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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第四章 見えない敵意
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夢みていたのは片膝ついてからの

「どうしたの、ソルト?」

「なんか苦い虫食べたみたいな顔になってるわね。ガマンしないで出しなさい。ほら、ぺってしなさい」

 ルーから、サクッと伝えられたことに対し、頭の中の整理が出来ずに悩んでいると、そんなソルトを心配してレイとエリスが気遣ってくれる。

「ありがと、でもなんでもないから。大丈夫だから。気にしないで」

「そう? てっきり教会の連中がとんでもない邪神を産み出しているから大変だ~って言うのかと思ったけどね」

「え?」

「あれ? もしかして当たっちゃった……の?」

 レイが思いっ切り核心を突いてきた。

 ソルトは片手で顔を覆うとため息を吐き、脳内会議を開催する。

『どうしようか、ルー』

『今は推測の域を出ませんが、下地は十分と言う感じです。もしかしたら、魔王がいないのにソルトさん達が召喚されたのはこれを予見していたのかもしれませんね』

『え~ここに来て、本当の召喚理由を聞かされるの?』

『落ち着いてください。単なる私の推論ですから。でも、これって確実性が高いですね』

『ちょっと、神様に聞けたりとかしないの?』

『どうでしょうね。あまり下界に感心がない方なので……』

「オーマイガッ!」

「ちょっと、本当にどうしたのよ、ソルト」

 思わず叫んでしまった『オーマイガッ!』をレイに聞かれ、本気で心配されたソルトが「話したいことがある」とレイの両肩を掴んで言うものだから、たとえレイが勘違いしたとしても誰も責めることは出来ないだろう。

