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この世界はアンバランスで出来ている  作者: 桜橋あかね


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第5話 最凶のレベル5の一角、ついに

仕事にも少しずつ慣れた頃。

突然変異(アンバランス)特別対策課に、ある情報が舞い込んでくる。


▪▪▪


剛条寺巡査部長が、取り調べの書類をまとめている時の事だ。


「剛条寺殿、よろしいか」

捜査第一課の古株である、白守(しらかみ)刑事が話しかける。


「白守殿、如何なさいました?」

そう返すと、白守刑事は顔を曇らせる。


「実は、だが……」


懐から写真をいくつか取り出して、机の上に置く。

殺人事件の現場写真だ。

剛条寺巡査部長は一つの写真に写っているメモが気になり、手に取る。


「『(なんじ)、死を司る神である』、これもしかして?」


「ああ、そうじゃ。天黑(あまこく)にずめがまた、殺ったっちゅう話だ」


▫▫▫


天黑(あまこく)にずめ、突然変異(アンバランス)は『自分が殺めた死に人を操る』術。

彼女は、手配格の中でも『最凶のレベル5』の一角として、警察が特に警戒している人物だ。


《メージェント》が配備された頃に、一期生が一度捕まえており、実刑判決が出た。

……その(のち)に、凶暴さ故に独房に入れられていた。


▫▫▫


「……確か、天黑(あまこく)は少し前に仮釈放されたと聞いていたが」

剛条寺巡査部長が言う。


「そうだが、背後についていた私服 (警官) の奴がやられたんだ。……その写真が、それさ」


剛条寺巡査部長は、その言葉で背筋が凍るのが分かった。

仲間を殺めて、逃げたのだ。


「一応、上の人間には報告をした。でな、剛条寺殿には俺から話すように、仁川(にがわ)刑事部長から言われている」

白守刑事は、そう言う。


「……それで、こちらはどう動けば()いか」


「厳重警戒で動くように、と聞いている。なんせ、手配格のレベルがレベル……だからな」


白守刑事は、現場写真とや逃げた当時の服装などをまとめた資料を置いて、部屋を出た。


▪▪▪


剛条寺巡査部長は、《メージェント》全員を呼び集めた。

そして、先程聞いた事をそのまま話し、資料も見せる。


「う、うぅ」

現場写真を見せられた時、ベベロが目を瞑る。


「ベベ、大丈夫か?ちょっと離れるか」

ネオンが心配する。


「……だ、大丈夫。み、見なれてない、だけ」


「剛条寺殿、三期生は皆でまとまった方がよいと思われます」

智利が言う。


「そうだな」


「三期生には、彼女と対峙するのは危なすぎます。無理に出動しないのも手です」

汐莉が口を挟む。


「だが、汐莉殿や雷都殿、二期生だけでは厳しい。何処に居るかだけでも……」


その時、汐莉は机を強烈に叩き「後輩には、死なせたくないのです!」と大声を出した。


「汐莉殿の気持ちは分かるが、これは上の人間からの指示なのだ。三期生も出なくてはならない」

剛条寺巡査部長が静かに言う。


「……すいません」

これ以上は言えず、汐莉は言葉を引いた。


「それでは、天黑(あまこく)にずめを捕獲してくれ」


▫▫▫


「隊長」

私は出る時、汐莉に話しかける。


「どうかした?」


「あの、その……どうして、私たちの事が心配なのかな、なんて」


私がそう言うと、汐莉は少し悲しそうな顔を見せる。


「一個だけ、言うならね。私、大切な人とその唯一の肉親を救えなかったから……皆が居なくなったら、嫌だもの」


「大切な人と……その唯一の肉親?」


「塩小路、そろそろ行くぞ」

ネオンの声がする。


「今、話せるのははここまで……よ。気を付けてね」

汐莉は私の肩を叩いて、そう言った。


▪▪▪


二期生と雷都は23区を見るとの事で、三期生(わたしたち)は区外へ出る事になった。


「……」

私は、さっき隊長が言っていた事が気になっていた。


「翠子さん、大丈夫ですか?」

冬馬が心配そうに、気にかける。


「あ、うん。大丈夫だよ」


「そうですか」

冬馬は、それ以上は聞かなかった。


「……ねー、兄ちゃん」

ベベロはネオンに、話しかける。


「どうした?ベベ」


「もし、仮にな?うちらが、その『レベル5』の人と闘う事になったら、勝てるのかな」

その言葉に、ネオンは少し悩む。


「やれるだけ、やるしかないさ。それに何かあったら、『通信機(インカム)』でって話じゃないか……?」


そう返した時だ。


「……いい、相手、みーつけた」


女性の声が聞こえた。

皆は、その方向に目線を向ける。


――そこには、天黑(あまこく)にずめが立っていた。


▪▪▪


辺りが一気に血生臭くなる。

……彼女の周りに、『死に人』が集まっているからだ。

ざっと数えただけでも、二桁は居る。


(……なに、あの殺気)

