独りのタタカイ 2話 丹緒、幹部の試練を受ける
丹緒が《反組織部隊》に潜入した翌日の事だ。
「ニオラ、良いか」
テルガに話しかけられる。
「は、はい……?」
広めの部屋に案内される。
「君にはこれから、『幹部試練』を行って貰う」
「……ヴェルベイト?」
「テイト様から『名前』を授かったのは、幹部になれるという意味合いがある。その試練を『幹部試練』と言う」
テルガが説明する。
(……まさか、俺が幹部候補だとはな)
丹緒は緊張と共に、冷や汗をかく。
「チェイ、相手しろ」
カーテンの方にテルガが言うと、一人の女性が出てきた。
「ふぁーあ。久々の『幹部試練』ね」
チェイと呼ばれた彼女は、あくびをしながらそう言う。
「チェイの突然変異は、針を自在に操る術だ。気を抜くと針地獄に襲われる……相手を殺す気で、相手にしろ」
そうテルガが言う。
(針地獄……殺るつもりで相手にする……)
丹緒はお腹に、力を入れる。
チェイが上着のポケットから針の入った箱を取り出し、両手に針を大量に持つ。
彼女が目を見開くと、手に持った針が宙に浮き始める。
「ほんじゃ、アンタの変異……見せて貰おうか!」
手がこちらに向いたかと思うと、針が飛んでくる。
丹緒は真上にジャンプをし、天井に足を付ける。
まるで自分が標的になったかのように、針の方向が曲がる。
(標的攻撃系か)
そう丹緒は思いつつ、天井を走り出す。
「逃がしやしねぇよ!」
チェイの声が聞こえると、走る方向にも針が飛んでくる。
(くそ、こうなったら)
丹緒は地上へ降りる。
それに合わせて、針が動く。
足に力を、瞬時に入れる。
(……今!)
チェイの方向に、丹緒は飛び上がる。
彼女の真上の天井に足をつけ、そのままチェイの方に急降下する。
そしてチェイの真後ろに着地をする。
「そこまで!」
彼女の手を取ろうとした時、テルガがそう言った。
宙にある針は、全部チェイの方に向かって集まっていった。
「……『幹部試練』はここまでだ。君には、ひとまずの能力があると見た。テイト様には、君を幹部として正式に迎え入れる事を伝える」
そうテルガが言うと、部屋を後にした。
▪▪▪
「あーん、アタイの負けね」
事が終わった後、チェイはそう呟く。
「……なあ」
丹緒はチェイに話しかける。
「……んー?なに?」
「チェイは、どうして《反組織部隊》に?」
丹緒が聞く。
「そうね。一つだけ言えば、テルガ様に見出だされたからよ」
「……そうなのか」
丹緒が返すと、チェイは頷く。
「アタイ、この術が嫌でね。針なんかより、もっと違うものを操りたいって思っていたの。……でも、そのモヤモヤしていた時期にテルガ様に出会って、幹部に抜擢されたの。アタイの術で、相手を翻弄してくれってさ」
そうチェイが言うと、ニヤッと笑う。
テルガの突然変異は、『相手の意を自分の意に簡単に変える術』だと聞いた。
嫌だと思っていていた術でも、仲間の力になれるから……と洗脳したのだろう。
(また、情報を得た)
丹緒はそう思いつつ、《反組織部隊》の自室へ戻った。
▪▪▪
詩乃は、日報を作っていた。
その時、パソコンに一通のメールが来たと通知が来た。
メールボックスを開く。
(……あら、また匿名のメールだわ)
『《反組織部隊》の部屋の写真が載ったメール』のアドレスと同じものから来た。
開くと、こう書かれていた。
▫▫▫
《反組織部隊》には、『幹部試練』と呼ばれる試練がある。
それには、テイトから『名前』を授かった者にしか与えられない。
『幹部試練』に受かると、正式に幹部として扱われる。
幹部以外にも人員が居るみたいだが、そいつらには『名前』は無い。
どうやら、幹部は6人居るみたいだ。
P.S. 幹部に抜擢されるのは『テルガ』の術が大きいと感じる
▫▫▫
(テイトとテルガ以外にも、『通名』があり『幹部』の人物が居るって事ね)
そのメールを見つつ、詩乃は思う。
そして、テルガの術が幹部の件に絡んでいるとは。
……流石、No.2と言ったところか。
「詩乃殿?」
「ひゃっ?」
呼び掛けた声に、詩乃は驚いた。
そこに、智利の姿はがあった。
「驚かせてしまって、すいません。まい殿から、報告書を渡してくれと頼まれましたので」
そう智利が言い、紙を渡す。
「そう、ありがとう」
詩乃が返す。
「……大丈夫ですか?詩乃殿」
智利が聞く。
「ええ、まあ。大丈夫よ」
そう詩乃が返すと、智利は頷く。
「それでは、失礼します」
そう言い、智利は部屋を出た。
(……ふう、危ないわね)
見届けると、そう詩乃は思う。
「このメールは、もうしばらく秘密にしておかないと」
そう呟きながら、詩乃はあのメールを閉じた。




