独りのタタカイ 3話 丹緒、幹部に面会され、それから
『幹部試練』が終わった。
翌日、改めて『幹部の一員』として紹介されるらしい。
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丹緒はあの『試練』があった部屋に、また招かれた。
幹部が全員、集まっている。
「お待たせしました」
丹緒が言うと、奥の玉座に座っていたテイトが頷く。
「改めて、ニオラには《反組織部隊》の、幹部勢に加わることになった。皆、よろしくな」
テイトが言う。
「……これが、幹部の一覧表です。目を通してください」
テルガが一枚の紙を渡し、丹緒は目を通す。
▫▫▫
テイト
突然変異:身体強化の術
突然変異『変化』:コピー能力
テルガ
突然変異:相手の意を自分の意に簡単に変える術
ジレラ
突然変異:多重分身を操る術
チェイ
突然変異:針を自在に操る術
ベータ
突然変異:突然変異以外の情報を無かったことにする術
▫▫▫
と、書かれている。
(『変化』?聞き慣れない言葉、だな)
そう、丹緒は思う。
「……聞きたいことが、あるようだな」
テルガがそう言う。
「『変化』の事、じゃんね?ウチかて、気になってたし」
幹部の一人、ジレラが言う。
「はい、『変化』は何かと思っていまして」
丹緒はそう返す。
「それは我輩から説明致そう。『変化』は突然変異の中でも、一部の人間に開花された『もう一つの技』さ」
テイトがそう挟む。
(身体強化に、コピー能力の『変化』か。なかなか厄介そうだな)
その話を聞きながら、丹緒はそう思う。
「テイト様、ニオラ殿はこれからどうされるのです」
ベータが口を開く。
「外部観察側として、活動と思っているのだよ。『重力無視』は、その方が良いと考えてな」
そう、テイトが返す。
(おいおい、マジかよ)
冷や汗をかくのが分かった。
……まいとめいに、目が触れる可能性が高くなる。
(まあ、仕方がねぇな)
下手に反抗すると、その時だ。
言葉に従う事にしよう。
「それでは、今日の活動を行うとします」
テルガが言うと、皆は頷いた。
▫▫▫
「アンタ、何か背負ってんの?表情が少し暗いけど」
外へ出る準備をしている途中、チェイに話しかけられる。
その言葉に、少し動揺する。
「……いや、何でもねぇよ」
声を少し震わせながら、返す。
「まァ、アタイが知ったこっちゃあない事ね。済まないね、聞かなかった事にして」
手を横に振りながら、チェイはその場を去った。
(……イチイチ、おっかねえな)
苦笑いしつつ、丹緒は外へ出た。
▫▫▫
「テルガ様、本当にアイツを幹部にして良かったの」
丹緒が外へ出る姿を見つつ、チェイはテルガに聞く。
「テイト様が言った事だ。それに反するのはナンセンスだろう?」
テルガはそう返す。
「……ま、それもそーね」
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『外部観察』は、突然変異の所持者を探すのが主な事らしい。
反抗心を持っているような所持者に、《反組織部隊》の存在を教えるのが役目とも言っていた。
(まぁ、程々にやるか)
これがしたくて、あそこに入った訳ではない。
だが、外の空気が吸える良い機会だ。
しばらくは、適当にそこら辺を散策するか。
「そういや、彼奴らも『発見器』を持っているんだな」
片眼鏡式の機械を触りながら、丹緒はそう呟く。
中身は違うだろうが、型式はどうも《メージェント》と一緒の物だ。
まあ考えてみて、テイトは元《メージェント》だからと言えば、道理だ。
(……っ!?)
何か気配がする。
丹緒は立ち止まり、周りを見渡す。
人混みの中に、まいとめいの姿が見えた。
彼女らも、こちらに気が付いたみたいだ。
(……クソッ、こんなときに限って!一旦ここは、離れよう!)
そう思うと、丹緒は反対方向に走り出した。
▫▫▫
「めい、あれ……野々羽君、じゃない?」
まいは、そう言う。
人混みの中、丹緒の姿がある。
「《反組織部隊》の服を着ているけど、間違いないわ!」
めいが返した瞬間、丹緒が走り出した。
「あいつ!」
まいとめいは、丹緒を追いかける。
……が、丹緒との距離はどんどん離れていく。
(……こうなったら、私の術で!)
めいは、袖からナイロンロープを出す。
「まい姉!ここは私が追いかける!」
街灯へロープを引っ掛ける。
「めい、気を付けて」
後ろから、まいの声が聞こえる。
「分かってる!」
身体にロープが戻る反動で、めいの身体が飛び上がる。
(……間に合って)
術を使って空を飛びながら、めいはそう思う。
丹緒は後ろを追ってる自分を見ながら、壁を走っていく。
(もうすぐ!)
近くまで寄った時だ。
丹緒が、こちらに向かって飛んだ。
「……ひっ!?」
避けようと思ったが、遅かった。
自分の鳩尾に、丹緒の蹴りが入った。
丹緒に抱きかかえながら、めいは地上へ降りる。
めいは、意識が少しずつ遠退くのが分かる。
「ねえ、なんで?」
力を振り絞って、めいは丹緒に聞く。
「許してくれ」
そう丹緒は呟き、その場を去っていく。
「……野々羽、君……」
そこで、めいは力尽きた。
▫▫▫
めいが再び目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。
《メージェント》の部屋だ。
「めい?」
横たわっている隣に、まいが居る。
「まい姉……」
目に涙が滲むのが分かった。
「……大丈夫、大丈夫」
まいは、めいの頭を撫でる。
「まい、めいの状態は?」
その時、詩乃が部屋に入る。
「目を覚ましました」
まいが言うと、詩乃は安堵の表情を見せた。
それから、詩乃にさっきの事情を話した。
詩乃の表情が、曇る。
「隊長?」
まいがその表情を汲み取って、聞く。
「……二期生と、汐莉を呼んできてちょうだい。話があるわ」
▪▪▪
二期生と、汐莉が部屋に集められた。
「話って何なのよ、詩乃」
汐莉が聞く。
「野々羽君が、《メージェント》の外部組織から離れた話は知っているわよね」
詩乃が言うと、皆は頷く。
「実は黙っていたのだけれど、その頃から私に『匿名のメール』が来るようになったの」
部屋が少し暗くなり、プロジェクターから画像が写し出される。
そこには、《反組織部隊》の情報が載っている。
「……もしかして、それ野々羽君が送っているってこと?」
めいが言うと、詩乃は頷く。
「時期が重なっていたから、もしかしてって思ってたけど……確信が無かった。でも、まいとめいが彼らの服を着た野々羽君を見かけたって話をきいて、ね」
「野々羽殿も、無茶な事をしますよね」
智利が口を挟む。
「汐莉、この事は上の人間に話す?」
詩乃が聞くと、汐莉は考え込む。
「……いや、これはうちらの情報だけにしておきましょう。下手に言ったら、私と詩乃の責任じゃ済まされないわ」
汐莉は、静かに言う。
「でも、このままじゃ野々羽君は彼らに殺られるかも……」
めいが口を挟む。
「分かっている。分かっているけど、それは彼が一番よく理解している。だからこそ、無茶な事をしていると思うのよ」
汐莉はそう返す。
「とりあえず、私たちは彼を見守るしかないわね」
詩乃が言うと、皆は頷いた。
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「めいには、本当に申し訳ねぇな」
丹緒はそう呟く。
(……でも、これしか無いんだ)
俺に出来る事は、これしかない。
《反組織部隊》を潰すなら、生命に換えてまでもやる。
そう思いつつ、丹緒は帰路へ歩いていった。




