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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第三章 遺跡の役目
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遺跡の入口が開いたけど……

 揚げ物三昧な食事を済ませ、お腹が落ち着いたソルト達は今日の寝床を決めることになったが、レイがここでいいんじゃないの一言で虎親子の巣穴の前の草むらにソルトが土魔法で小屋を建てる。小屋の中にエリスとレイが入るとソルトは無限倉庫から出したベッドを指定の位置に置くと小屋からおやすみと出る。


 小屋から出ると、母虎がここで休むつもりなのかとソルトに尋ねるのでそのつもりだと応える。

『待て! 聞いてないぞ!』

「そりゃ、言ってないからね。ゴルドさん、これだけ離せばいいよね?」

「ああ、いいだろ」

 エリス達の小屋に近すぎると前に文句を言われてから、ソルトは出来るだけ離して建てるようにしている。


『ソルトさん、レベルが上がったので少し大きめの建物が作れますよ?』

『本当に? じゃあ、やってみる!』

「『建築』……おお」

 ソルトがスキルを唱えると、ゴルドと目の前には二階建ての家が建っていた。

「また、立派な家だな。俺の家より立派だぞ、おい」

 ゴルドが早速と玄関を開け、中に入る。続いて、ショコラとリリスも中へと入る。

 ショコラとリリスは野営をするようになってからは、何時もソルトと一緒に寝ている。最初はやいのやいの言っていたエリスとレイだが、ショコラとリリスが折れないと分かるとなにも言わなくなった。


『ねえ、私達も入っていいの?』

『俺も入りたいぞ!』

「いいけど、家に入れる前に体を洗うけどいい?」

『『洗う?』』

「そう。家に入る前にキレイにしてもらうよ。それでもいい?」

『『いいよ』』

「じゃあ、後でお風呂に入るとして、軽くすすぐ程度でいいね」

『『うん!』』

「よし、じゃ行くよ! 『洗浄』」

『『お、おお~』』

 二頭の虎が洗われ少しだけキレイになったので、ソルトは家の中にいたゴルドを呼ぶ。

「なんだ、今から風呂に入ろうと……うわぁ」

 玄関前で家の中に入ろうとする虎を抑えた状態のソルトを見て、ゴルドが驚く。

「そいつらをどうするつもりだ? まさか、家の中に入れるのか?」

「うん、そのつもり。ゴルドさん、悪いけどお風呂に入れてやって貰えるかな?」

「俺がか? 喰われないだろうな?」

「大丈夫じゃない?」

「そこは言い切って欲しかったな。まあいい、お前ら足の汚れを落としてから入るんだぞ」

 ゴルドの言うことを理解したのか、『洗え』とでも言うかのようにソルトに足を差し出す。

「お前ら……」

 ソルトが小虎……と言っても地球なら成獣のサイズだが、その小虎の足を洗浄するとゴルドの後を黙って着いていく。

 最初、ソルトはゴルドに迷惑だったかなと思ったけど、風呂に向かうゴルドは少しニヤけていたから、多分大丈夫だろう。


 ゴルドに小虎の世話を任せたソルトは揚げ物料理の後始末を始める。

『おい』

「……」

『おい! 聞こえてるんだろ! こっちを向けよ!』

「なに? 忙しいんだけど?」

『私の名前は? それに息子と娘をどうするつもりだ?』

「名前は考え中! それに小虎達は自分達から家に入りたいと言ったから入れただけ。なにもする気はないから安心して」

『くっ……なら、私もあの中に入れろ!』

「無茶言わないでよ! その大きさでどうやって入るっていうのさ」

 そう、ソルトの目の前で家に入れと言っている母虎の大きさは一般的なバスの大きさくらいはあるのだ。どうやっても家と同等の大きさの母虎が入れる余地はない。

 だが、母虎はそんなソルトをフフンと鼻で笑うと、まあ見ていろと言う。

『人化』

「え? なに?」

 母虎が一瞬光ったかと思うと、その場所には一糸まとわぬ姿で、まるでソルトに見せつけるように立っている二十代前半くらいに見える女性がいた。その姿は腰までの長い白髪、大きめの双丘、くびれた腰、ほどよい大きさの臀部とスタイル抜群だが、ソルトよりは低い身長だった。


