口を挟むと、汐莉は胸ぐらを掴む。
「あんたに、私の何が分かるわけ?」
白賀谷は、汐莉の眼を見てぎょっとする。
……憎しみと、殺意に満ちた眼だ。
「そんじゃ、私は行くよ」
そう汐莉は言い、その場を後にする。
(まさか、こんなカタチになるとはな)
白賀谷は、汐莉の後ろ姿を見ながらそう思っていた。
▪▪▪
「さて、これからどうしましょう」
開口一番、智利が言う。
「……そうね。まずは、《反組織部隊》の潜伏場所を探さないとね」
詩乃はそう返す。
「野々羽君の資料から、何か、分かるのかな」
まいが横から口を挟む。
「唯一、外から撮ったであろう写真があるわ」
紙を一枚取り出す。
そこには、ビルの合間からとある建物を撮っているみたいだ。
「同じ場所を探すような形になりますね」
めいがそう言う。
「ええ。とりあえず、三期生の皆にもこれのコピーを渡すわ。それじゃあ、新たな情報を得るまでは、これを参考に……潜伏場所を特定してちょうだい」
「「了解!」」
皆は、部屋を出る。
「……三期生の皆にも、話をしなきゃね」
そう詩乃が呟くと、席を立った。
▪▪▪
白賀谷 珠希
汐莉や、詩乃とは知り合いの鍵屋。
突然変異は、『鍵の施錠を簡単に解除する術』。




