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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第六章 いざ、王都へ
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第4話 来ちゃった!

 峠道の中腹に差し掛かったところでゴルドが言う。


「この辺りが野盗に襲われたと報告が多い場所だ。だから、分かっていると思うが」

「分かってるってゴルド。皆まで言うな」

「レイ、あんた分かってるの?」

「エリス、何を言いたいの?」

「野盗が相手なのよ。その辺のごろつきとは訳が違うのよ!」

「え~何言ってんの。そんなの分かってるって」

「だから……ソルト」


 野盗が出ると張り切りだしたレイに対しエリスが何か思うところがあったのか、レイに確認するが当の本人はエリスが気にしていることが分かっていないようだ。そんな様子にしびれを切らしたエリスが更に食ってかかろうとしたところをソルトにやんわりと止められる。


「いいの? ソルト」

「いいも何も経験してみないと分からないだろ。コレばっかりはさ」

「そうかもしれないけど、ソルトはいいの?」

「……」


 前に捕縛した領主の使いを見殺しにした時のことをエリスは言いたいのだろう。だが、現時点ではレイを安全に帰す方法はないとルーに言われたことで、ソルトとしては早めにレイに対しこういう《《日常茶飯事》》に慣れておいた方がいいだろうと思っている。


「ふう、ソルトが何を考えているのか分からないけど、レイにも《《こういうこと》》を分かって欲しいと思っているのよね?」

「ああ、まあそんなところだ」

「そうなのね」


 エリスはソルトにそう言った後に小声で「なんだかレイが羨ましく思えるわね」と呟くが、それは誰の耳にも聞こえなかったようだ。


「どうしたのエリス?」

「レイ、なんでもないわよ。それよりもいいのね?」

「だから、いいってば!」

「ハァ~なんとなく空元気にも見えるんだけど……まあ、いいわ。だけど、相手は野盗だということだけは忘れないでよ。いい?」

「……うん、分かっているつもり」

「つもりじゃダメなの! 私達が見逃したら「分かってる! 分かっているわよ!」……レイ」

「でも、出来ないの! 出来ないよ……」

「レイ……」

「レイさん……」


 御者台でソルト達のやり取りを黙って聞いていたゴルドだが「慣れてもらうしかねえよな」と呟く。


『ソルトさん、前の茂みに潜んでいます。地図(MAP)に表示しますね』

「ありがと。う~ん、これはなんとも」

「どうした?」

「あ、ゴルドさん。いいところで馬車を停めてもらえるかな」

「やっぱり、来たか。数はどれくらいだ?」

「えっとね、前の茂みに隠れているのが右に十人、左に八人。で、背の高い木の上で狙っているのが右に一人、左に二人かな。後は、退路を塞ぎたいのか二十人ちょいってところ」

「ハァ~お帰り願いたいのだがな」

「そうもいかないみたいね。『障壁』!」


 ソルトがゴルドとの話を切り上げると同時に自分達の馬車と領主代行の馬車を包む様に障壁を張る。するとあちらこちらから『カキン、カキン』と何かが弾かれる音がする。


「来たの?」

「ああ、来た。だから、お前は後ろに隠れていろ」

「……」


 レイも異変に気付いたのかソルトに声を掛けて来るが、その顔はこれから先のことを予測しているのか青白くなっている。


「レイはここにいるのよ」

「私達が退治しますので」

「……」


 レイに声を掛けるとエリスとシーナは馬車の外に出る。ソルトも領主代行の護衛に既に念話で伝えている。


「さてと……」

「お前がこの馬車の護衛か!」

「ん?」


 ソルトがゆっくりと馬車から降りると、ウンともスンとも響かない障壁を叩きながら見るからに野盗と言った格好の男が吠える。


「うわぁまんま野盗だね」

「そうね。ちょっとばっちぃかな」

「触るのはイヤなんですけど……」

「そうも言っておれんだろ。領主代行もいるんだしな」

「そうだよね。今後、行き来することも増えるだろうから、なるべく掃除しておいた方がいいと思うんだけどゴルドさんはどう思う?」

「そうだな、討伐対象なら賞金が出るが、これだけの数だろ? と、なると生きたままってのは難しいな。詰所があるところまで距離もあるしな」

「ってことは殲滅がベストなの?」

「まあ、そういうことだ。行けるか?」

「まあ、任せてよ。ってことでお願いね、ルー」

『任せてください! 目標固定(ロックオン)! からの麻痺(パラライズ)!』


 障壁の向こうで吠えている野盗を見た感想をエリスとシーナが好き勝手に言った後にソルトはゴルドにどういう方向で片付けるのかを確認すると殲滅が最良だということだった。なので、ソルトはゴルドに返事をすると即座にルーに魔法を展開してもらう。そしてその結果、吠えていた野盗のリーダーらしき男はその場で崩れ落ち、遠くの木からズドンと何かが落ちる音が聞こえてきた。当然、リーダーの周囲にいた連中や茂みに隠れていた連中もその場で崩れ落ちたのを確認している。


「相変わらずデタラメだな」

「うん、自分でもそう思うよ。それより、取り敢えずは捕縛して一箇所に集めようか」

「そうだな。エリスもシーナも頼んだぞ」

「「え~」」

「え~言わない! さっさとしないと日が暮れるだろ」

「「は~い」」


 ソルト達は手分けして盗賊達を後ろ手に縄を掛け、両足首も縄で縛ると馬車の近くに重ねていく。


「これで全部か?」

「ちょっと待ってね。うん、大丈夫みたいだね」


 ソルトが視界の隅に映る地図を確認し他に野盗が潜んでいないかを確認し、これで全員だとゴルドに告げると、ゴルドはリーダー格の男の前に立つ。


「お前らのアジトはどこだ?」

「……」

「言わないか……しょうがないな。ソルト、頼んだ」

「了解。じゃあ、行くよ『自白最高』!」


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