第12話 巨大な『影』と裏の『陰』
久しぶりに、私は冬馬と組んだ。
「テスト、お疲れ様です」
碑文谷警察署へ挨拶を済ませ、私は冬馬にそう言う。
「ありがとうございます。あとは、結果のみです」
冬馬がそう返すと、私は頷く。
「それじゃあ、行こうか」
二人は街中へ繰り出した。
▪▪▪
途中、小休憩を挟んでいる時だ。
「……?」
冬馬が、空を見上げる。
「冬馬君、どうかした?」
「いや、あれ……」
冬馬が指差す方を見ると、何やら黒い物影が見える。
人影みたいにも見えるが、それが徐々に大きくなり建物を呑み込んでいく。
「何か様子がおかしいわね。行ってみようか!」
私が言うと、冬馬は頷いた。
数分で現場に着いた。
影は見たときよりもさらに大きくなり、日が全く当たらない。
「影のところに『発見器』が反応しています。犯人は、中に居ると思います」
冬馬が言う。
「……二人共!」
その声は、詩乃だ。
智利も一緒に居る。
「遠目からみて、どうもおかしいと思ったら……またやらかしてるわ」
詩乃が少し呆れたように言う。
「相手は、手配格レベル5。『自身の影を巨大化して周りを見えなくする術』の持ち主です。僕達4人で片付けましょう」
智利が言う。
「「了解!!」」
▫▫▫
「目的対象完了、初回制限は3分5秒!」
冬馬が眼帯を外し、そう言う。
それを聞いた智利は、目を見開く。
「影の弱目、右足。そこに奴がいるはずです」
「……詩乃さん、どうしたら?」
私は詩乃に聞く。
「技を影の中に当ててちょうだい!」
詩乃はそう返す。
私は頷き、手に力を入れる。
「『ジェット・ウォーター』……!」
巨大な人影の右足に、勢いよく技を繰り出す。
一瞬だが、影が揺らめいた。
「……発見」
詩乃はそう呟くと、走り出す。
「八ヶ家家秘伝、ビィエン!」
相手に拳を繰り出したと共に、衝撃波が放たれる。
(……す、凄い衝撃……!)
空気が震えるのが分かる。
これを拳法と共に喰らったら、本当に一溜りもない。
相手は気絶し倒れ、『影』は消え去った。
▪▪▪
「……お、俺は」
警察に引き渡す前、相手が目を覚ました。
「あんた、またやらかしたわね」
詩乃が呆れたように言う。
「八ヶ家さん!お、俺、違うんだ!」
相手が慌てる。
「……あの、詩乃さんが『また』って言うのは?」
私が智利に小声で聞く。
「彼、一度僕達で捕まえた事があるんです。……まあ手配格が5とはいえ、天黑にずめほど凶暴な技ではない分、刑期を早く終えられたんですけどね」
そう智利が返す。
「違うって、どういう訳?」
詩乃が問い詰める。
「ネットで知り合った奴に、『今日ここで、技を出して欲しい』って言われて……」
相手が言うと、詩乃は胸ぐらを掴む。
「……誰に!誰に言われたのよ!」
「詩乃殿、落ち着いてください!」
慌てて智利が合間に入る。
その時、パトカーが来た。
「後で、じっくりと聞くわよ」
詩乃がそう言うと、彼を明け渡した。
「二人共、今回の報告書は私達から出すわ」
明け渡した後、詩乃が言う。
「でも、見つけたのは僕達で……」
冬馬がそう返すと、詩乃は首を横に振る。
「ネットの件が、どうも気になるのよ。私達で追加の調べをする分、報告書に書かないといけないから」
「……詩乃殿の言う通りです。ここは、任せてください」
智利も言う。
「ねえ、冬馬君。ここは素直に任せた方が良いんじゃない?」
私が言うと、冬馬は頷いた。
▪▪▪
詩乃と智利は、施設へ戻った。
そのまま、取り調べ室の方へ向かう。
今回捕まえた秕罫かやなの取り調べを、マジックミラー側の部屋から見る。
『詩乃殿から事情を聞いているが、誰に言われて術を出したんだ』
剛条寺巡査部長が聞く。
『匿名掲示板で知ったヤツから、だ』
目線をそらしながら、かやなはそう返す。
『その掲示板ってのは、どれだ?』
さらに、剛条寺巡査部長が聞く。
『……』
かやなは口を塞ぐ。
「ねえ、どう思う?」
詩乃は智利に聞く。
「そう、ですね。パソコンや携帯を押収すれば良いと思うんですけど、起こした事は単純に術を出しただけですし、あの様子では礼状が出ると限りません」
そう智利が返す。
「……野瀬君に頼む?思考読み術なら、何か手掛かりが掴めそうと思うけど」
「その方が賢明ですね」
詩乃は、剛条寺巡査部長を部屋の外へ呼んだ。
そして、事情を話す。
「確かに、詩乃殿の言う通りですな」
そう剛条寺巡査部長が言うと、急いでのぼるを呼び出した。
数分で彼はやって来た。
「悪いわね、急に呼び出して」
詩乃が言うと、のぼるは首を横に振る。
「……いいえ、自分がやれることなら」
取り調べが再開される。
詩乃と智利は、再びミラー側から見る。
『……なあ、誰に頼まれたのか知りたいだけなんだ』
剛条寺巡査部長が、そう言う。
かやなは、口を開かない。
その時、のぼるが口を手で覆い塞ぎ、驚いた表情を見せる。
『大丈夫か?』
剛条寺巡査部長が聞くと、のぼるは口を開いた。
『……《反組織部隊》が、絡んで、いる……』
▪▪▪
『《反組織部隊》が絡んでいる』
……その言葉の裏取りをする為、数日後に押収物の特別礼状が出た。
押収されたパソコンから、『闇界隈情報』というサイトにアクセスしていた事、そこから《反組織部隊》の『テルガ』連絡をしていた事が分かった。
その事に関して、かやなは観念したのか事実を認めた。
「テルガって、No.2の奴じゃない」
押収物の報告書を見ながら、詩乃が呟く。
「……それ、なぜ知っているのです?」
智利が聞く。
「名前が明らかになっているの、テイトこと武瑠とテルガだけなのよ」
その声は、汐莉だ。
「話は剛条寺巡査部長から聞いているわ。また厄介な奴と関わったわね……」
「テルガの突然変異って、何なんです?」
智利は口を挟む。
「『相手の意を自分の意に簡単に変える術』よ。マインドコントロールを簡単にやってのけるから、とても質の悪い奴だわ」
そう汐莉が説明する。
「……汐莉、どうする?」
詩乃が聞く。
「とりあえず、闇界隈情報の監視を強化した方が良いわ。また、このような事が起きるかもしれないからね」
「剛条寺巡査部長に、僕から伝えておきます」
智利が言うと、二人は頷いた。




