《メージェント》の日常:休日の過ごし方 (その2)
とある休日。
冬馬は、手芸店に来ていた。
実のところ、身につけている眼帯は自作品である。
そろそろ、新しい物を作ろうと思ったのだ。
(うーん、どうしようかな……)
そう、生地を見ながら悩む。
「おや、冬馬殿?」
誰かが、声をかけた。
その方向へ目を向けると、二期生の副隊長である智利が居た。
「ここで逢うの、珍しいですね」
智利が言うと、冬馬は頷く。
「眼帯を新しく作ろうと思っていて、その生地を見ていたんです」
「……なるほど」
「そういう智利さんは、どうして手芸店へ?」
そう聞くと、智利は少し照れくさそうにする。
「二期生の皆様に、手作りのハンカチを作ろうと思いまして。日頃のお礼に……」
手作りのハンカチ、か。
作ってみるのも、良いのかもしれないな。
「あの、智利さん」
「何でしょう?」
「僕も一緒に作って良いですか?その話を聞いて、作ってみたくなりました」
その言葉に、智利は頷いた。
▫▫▫
眼帯の製作は後日として、今日はハンカチを智利と一緒に作る事にした。
必要な物を買い足し、そのまま智利の寮部屋へと向かう。
「……智利さんって、普段裁縫とかしますか?」
冬馬は気になった事を、聞いてみる。
「ええ、色んな物を作りますよ。このカバンも、自作なんです」
智利が愛用している、手提げかばんだ。
それが自作とは、思いもしなかった。
「手先、結構器用なんですね」
そう冬馬が言うと、智利は照れる。
「実は……親の趣味が裁縫で、小学生から一緒に作っていたんです。それで、今でもたまに作っているんですよ」
なるほど、と冬馬は思った。
▪▪▪
施設の寮へ戻り、智利は冬馬を部屋に招き入れる。
「お邪魔します」
他の人の部屋は上がったことないから、新鮮だ。
智利の部屋は、思ったより質素な感じだ。
生活に必要な物を、最低限まで抑えている。
そして、部屋の片隅に裁縫道具が置かれている。
「……あの、このミシンって普通と違いますね」
ふと、気になって聞いてみる。
「これは足踏み式のミシンで、僕の祖母から代々受け継いできた代物です。大切な形見でもあります」
そう智利が返す。
かなりの年代物に見えるが、手入れがきちんとしている。
『形見』を大切にするって、思うよりも大変だが……
その話を聞いて、智利はミシンを触る。
「『形見は大切に受け継いでいくもの』と教わりましたから、手間は惜しまずにするのは全然苦にはなりませんよ」
「なるほど」
その心遣いは、見習うところがある。
「それじゃあ、ハンカチを作りましょうか」
そう智利が言うと、冬馬は頷いた。
▫▫▫
智利が調べたハンカチの作り方を元に、作っていく。
「意外と、簡単なんですね。贈り物としても、普通に喜ばれそう」
冬馬が言うと、智利は頷く。
「もう少し手の込んだ物も考えたんですけど……ここ最近、時間があまり確保出来ないのが難点で」
二期生は隔週活動をしていると聞いているが、どうやら最近は隔週関係無く出動する事が多くなり、週に3回休めればいい方らしい。
「……大変ですね」
その言葉に、智利は苦笑いをする。
「仕方がない事と、割りきるしか無いです」
▪▪▪
こうして1日かけて作ったハンカチは、皆に喜んで貰えた。
それからと言うもの、冬馬と智利はたまに二人で『手作りの物』を作っている。