「大事な話……分かった。でも、皆がいるところではちょっと……」

「ああ、皆にも聞いてもらうから、集めて欲しい」

「え、ええ~そうなの。私は恥ずかしいかな。でも……うん、そうよね。ちゃんと皆にも聞いてもらおうね。じゃ、呼んで来る!」

「あ? ああ、頼む」

「任せて!」

 これから深刻な話をしようと皆を集めて欲しいとレイに頼んだが、その顔は喜色に満ちていたのをソルトが訝しむ。

「レイは大丈夫か?」

「ソルト、レイに何かワザと勘違いされるように話してない?」

「ん? だって、大事な話を皆にしたいと言っただけだろ? どこかおかしかったか?」

「え~もしかして無自覚だったの?」

「エリス、何を言ってるんだ?」

「ううん、なんでもない。レイに同情するわ」

 それから数分を待たずにレイが皆を揃えてくれた。

「ありがとうな、レイ」

「ううん。いいの」

 そう言って、レイがソルトの横に立つ。

「ソルト、大事な話があると呼ばれて来たが?」

「そうだな。そこの娘が大事な話があると言ってな」

 ゴルドとシルヴァがソルトの前に立ち、なんの用だと聞いてくる。

「それは……」

 言いかけたソルトが隣に立っているレイに気付き、皆といっしょの所に行くようにとそっと、後ろから背中を押し出す。

「え? 何? なんで? あ、そういうことなのね。そりゃ憧れてはいたけど、ちょっと恥ずかしいな」

 レイが照れながら、ゴルド達とソルトの間に立ち、ソルトをジッと見て、ソルトの方へ左手を差し出す。

「レイ、そこじゃなく皆のところで一緒に聞いてくれないか」

「え? どういうこと?」

 そこへ全てを理解しているエリスがそっとレイに近付き「あなたは勘違いしただけなの」とそれだけ言うと手を引いて、ゴルドの横に立たせる。

「ちょっと、エリス。私はソルトの……」

「だから、それがあなたの勘違いなの。ソルトは皆に大事な話があるって言ったのよね?」

「ええ、そうよ。私とソルトの大事な話よ」

「レイ。ちゃんと、思い出して! 本当にそう言ったの?」

「そうよ、ちゃんと私の肩を掴んで『大事な話がある』って言ったのよ」

「ハァ~やってくれたわね。ソルト」

「ね、何も不思議じゃないでしょ。ちゃんと『私とソルトの』……あれ? もしかして言われてない?」

「やっと気付いたのね。ソルトの発言と、あなたがこっちにいることが、その証明でしょ。ソルトは()()()()()()大事な話があるのよ」

「え~嘘!」

「嘘じゃないわ。ほら、ソルトが言うことをちゃんと聞いてなさい」

 ソルトが軽く深呼吸をしてから皆を見渡し一人ずつ顔を確認した後に話し出す。

「邪神が産まれそうだ」

「「「「「……」」」」」

 ソルトが話した後に一瞬の静寂があり、その直ぐ後に爆笑になる。

「ははは、いやぁ久々に笑わせてもらった。よりによって邪神か。面白かったが、続きはあるのか?」

「ふふふ、ゴルドよ。そう言うな。多分、ソルトもあれだろ? 『我の左腕に封印されし邪神よ!』とかそういうのだろ。確か『チュウニビョウ』と勇者が教えてくれたぞ」

 ゴルドとシルヴァがソルトを揶揄うように絡んできたが、ショコラとコスモはソルトが普段から、悪質な冗談は言わない性格だと知っているので、半信半疑ながらも「多分、本当なんだろう」と考え始めている。


 リリスは元からソルトに傾倒しているので疑うことはない。

 カスミはソルトの顔つきから『嘘は言っていない』と考えている。

 その横でサクラは『私の旦那は引きが強すぎじゃないか?』と思い、ノアは『邪神など私の前では塵芥も同然!』と不思議な自信に満ちあふれている。


 ブランカは『私の魔法を解除出来るほどの実力を持つソルトならなんとかするのでしょうね』とほくそ笑み、「久々に人化してから楽しいことばかりね」と呟く。


 シーナはルーの存在を知っているので、ソルトの言葉を疑いもせず『大変、現存している施設を本格的に稼働させて、監視員を配置しないと』と、密かに決意する。


 ガネーシャは『魔神じゃなく邪神?』と見当違いなことを考えている。


 レイは「やっぱり違った……期待した私がバカだった……」と呪詛の様に繰り返している。


「で、どうするの?」

「エリス、君は俺の話を信じてくれるのか?」

 皆の反応を見てちょっと早まったかなと考えていたソルトにエリスが聞いてくる。

「信じるわよ。少なくともあなたはそんな大それた冗談を言える人でもないでしょ。それになんの根拠もなくそんなことは言わないでしょ? それにソルトは以前に頭の中に便利な存在がいることを話してくれたわね」

「そうだったな……」

 そう言えば、ググれる存在としてルーのことを話していたことをソルトは思い出す。

「もしかして、邪神のこともその……」

「ああ、そうだ。俺の中にはもう一人の人格と言ってもいい存在がいる。以前、遺跡で頭の中でシーナが話していたことを覚えているか?」

 エリスはしばらく記憶を辿るような感じを見せると「あったわね」とだけ言う。

 ソルトは頷き、話を続ける。

「実は俺がこっちの世界に転移してきてから、ずっと俺の頭の中にはもう一人の何かが存在していた。その何かは実体のない精神体のようなものだと俺は思っている。今では俺にとって必要不可欠な存在になっている。そして、その存在に名前も付けた。名前は『ルー』だ。シーナは一時的に俺の頭の中にその子と同居していたから、シーナに確認してくれてもいい」

『ソルトさん、いいんですか? 私のことまで』

「いい。ルーのことを話さないと矛盾だらけになってしまうからね」

『分かりました。お任せします』

「ありがと」

 ソルトが独り言のように話す様子を見ていたエリスが合点がいったようで「そういうことなのね」と呟く。

「今のがそうなのね。単なる独り言と思っていたけど、その……ルーさん? と話していたのね」

「そうだ」

「それで、そのルーさんが教会のせいで邪神が産まれそうだと、そう言ってるのね」

「ああ、そうだ」

「大変じゃないの!」

「「「大変だ~!」」」

 エリスとソルトのやり取りを黙って聞いていた皆が騒ぎ出す。

「だから、そう言ったのに……」


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