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朝ちゅんならぬ朝ドン

朝からやたらとソルトの家の玄関が激しく叩かれている音でソルトの目が覚める。

「もう、朝っぱらからうるさいな~誰だよ。もう、はいなんです?」

玄関の扉をソルトが開けると、そこにはレイが立っていて、息を切らしてソルトを睨みつける。

「……」

レイが体をプルプル振るわせてなにかを言いたいようだが、怒りのあまりに声が出ないようだ。

ソルトにはレイが怒っている理由が分からないので、黙って落ち着くのを待つしかない。半袖シャツにパンツ一枚の格好で。


やがて、レイの怒りが収まったのか体の震えが止まり、やっと話し出す。

「ちゃんと、履きなさいよ! 女性の前で失礼でしょ」

「そうか? で、用はなんなんだ?」

「なにって、あんたね~私をあんな狭いところに押し込んで、なんであんたはこんな家で寝ているのよ!」

「なんでって、お前が、あの小屋を俺から無理槍奪ったんじゃないか。もう、忘れたのか?」

「覚えているわよ! ええ、そうよ私があんたから、あの小屋を譲ってもらったのよ」

「譲った覚えもないがな」

「そこは譲ったことにしときなさいよ。でも、こんなのがあるのなら、最初からなんで出さないのよ!」

「なんでって、あの小屋を建てたから、レベルが上がって、この家を建てられるようになったから?」

「そんなの聞いてない!」

「聞いてないもなにも、お前はすぐに玄関を閉めただろうが。なんでもかんでも人のせいにするのはどうなんだ?」

「くっ……ソルトのくせに」

「まあ、そのお陰で風呂にもトイレにも入れたから、少しは感謝しているけどな」

「え?」

「じゃあな、着替えるから。また後でな」

「ちょっと、待ってよ! なに? お風呂とかトイレとかって……」

「ああ、この家は風呂トイレ完備だからな」

「聞いてない!」

「だから、言ってないって。ほら、もういいだろ。俺も着替えるんだから」

「ちょ、ちょっと待ってよ。トイレくらい使わせなさいよ!」

「はあ、なんでお前に?」

「なによ、トイレくらいいいじゃない」

「俺は構わないが、お前は平気か?」

「なによ、なにか隠し事でもあるっていうの?」

「いや、隠し事どころか隠すことが出来ないんだが……」

「なによ、ハッキリしないわね」

「だから、トイレも風呂もドアがないから丸見えなんだって」

「え? なにそれ」

「なんだよ。今の俺のレベルじゃこれが精一杯だからな。ほら、分かったら出てくれ。いい加減着替えたいんだからよ」

「な、ちょ……」

ソルトがレイをなんとか追い出し、昨日洗ったスーツとシャツに着替える。

「うん、匂いは大丈夫だな。でも、この家を壊すのもなんだか勿体無いな」

『レベルアップの為にも毎回作った方がいいと思います』

「それもそうだな。しかし、このスーツもパンツもダボダボだな。どこかで用意しないと。なあ、どこかで手に入らないかな?」

『それなら、この魔の森を出てすぐのところに人々が生活している小さな村があります。まずはそこを目指してはどうでしょう?』

「人がいるんだな。それはどれくらい離れているんだ?」

『そうですね、大体十キロくらいでしょうか』

「十キロかなら、今日一日頑張れば辿り着けそうな感じだな」

『ええ、平地ならそうですが森の中なので……』

「そういうことか。それにアイツもいるしな」

『そうですね』

「まあいい、とりあえずは、その村を目指そう。案内よろしくなルー」

『はい!』

ソルトがルーとこれからどうするかを相談し、家の外に出ると「遅い!」とレイに文句を言われる。

「別にいいだろ。『解除(リリース)』」

「ぎゃ~」

ソルトが唱えると家が砂へと変わり、それを見たレイが悲鳴をあげる。

「なんだよ、うるさいな」

「私のトイレが~」

「あれは俺が作った家だぞ?」

「私の~」

ソルトは、なぜかは知らないが泣き崩れるレイを見る。が、無視して小屋も片付ける。

「『解除』と。じゃ、ルー道案内よろしく」

『はい!』


ソルトが軽く身支度をして目的の村へと歩き始める。

「このバッグもなんとなく邪魔だな。収納とか使えないのかな?」

『使えますよ。無限倉庫(インベントリ)を取得しました』

「おうふ。で、どうするんだ?」

『手で触れた物を搬入(インポート)で無限倉庫に入れます。出したい時は、無限倉庫にある物をイメージして搬出(エキスポート)で手の上に出ます』

「じゃまずは小石で試すか。『搬入』!」

ソルトは足元の小石を拾い『搬入』を唱えると、手の平の上にあった小石が消える。

「消えた! で、無限倉庫内の物を確認するのは?」

『リストと唱えれば一覧で、視界に表示されます』

「そうか。『リスト』」

ソルトが『リスト』と唱えると、視界に『小石x1』と表示された。

「なら、次は『搬出』」

ソルトの手の平に小石が乗っている。

「成功だ! ふふふ、なら次はバッグだな」

ソルトがバッグを手に持ち、『搬入』と唱えるとバッグが消える。

「うん、これで身軽になったな。じゃ、行くか」

『はい!』

ルーの案内で目的の村へと歩き始める。


「ちょっと、待ちなさいよ!」

「待たない」

「そう。じゃないわよ! 待ちなさいよ!」

「いや、急がないとこの『魔の森』を抜けられないから、時間がもったいない。だから、待たない」

「え? そうなの。ちょっと、待ってよ~」


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