《メージェント》の日常:雷都の能力の活用法、再び
桜谷崎高校のテスト期間が終わったとの事で、雷都は内勤側に戻る事になった。
(昨日は、散々だったな)
相手に投げられた事を回想しながら、報告書をまとめる。
最近、ようやく配電盤の工事が入ったと汐莉から聞いている。
ようやく自身の能力を使わないで安心だ、そう思った時だ。
急に停電になり、辺りが暗くなる。
「……おいおい、勘弁してくれ」
そう、雷都が呟く。
「雷都殿」
智利が部屋に入ってきた。
「智利君、どうかしたか?」
雷都が聞くと、智利は苦笑いをする。
「どうやらここら一帯、停電らしいのです」
「それは仕方ない、な……」
「雷都くーん!緊急事態よぉ!」
汐莉が入ってくる。
「事情は智利君から聞いています。とりあえず、俺がまた緊急電源になりますよ」
雷都が言うと、汐莉は頷く。
「流石、雷都くんね。話が早いわ……それじゃあ、よろしくっ」
▪▪▪
雷都は電気室へ向かい、緊急用の配電盤に自身を繋ぐ。
「雷都殿、電力会社の公式サイトによりますと……約1時間後に復旧するとの事です。それまで、よろしくお願い致します」
智利がそう伝える。
「智利君、ありがとう」
雷都が言うと、智利は頷いた。
「これくらい、なんのこれしきです。電気が復旧した際に、また声をかけます」
そう智利は言い、電気室を出た。
「とりあえず……復旧するまで、なんとかするか」
▫▫▫
(ふう。雷都くんが居てくれるのは、心強いわね)
資料の整理をしながら、汐莉はそう思う。
突然の停電でも彼の能力があれば、とりあえずは何とかなる。
仲間に招き入れて良かった……そう思った時だ。
再び、停電になったのだ。
「ちょっと、ちょっと。どういう事よ」
思わず、汐莉は言う。
「何かあったのかしら……」
気になって、汐莉は電気室へと向かう。
「汐莉殿」
智利が汐莉を呼び止める。
「……あ、智利くん」
「雷都殿に、何かあったのでしょうか」
智利も同じような事を考えたみたいだ。
「急いで行きましょう」
二人は電気室へ入る。
そこに、雷都が居るのだが……
「雷都くん、雷都くーん」
汐莉が話しかけても、雷都は反応を見せない。
「なんか、目を開けたまま気絶してるわね」
その言葉を聞いた智利は、辺りを見渡す。
その時、僅かな鳴き声が聞こえた。
「汐莉殿!この部屋にネズミが居ます!」
「ネズミ!?」
智利の言葉に、汐莉は驚く。
「雷都殿はネズミが苦手で、見ると目を開けたまま気絶するのです」
「……んもー、仕方ないわね」
汐莉はしぶしぶ『動物替え』で猫の姿になり、ネズミを仕留め施設の外へ放り出した。
その後、何とか施設周り一帯の停電は解消された。
▪▪▪
「……んぉ、ここ、は」
雷都は、自身の意識が戻ったのが分かった。
部屋のソファーに横たわっている。
……ここに、戻らされたのか?
緊急用の配電盤に、自身を繋いでいた事は覚えているのだが。
「あら、大丈夫?」
汐莉が気が付いたのか、そう話しかける。
「隊長、俺、どうしてここに?」
「貴方、ネズミを見たことを覚えていないのね」
汐莉は少し呆れたように、言う。
「あっ」
ネズミの声が聞こえたかと思うと、目の前に現れたのを思い出した。
……多分だが、気絶した時に電気が切れたんだろう。
「その、すいません」
事情を把握し、汐莉にそう謝る。
「いやいや、謝らなくていいわよ。貴方の苦手なモノを知らなかった、私もいけないしね。……今度から、ネズミ取りを電気室に置いておくわ」
そう汐莉は返す。
「……そういや、どうしてネズミが苦手なのを知ったのです?」
雷都が聞く。
「智利くんから聞いたのよ。彼が居なかったら、あの状況は分からず仕舞いだったわ。……少し休んだ後にでも、彼に声をかけてね」
「……はい」
雷都がそう返すと、汐莉は頷いた。




