第15話 終わってみれば
「初めまして。私は領主の次男、アランと言います。歳は十八を超えたばかりです」
「では、アラン殿。詳しい話を聞かせてもらう前にどこか落ち着ける場所はありますか?」
「はい。案内します」
「お願いします。ゴルド、お前はソルト達と地下室を検分してくれ」
「ああ、分かったよ。ソルト、もう少し付き合ってもらうぞ」
「いいよ。俺も興味あるし」
半壊した屋敷の地下室にゴルドと一緒にソルトは足を踏み入れる。
「「「クサッ!」」」
地下室に下りた瞬間にソルト達は鼻を抑える。
「これはなんの臭いなんだ」
「まあ、想像はつくが……当たって欲しくはないな」
ゴルドの言うように地下室を開けると、底には比較的若い女性と思われる干からびた死体が積まれていた。なぜ、若い女性と分かったかと言えば、皮だけとなっと死体の装飾品から、男性ではなく女性という感じがしたのと、その装飾品から年配ではなく若い女性かと推察された。
「身許が分かるような物はパッと見は分からないか。他のに任せるしかないか」
「それにしても多いね。もしかして、行方不明になった人とかいたりする?」
「かもしれんな……」
地下室には皮だけになった死体と、祭壇の様な物があった。
「これがブランカの言っていた紋章なのかな」
「紋章?」
「うん。ブランカがノアを操っていた司祭の部屋で見たって言ってた」
「マジかよ……でも、こうなった以上は本当なんだろうな。はぁ~平和だったのにな」
ゴルドはそう言って、ソルトをちらりと見る。
「ゴルドさん。忘れてるかも知れないけど、俺も被害者だからね」
「そうだった。じゃあ、やっぱり教会の上の方で何かが始まっているということか」
「そうみたいね。じゃ、俺はこの辺で」
「ああ、助かったよ。ありがとうな」
地下室でゴルドと別れると。疲れた様子のレイと腕を組み考え事をしているブランカの側に行く。
「ブランカ、司祭の部屋で見たって言ってた紋章が地下の祭壇にあったよ」
「あ~やっぱり」
「やっぱりって、何か思い当たることがあるの?」
「あ~そうね。ソルトには言っておいた方がいいかもね。あのね……」
ソルトはブランカから、一通りの話を聞くと露骨にイヤな顔をする。
「ごめんね、もっと早く思い出せばよかったんだけどね」
「そこは責める気はないよ。でも、ホントにイヤな気持ちにはなるね」
「まあ、そこは同感だね」
「で、それを知ったソルトはどうするんだ?」
ブランカから話を聞いたソルトに対し、シルヴァはソルトにこれからのことを聞く。
「ん~難しいけど、まずはシーナと一緒に施設の改修が先かな」
「まあ、それも一つの手だな」
「それはいいとして、アレはどうする?」
ブランカがそう言って、放心状態のままのレイを指差す。
ソルトがレイの方を見ると、女の子座りでぺたんと地べたに座ったままだ。ソルトはレイに近付き、どうしたのかと聞いてみる。
「あ、ソルト……」
「なんで黄昏れてるの?」
「あ~なんて言ったらいいのかな……」
珍しくレイが言い淀む。
ソルトは、何も言わずにレイが口にするのを待つ。
「うん、そうだよね。やっぱり、そういうことなんだよね」
やがて、自分なりの考え方が固まったのかレイが話し出すので、ソルトはそれを黙って聞く。
「あのね、さっき初めて人の悪意の塊みたいなのを直接、まともにぶつけられてね。それで、ちょっと圧倒されたの」
「へ~そんな風には見えなかったけどね」
「まあね、あんな触手で攻められたら、もう気持ち悪いから必死で捌くしかないじゃない」
「ああ、そうなんだ」
「それで、ソルトはブランカから何を聞いたの?」
「ああ、それはまた後で皆のいるところで話すよ。とりあえず、今は疲れた……ゴルドさん達に後は任せて、帰ろうか」
「うん!」




