表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界はアンバランスで出来ている  作者: 桜橋あかね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/42

第6話 冬馬、ついに因縁の『相手』と

冬馬が、記憶の底にある『あの事』を話してから、数日後。


「おはようございます」

冬馬は学校の方を終え、施設の部屋へ出向く。


「おはよう」

雷都が資料を読みつつ、そう返す。

汐莉はどこかへ出向いているようだ。


(……あれ)

ふと冬馬は、部屋の大きな机の上にある資料に目が行く。


そこには、『突然変異(アンバランス)新規手配格書』と書かれている。

どうやら、ホッチキスでもう一枚留められている。


(見て、いいのかな)


そう思い、冬馬は一枚めくって見てみる。

二枚目には、相手の名前や顔写真が載っている。


それを見た瞬間、手が震えるのが分かった。

そう、それはかつて友を殺した峯河哲士(みねかわてつじ)だ。


下の方を見ると、『手配格をレベル3とす』と書いてある。

ここ最近、至る所で爆発事件を起こしていたのだが、捕まえられないのが理由……との事だ。


―――因縁の相手の情報を、手元に置いておきたい。


いけない事と思いつつ、冬馬は自らのスマホを取り出し、その資料を写真に撮る。


「冬馬?」

ふと、声がする。


「……いっ!?」


咄嗟(とっさ)にスマホをポケットに入れ、顔を上げる。

声の主は、野瀬先輩だった。

ちょうど、出勤をしたところだ。


「冬馬、何か隠していないか」


「べ、別に……無いですよ、先輩」


資料を机に置きつつ、そう返す。

思考読み術(シンキングハッカー)』の先輩に悟られたら御免だ。


「……すいません、トイレ行ってきます」

と、冬馬は先輩の言葉を待たずに外へ出た。


(……これで、何とかなるはずだ)

そう冬馬は思った。


▫▫▫


あれから、数分が経った。

のぼるは仕事の準備をしながら、「トイレに行く」と言ったものの、帰って来ない冬馬に違和感を覚え始めていた。

何だか、自分の能力を避けているような………


ふと、机の資料を見つける。


(そう言えば、冬馬は『手配格』の資料を置いていたな。もしかして)


「副隊長、この資料を読んで良いですか」


のぼるが言うと、「ああ、構わないぞ」と雷都が返す。


そこに記載されていた内容を見て、のぼるは悟った。

急いで部屋を出て、トイレに向かうが居ない。

辺りを見ても、冬馬の姿が見当たらない。


「アイツ……!」

のぼるはそう呟くと、部屋の方へ戻る。


「副隊長、大変です」


「どうした?」


のぼるは、事情を一通り話した。

それを聞いて、雷都は顔を曇らせた。


「……済まない、その資料は俺が置いたものだ。そのような事を知らなかったのは、こちらの不手際だ」

そう、雷都が言う。


「あの、どうかしたのです?」

その時、翠子が出勤をした。


のぼるは、もう一度事情を話す。


「……それ、私にも数日前に話してくれました。もしかして、相手と片を付けるつもりじゃないですか?」


「塩小路さん、冬馬を止めてくれないか。自分よりも、貴女の方が説得がある」

のぼるはそう言い、頭を下げる。


「俺からも頼む」

雷都も言う。


「分かりました」

持ち物一式を手に取り、部屋を出る。


「……ねえ、翠子さん」

ロビーで、まいが話しかける。


「まいさん?」


「さっき、冬馬君……怖い顔して、出ていった。不穏な感じがしたから、その……」


冬馬が因縁のある相手と片を付けるかもしれない、と話す。


「……それは、大変!私、バイクに乗れるから、一緒に行こう。自分の足より、早いから」

まいがそう返す。


「でも、確か今日はオフの日だったはずでは……?」


「行ってきなさい」

汐莉の声がした。


「隊長?」


「雷都から、話は聞いたわ。上の人間には、私から話を通しておくから……まいちゃん、翠子さんをよろしく」

そう汐莉が言うと、まいは頷いた。


▪▪▪


「まい姉、上手く言えましたね」

二人を見届けた後、物陰からめいが現れる。


「そこら辺は、まいの成長部分だわ。……それと、冬馬君の事教えてくれてありがとう」

そう汐莉が言うと、めいは頷いた。


▪▪▪


その頃、冬馬はあの公園に出向いていた。


「……ヨォ、久しぶりじゃねぇかぁ?」


声のする方へ冬馬が向くと、そこに峯河が立っている。

資料に書いてあった情報を元に、呼び出したのだ。


「お前、《メージェント》に配属されたって聞いたぞ?相方を亡くしたっちゅうのに、よくもやってられるなァ」


その言葉に、冬馬はついにキレた。


「僕の相方を殺しておいて、よくそんな事が言えるな」

そう言いつつ、冬馬は眼帯を外す。


目的対象(ロックオン)完了、初回制限(ファースト)4分5秒……」


「……貴様ァ!」


峯河は、足元にある石を冬馬に投げる。

冬馬の身体をすり抜け、後ろで爆発した。


「僕の能力一つでも、相手は捕まえられる……!」


▫▫▫


「翠子さん、冬馬君が行きそうなの、心当たりある?」


バイクに乗り込み、まいがそう聞く。

当てずっぽうに行っても、時間がかかる。

……それだったら、最初はあそこにいってみよう。


「まいさん、桜谷崎高校の方へ向かってください。近くに公園があって、そこが現場なんです。最初に行けますか?」


「分かった、行くよ!」

まいが言うと、バイクが走りだした。


(目的対象(ロックオン)は、最大15分……間に合って!)


