第9.5話 汐莉の懺悔と、詩乃の記憶
あの件を話した後、汐莉は私を個別に呼び出した。
「隊長、どうかされましたか?」
私が、そう聞く。
「……貴女のお母さんに関して、本当に申し訳ないわ」
そう言って、頭を下げる。
「あ、頭を上げてくださいっ……」
汐莉は頭を下げたまま、首を横に振る。
涙が滴るのが見える。
あの明るい隊長が、こんな姿を見せるのは初めてだ。
……余程、苦しんでいたのかな。
「あの、隊長」
私がそう言うと、汐莉は涙を拭いながら顔を上げる。
「隊長はどうして、《メージェント》に残ったのです?」
汐莉は目線を少し落とす。
「アイツを、許せなくて」
「許せない……?」
「いくら私達や警察の不手際だろうが、起きてしまった事は取り返せない。仲間の親族が殺されて苦しいのは、私だってそうだったのに……それなのに、武瑠が抜けた事がどうも許されないって思ってね」
「……そう思っているのって、やっぱり隊長は強いんですね」
私が言うと、汐莉は目を見開く。
「私が同じ立場だったら、抜けてしまう気持ちも分かりますし、残ったとしても……気持ちを強く持つのは至難だなって思います。そういう思いと私達を気遣う隊長は、自分が思う以上に強いと私は感じていますよ」
そう言われ、汐莉は少し笑った。
「……まさか、貴女にそう励まされるとはね。話せて良かったわ。これからは気負いしないで、やれそうよ」
▪▪▪
その頃、詩乃は二期生を呼び出していた。
「みんな、集まって貰って申し訳ないわ」
詩乃が口を開く。
「構わないですが、どうかしたのです?詩乃殿」
智利が言う。
「……実はね、私も一つみんなに隠していたことがあるのよ」
「隠していた事?」
雷都が口を挟む。
「私ね、厳密には二期生じゃないのよ」
二期生の皆は、驚いた表情を見せる。
「それって、どういう事です?」
めいが聞く。
「一期生の話、汐莉がしてくれたでしょ。……実はあの後、私にその話があったのよ」
詩乃の記憶が、呼び出される。
▫▫▫
事件から、2日後。
汐莉から、話があった。
彼のお姉さんが、その事件で亡くなった事を。
私も、彼とお姉さんに面識があったから、正直実感が湧かなかった。
汐莉は、呆然としていた。
私はどういう言い方をすれば良いのか、分からなかったわ。
それからね、二期生が組まれる半年前に……
私は個別に呼ばれたわ。
「二期生が組まれるまで、汐莉のバックサポーターとして活動して欲しい」
……ってね。
これも、事件と同様に秘密裏にされた事だった。
まあその後に二期生がようやく組まれて、私は二期生の隊長として今に至るわ。
▫▫▫
「……実際のところ、私は1.5期生って感じかしらね」
最後に、詩乃はそう付け加えた。
「でも、よく……汐莉さん、元気になった、よね」
まいがそう言う。
「そう見えるけれど、陰では結構無理していると思うわよ。……だから、私達に出来る事は、やっていきましょう」
詩乃の言葉に、皆は頷いた。
▪▪▪
話の後、雷都は詩乃に声をかける。
「詩乃隊長、どうしてこの事を話そうと思ったのです?秘密裏だったら、尚更……」
その言葉に、詩乃は微笑む。
「二期生を、私は信じているから。それだけよ」