私はそう感じる。


下手をすれば、殺られる。

彼女の眼は、凶気に満ちている。


「皆!戦闘体勢を取って!」

冬馬の声に、各自体勢を取る。


「……三期生、貴殿方も、私の手の内に……」


にずめが手をこちらに指をかざすと、『死に人』がこちらに向かって走り出した。


「「おりゃぁぁっ!」」

ネオンとベベロは、『死に人』に向かって拳を当てる。

血が吹き出す。


「……目的対象(ロックオン)完了、初回制限(ファースト)は3分35秒。僕が先輩を呼ぶんで、それまでなんとか食い止めましょう!」


冬馬の声に私は頷き、走り出す。


「『スクリュー・ウォーター』!」


▫▫▫


『こちら、三期生。西東京市で、天黑(あまこく)にずめと、戦闘中。応援願います!』

冬馬から、そう報告を得る。


汐莉は、『発見器(チェッカー)』に組み込まれたGPSで確認をする。

東伏見公園付近だ。


雷都を含め、二期生に場所を教える。

「二期生のみんな、にずめが出たのは東伏見公園付近よ」


『了解です』


「……さてと、私も出ますか」

汐莉はジャケットを取ると、部屋を出た。


▪▪▪


(……あれから、何分経ったの?)


私はそう思う。

『死に人』に、いくら攻撃を当てても立ち上がる。


冬馬は三回制限(サード)まで使うと、一時目的対象(ロックオン)が出来なくなる。

上限まで使いきり、今は安全な場所で右眼を休ませている。


「……う、ぐっ」

ベベロが、口元を手で覆い隠す。

この強烈な血生臭さで、今にも吐いてしまいそうだ。


「一人、捕まえる」

にずめがベベロの方に指をかざし、そこに『死に人』が集中する。


「塩小路!ベベを守るぞ!」

「……はい!!」


二人で護衛体勢をしようとした、その時だ。

塩ビパイプと、ナイロンテープが飛んできた。

『死に人』の攻撃を防いだ。


「助けに来たわよ!」

めいが言った。

二期生が助けに来たのだ。


私らは、ひとまず安心した。


「……ここからは、私らが相手ですわ!」

詩乃が言うと、二期生は動き始めた。


▫▫▫


(三期生、殺れれば、よかったのに)

にずめはそう思った。


仮釈放が決まった時、自分の所に手紙が来た。


封を切ると、『《メージェント》の三期生を、天黑(あまこく)にずめの仲間に出来れば、俺らの征服に役立つ』と書かれていた。


最後の所に書いてあった、マークを見て誰が送ってきたのが分かった。


(……刑務所(あそこ)、嫌だった)


自由になりたかった。

……その想いを、また《メージェント》が邪魔をする。


(二期生も、やっつける!)

『死に人』に指示をしようとした時だ。


「あんた、これ以上仲間を傷付けないでいただけるかしら?」


「……っ!?」


背後に誰かが居る。

……それも、()()()()()()()()だ。


「どうして、貴女が背後に」

にずめは背後に居る人物に、振り向かずそう言う。


「私の突然変異(アンバランス)、忘れたとは言わせないわ」


「イッ……!?」

腰の方に激痛が走る。

そのまま、投げられる。


天黑(あまこく)にずめ、確保!」


▪▪▪


「久しぶりに、汐莉の変装見れたわね」

引き渡す途中、詩乃が言う。


「あの、何に変装したのです?突然に現れたので」

私が聞く。

……まあ実のところ、変装自体は話を聞いていが、実際に見たのは初めてだったのもある。


「……ああ、やっぱり分からないわよねぇ。近くに居たカラスの一羽が、汐莉なのよ」

詩乃がそう返す。


「やっぱり、詩乃は見てるわねー。戦闘中でも」

汐莉は笑いながら言う。


「……え?カラスの中の一羽?」

私は聞き返す。


「動物に変装している時は、耳に小さなピアスが付いているから、それが目印なのよ。で、カラスの一羽に、変装している汐莉が居たのよ」

詩乃が説明をする。


「……はあ、そうなんですか」


見抜ける人にしか見抜けない、そんな早変装の技術は凄いと私は思った。


▪▪▪


その頃、突然変異(アンバランス)特別対策課では……

天黑(あまこく)にずめが仮に住んでいた部屋から押収した手紙を、剛条寺巡査部長は読み進めていた。


(……まさか、彼奴らが関わっていたとはな)

最後のマークを見て、剛条寺巡査部長は頭を抱える。


「一応、汐莉殿と詩乃殿には話しておく……か」

そう呟き、手紙をしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドキッとしましたよ! もー、心臓に悪い! てゆうかもう 今回も どうなる、どうなるでしたよ。 にずめ怖すぎる(ノД`)・゜・。こんなん泣いてまうやないか(ノД`)・゜・。 [気にな…
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