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王国の思惑

「さて、今日はいろんなことがあって、お疲れでしょう。部屋を案内させますのでお休み下さい」

宰相が竜也と泰雅にそういうと、メイドが現れ二人をそれぞれの部屋へと案内する。


召喚した二人が部屋から退室したのを見届けると王が宰相に尋ねる。

「で、どうだ? あいつらは使えそうか?」

「短髪の方はそれほど難しくはないでしょう。しかし、もう一人の方は少々手こずるかと思います」

「そうか、やり方はお前に任せるが、人としての知性は残しておけよ」

「はい、そうですね。人としての知性がなくなれば獣と同じですからね。そうなれば、操るのも難しくなりますから」

「そうだな」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

竜也と泰雅がそれぞれの部屋に案内され、中に入ると大きめのベッドに机と簡単な応接セットが一組置かれている。

竜也が案内ありがとうとメイドに告げるがメイドは部屋から出ずに着ている物を脱ぎ出す。

竜也が慌ててメイドを止める。

「なんで脱ぐんだ?」

「宰相様から、お相手をするようにと言いつかっております」

「そうか。でも、僕は遠慮するよ」

「そんな! それでは私が怒られます」

「なら、朝までここにいればいい。だけど、僕にはなにもしないでね」

「分かりました……」

「僕の方にも来たってことは……」


竜也の予想通りに泰雅の部屋でも同じようにメイドが服を脱ぎ出していたが、泰雅はオロオロするばかりでメイドを止めることなく見ているしかなかった。

「どうしましたか?」

メイドが泰雅に話しかけるが泰雅は正面をみることが出来ずに横を向いている。

「こちらを見てくれないのですか?」

「見れる訳ないだろ! 早く服を着てくれよ」

「あら? 女に恥をかかせるのですか?」

「そんなの関係ない! とりあえず、早く服を……」

泰雅がそう言って、右手で顔を隠し、左手でメイドを制するように突き出していると、その左手に柔らかい感触が伝わる。

「どうです? 初めて触る女性の体は? 柔らかいでしょう」

「ひゃっ」

泰雅が慌てて左手をメイドから離す。

「あら」


『コンコン』

その時、泰雅の部屋がノックされる。

「泰雅、まだ起きているか?」

「竜也! よかった~」

竜也の声を聞き、泰雅が急いでドアに近付き勢いよく開けるとそこには竜也とメイドの二人が立っていた。


「竜也様、少々非常識ではありませんか?」

「友達の部屋を訪ねるのになにが非常識なものか。まあ、その様子じゃ間に合ったみたいだな」

「竜也~俺……」

「よっぽど、怖かったんだな」

「ま、怖いだなんて……」

「そういうことだから、二人とも戻ってくれるかな? 王様には気持ちだけ頂きますとかうまいこと誤魔化しといてよ。ね?」

「分かりました。この件は王様にも報告させていただきます」

「ああ、頼むね」

「竜也~」

泰雅は迫ってくる女性がよほど怖かったのか、顔は鼻水と涎まみれだ。

「いいから、顔を拭きなよ。ひどいことになっているよ」

「すまん」


泰雅を部屋に入らせ、心配なら誰も入れないようにしとくんだなといい聞かせ、竜也も部屋に戻る。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「そうか、色はダメだったか」

「はい、申し訳ありません」

「しかもメガネの方は、我々のことをよほど嫌っているようだな」

「はい。どうも信用には程遠いかと」

「まあ、気持ちは分かるがな。いきなり違う世界に喚ばれればそうなるのも無理はないか。だが、短髪の方はそうでもなかったと思うんだが」

「いえ、短髪の方はどうも女性の扱いに慣れていないというか、女性自身に免疫がないような感じでした」

「そうか。分かった、報告ご苦労」

「「はっ」」

メイドは報告を終えると宰相の執務室から退室する。

「色はダメか。なら、次の手を考えるか」

宰相は窓から外を眺めながら、そう呟く。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

翌朝、竜也は目を覚まし身支度を整えると泰雅の部屋を訪れる。

竜也が泰雅の部屋の何度ノックしても中からの反応がない。

「まさか、まだ寝ているのか?」

どうしようかと思案しているとメイドが都合よく通りかかったので、開けてもらおうと近寄ってくるのを待っていると昨夜のメイド達だった。

「ちょうどいい。泰雅の部屋を開けて欲しい」

「いいですよ。そのつもりで来ましたので」

メイドがエプロンのポケットから鍵束を取り出すと、泰雅の部屋の鍵を開ける。

「はい、開きましたよ」

「ありがとう」

竜也がメイドに礼を言って、扉を開けようとするがなにかで内側から抑えられているようで少し力を加えただけでは開きそうにない。

「確かに誰も入られないようにしとけとは言ったが限度ってものがあるだろうが」

竜也が少しイラつきながら、扉に込める力を増すと、なんとか人が通れるくらいに扉を開くことが出来た。


竜也が部屋に入ると『ゴォ~グォ~』と泰雅のいびきが聞こえてくる。

「こいつは……」

昨夜はあんなにひどい目にあったというのによく気楽に寝られるもんだと竜也が呆れながら文字通り泰雅を叩き起こす。

「泰雅、起きろ!」

「イテッ! なんだよ竜也……ファ~もう朝か」

「もう朝かじゃないよ。いつまで寝ているんだ」

「そうは言ってもよ。いろいろあって疲れちまってな」

「だからって……まあいい。ほら、早く身支度を済ませてしまいな」

「「お手伝いします」」

「あ、いいから。いいから、俺一人で出来るから」

「「ですが……」」

「本当にいいから!」

「すみません。泰雅がああ言うので、部屋から出ていてもらえますか?」

「「分かりました」」

二人のメイドが泰雅の部屋から出ると、竜也が泰雅に話しかける。

「泰雅はなんで断ったんだ?」

「あのなぁ、俺は起きたばかりなんだぞ」

「そうだな。僕が起こしたからそれは知っているよ」

「なら、男の生理現象も分かるだろうが!」

「ああ、そういうことね。うん、分かった。じゃ、僕も自分の部屋にいるからさっさと身支度を済ませてよ」

「あ、ああ、分かった」


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