▪▪▪


『あと1分』、そう脳内に示しだした。

初回制限(ファースト)から、3分経過した。


「てめぇの能力は、何なんだ。投げたものが、身体をすり抜ける」

峯河は、少し動揺する。


「……それは、言えませんよ」

と返しつつ、実のところは焦っていた。


自分の能力で、相手に片を付ける……そう思っていた。

攻撃は気の流れを利用して、身体をすり抜ける事が出来るのだが……それをどう使って『相手に攻撃をするか』だ。


(ここは、一か八かで)


初回制限(ファースト)終了、二回制限(セカンド)発動可能まであと30秒』


初回制限(ファースト)が終わった。

冬馬は、あのイチョウの木のところまで後退りする。


上手いとこ木の枝に当たって、峯河の方に落ちてくれればワンチャンあるかもしれない。


目的対象(ロックオン)完了、二回制限(セカンド)2分37秒。かかって来い!峯河!」


冬馬は煽るように、言う。

それに応じるかのように、峯河は二個の石を冬馬に投げる。


(気の流れを、上向きに……!)


石が上に行き、木に当たり爆発する。

……が、幹と枝の根元に当たったのか、大きい枝が落ちてくる。


(マズイ、気の流れで対処するのには大きすぎる!)

そう思った瞬間だ。


「『ジェット・ウォーター』!」

聞き慣れた声がしたかと思うと、木の枝が水で押し出され横に落ちる。


「増援!?聞いてねぇぞ……こうなったら!」

峯河が石を投げようとした時、塩ビパイプが彼の身体に当たる。

脇腹を抱え、峯河はその場でしゃがみこむ。


「……そこまで!」

そうまいが言って、相手を捕まえた。


▪▪▪


「……どうして、ここに」

峯河を引き渡す途中、冬馬がそう呟く。


「それはこっちの言葉(セリフ)よ」

私は呆れたように言う。

冬馬は、(うつむ)く。


「……あのね、冬馬君」

まいの呼び掛けに、冬馬はそっちを向く。


「私ね、詩乃隊長から言われた事があった、の。『信念を貫いてこそ、正義が生まれる。ただそれば一人で貫けない。仲間がいてこそ、その力が発揮する』って。冬馬君は、一人で闘って居るんじゃ、無いでしょ?」


執念に捕らわれていて、抜けていた。

……僕には、新しい仲間が居ることを、そして未田音に誓ったのを。


それを思い出した冬馬は、大粒の涙を流した。


▪▪▪


事件は、とりあえず解決した。

峯河を明け渡した後、施設の方へ戻る。


部屋に入ると、汐莉の姿があった。


「……話は、まいから聞いたわ。お疲れ様」

そう汐莉が言うと、冬馬の方へ向く。


「それと、冬馬君。今回の無断行動は見逃してくれる、と上の人間が言ってくれたわ。ただ、次も同じような事があれば、謹慎は免れないし集団行動を保てなくなる人を置いておく訳にはいかない。きつめの言葉だけれど、心得て欲しいわ」


「……分かっています。気を付けます」

冬馬の表情を見て、汐莉は笑顔を見せた。


「私からは以上よ。二人とも、今日はもう休んで貰っていいわ」


部屋を出る時、私はのぼるに声をかけられた。


「……冬馬の事、ありがとう」


「お互い様、ですよ」

そう返すと、のぼるは頷く。


「それじゃあ、仕事に戻る」


「分かりました」


▪▪▪


「ただ……いま」

まいは、寮の部屋に戻った。


「まい姉、おかえり。大丈夫?」

めいが声をかけると、まいはもたれ掛かる。


「……みゅっ、充電、切れ……」


まいが言うと、めいは頭を撫でる。


「まい姉、頑張ったね。冷蔵庫にマオメィ堂のプリンがあるから、それ食べてね」

そうめいが言うと、まいは笑顔で頷いた。


▪▪▪


未田音、僕は危うく『道』を外れるところだった。

これからは、三期生の皆と頑張っていくよ。


今度こそ……今度こそ。

空の向こうで、僕を見守って欲しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] すみません、趣味爆発して良いですか?(なんだそれ) 眼帯外すって行為がもう好きすぎて クラクラしておりますっっ ロックオン? 私にやってぇぇぇぇぇぇぇぇ! 後ろでドカンと爆発 さあ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