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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第五章 変わりゆく世界、変わらない世界
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第5話 証拠はお腹の中に

「ハァ~」

「大丈夫か、ギルマス」

 ソルト達が出て行った部屋でギルマスが一人ため息を吐くと後ろから声を掛けられる。

「ゴルド、出て行ったんじゃないのか」

「いやな、少し心配になってな」

「そりゃ、どうも。そこまで心配してくれるのなら、一緒に領主の所にどうだ?」

「ハァ~本当ならイヤだと言いたいところだが、誰かが説明しないとダメなんだよな」

「そうだ。ソルトに頼んでも断るだろうしな。となれば……」

「俺って訳か」

「ああ。悪いが、お前を逃がす訳にはいかん」

 ギルマスが、ゴルドに向かってニヤリと笑う。

「まあ、気持ちは分からんでもないが、そう期待されても困るんだけどな」

「別に期待している訳ではないが、あまりにも報告することが多すぎるし、あまりにもスケールが大きすぎる。だから、とても俺だけでは支えきれん。すまんが付き合ってもらうぞ」

「ハァ~最近の俺はため息ばかりだな。だけどギルマスよ俺らのパーティーが拾って来たネタとはいえ、この街を救ってきたのも事実だ。その辺りのことはちゃんと説明してくれよ」

 嘆息しながらゴルドが無駄とは思いつつもギルマスにお願いする。

「分かっている。分かってはいるが、領主はこんなとてつもない話をちゃんと聞いてくれるんだろうか」

「ああ、まずはそこからだな。どら、領主殿に聞かせる前に事前練習といくか」

「しといた方がいいか?」

「しないと何を話しているのか分からなくなるぞ」

「ハァ~気が進まないな」

「ハァ~それは俺も同じだ。領主殿が納得してくれようがくれまいが、邪神(あっち)はお構いなくやってくるからな」

「誰か断ってくれないかな」

 ギルマスがゴルドの方をチラリと見るが、ゴルドは知らない振りをする。

「じゃ、ギルマス。領主の所に行くときは声を掛けてくれ」

「ああ、じゃ練習を済ませてから行こうか」

「ん? その練習は俺も手伝うのか?」

「当たり前だろ。俺一人で練習したって間違っても分からないだろ。いいから、手伝え」

「ハァ~まったく分かったよ」


 ◆◆ ◆ ◆ ◆


 自分の部屋にいた竜也はどうするべきか迷ったあげくレイに念話を繋ごうと試みるが、その悉くを着信拒否され断られている。

「頼むよぉ~レイ、話を聞いてくれよ。こんなの俺一人じゃ支えきれないよ~」

『何? もうひっきりなしに連絡してきてさぁ。一体、なんのつもりなの?』

 レイへの念話をただひたすら繰り返していたら、突然繋がり、レイの声が頭に響く。

「レイ! よかった! やっと繋がった。なあ、レイ聞いてくれよぉ」

『分かったから。話を聞くから、ちゃんと話してみてよ。でもさ。もう、これっきりにしてよね』

「実はさ……」

『最っ低!』

 レイに念話で鑑定で知ってしまったことの全てを話すと、いきなりレイに怒鳴られる。

 そして念話の向こうで怒っているレイの顔を想像してしまい、思わず言い訳してしまう。

「違うんだよ、レイ! 僕の言い分も聞いて欲しい。僕には身に覚えがないことなんだから!」

『でも、証拠があるんでしょ! なら、そういうことじゃないの!』

「だから、違うんだって! 僕にはそういうことをした記憶がないんだからさ」

『記憶がない? 何、あんたお酒でも飲んでるの?』

「飲んでない! レイに誓ってそんなことはしていないから!」

『私に誓わないで、迷惑よ』

「だから、レイ。僕はしてないんだって」

『もう、しつこい! それなら、それで泰雅に言えばいいでしょ! してないのなら言えるでしょ!』

「でも、お腹の中には……」

『ほら、やっぱりしているんじゃないの』

「いや、だから俺には記憶がないんだって。それを説明出来ないと泰雅に殴られて縁を切られて終わりじゃないか!」

 泰雅に説明出来ないから、レイに相談しているのにレイからは的確なアドバイスみたいな提案は何もなく、ただ単に泰雅に正直に話せと言われるばかりだ。やってないのなら出来るでしょと。そう、竜也には()()()()はないが、竜也の遺伝子を受け継ぐ存在がいるのだから、どう頑張っても()()()()()()ことにはならない。そう、思っているとレイから一つの提案をされる。

『なら、もう一人の当事者に確認すればいいじゃないの』

「あ、それもそうか」

 そんなレイの提案で確かにレイラに聞けば、ことの全容が分かると竜也も納得する。

『じゃあ、もういいわね』

「いや、待ってよ。彼女の側にはいつも泰雅が一緒にいるから聞けないんだって」

『じゃあ、一緒に聞くしかないわね』

「助けてくれないのかよ」

『こんな遠く離れた地でどうやって助けるって言うの!』

「……」

『あのさ、泰雅に惚れている()が竜也とコトをしちゃっている訳でしょ。なら、それをさせている黒幕がいるってコトじゃないの。じゃあ、その黒幕に直接、泰雅に説明させればいいじゃない。ふふふ、なんだか私って名探偵みたい!』

「黒幕って、レイ。そんなサスペンスみたいな」

『だって、そこって結構ヤバいでしょ。そろそろあんた達も危ない橋を渡る頃じゃないの?』

「僕たちが……まさか……」

『だって、黒幕は竜也達を引き留めるためにその……したんでしょ?』

「だから、してないって!」

『もう、それは分かったから。んで、結果的にはその黒幕の思惑通りにことが進んでいるんだから。そろそろなんじゃないの』

「……」

 レイから、竜也達がいるザンネニア王国の状況について的確に言われたことで竜也は言葉につまってしまう。

『どうしたの? まさか、思い当たることが多すぎて迷っているの?』

「その……黒幕じゃないんだけど、勇者を憎んでいるというか、毛嫌いしている感じの人はいるかな」

『そう。まあ、気を付けてね。近くまで行くことがあれば助けに行くかもしれないから、それまで元気でね。じゃあね』

「え、もう切るの?」

『あ、忘れてた。今度からは月一にしてね。そうね、月末に一回のみ竜也からの念話は繋がるようにするから。じゃあ、今月分はもう使ったから、今度は来月末ね。じゃあね、頑張って』

「あ……レイ。切れちゃった……」

 レイとの念話が切れ少し残念な気持ちになるが、それよりもレイの言った『黒幕』の存在が気に掛かる。

「まあ、黒幕と言うのなら、あのじいさんだろうな。けど、僕が問い詰めたとしても正直に話すわけないだろうし。あ~もう!」


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