「どうだ? これなら文句あるまい?」

「えっと、母虎さんでいいのかな?」

「そうだ。久々の人化だが、上手くいったようだな」

 そんな時、レイ達が小屋から出てくる。

「ソルト、なにかしたの? さっきの光はなに?」

「ソルト……その女性は誰かしら? なんで裸なのか聞いてもいいかしら?」

「あ、エリス、ちょうどよかった。でも、エリスのじゃ無理か。レイ、なにか着る物をかしてあげて」

「な、私には無理って、どういう意味よ!」

「どういうって、みたまんまだけど」

「ソルト! それより誰なの?」

「レイもエリスも落ち着いて! こんな所に普通の人がいる訳ないでしょ。この裸の女性はさっきの白虎のお母さん。それよりも早くなにか着せてあげてよ」

「う、うん、分かった。ちょっと待ってて」

「あ、いいや。それよりもこのお母さんをそっちで寝かせてあげて。家に入りたいんだってさ」

「私はソルトの家に入りたいと言ったんだ。こんな小娘達の家ではなく」

「はいはい、いいからさっさと小屋に入るわよ。ほら、エリスもいつまでも呆けてないで、入るわよ」

「私じゃ無理……私じゃ無理……」

「もう、いつまでも。そんなの見た目で分かることでしょ。ほら」

「レイまで、私をバカにするの?」

「あ~もう、面倒くさい。いいから、入るの。お母さんもほら!」

「私をお母さんと呼ぶな!」

「なら、名前は?」

「それは……」

 母虎がソルトをチラリと見るが、ソルトは手を振るだけだった。

「ソルト~」


 ◆◆ ◆ ◆ ◆


 翌朝、ソルトはゴルドが呪詛の様に「俺が洗ったのに……」と繰り返していたのが少しだけ気になるが、ショコラ達と身支度を済ませてから、家の外に出る。


 ソルトは家の外に出て、軽く伸びをしてから昨日の竈を使って朝食の用意を始める。

「さて、なにがのこっているかな」

 無限倉庫の中を確認したソルトは、残っている物で朝食の準備を進める。


「おはよう、ソルト」

「おはよう、レイ。昨日はどうだった?」

「大変だったわよ~あの、お母さん、いろいろたまっていたみたいでね。もう、愚痴がすごいのなんの。後でなんかお礼してよね」

「なんで、俺が」

「なんでって、当然でしょ! ソルトが裸にしたんだし。それに半分以上はソルトに対する愚痴だったし、それにエリスが相づちうって盛り上がったりして、大変だったんだからね」

「エリス、言い方。まるで俺が脱がせたみたいじゃないか」

「それもそうね。でも、裸にはしたでしょ?」

「俺が頼んだ訳じゃないし」

「それが愚痴の原因でもあるんだけどね……」

「で、約束の名前はどうなった?」

 レイと話していたソルトの横に母虎が現れ、ソルトに約束の名前を要求する。


「名前か……」

「まさか、嘘だったのか!」

「いや、そうじゃない。え~と、そうだな。『サクラ』でどうだ?」

「サクラ……サクラか。いいな。気に入ったぞ!」

 母虎がそう言った瞬間、母虎とソルトの体が光る。

「ソルト! 大丈夫?」

「ん? どうした?」

「どうしたじゃないでしょ! 自分の体が光ったのよ? なんで分からないの?」

「光った?」

「そうよ、そこのサクラと同じタイミングでソルトの体が光ったのよ」

「まさか……」

 そう思いソルトが自分のステータスを確認すると『テイム』と追加されていた。

「なんで? ショコラ達の時には出なかったのに?」

『ソルトさん。リリスやショコラ達の時には、そこまでの依存関係が成立していませんでしたが、その……そこの母虎、サクラの場合はソルトさんを……その……』

『なに? もしかして言いにくいこと?』

『あ、いえ……は、伴侶として認めたということもあり、サクラを従属させてしまったようです』

「え~」

「どうしたの?」

「なんだ、騒々しい」

「また、ソルトがなにかしたの?」


 ◆◆ ◆ ◆ ◆


 朝食を済ませてから、ソルトは昨夜の騒ぎの時にいなかったゴルドにサクラのことを説明し、そしてさっきの朝食前の騒ぎの内容を説明する。


「つまり、ソルトはその気がないのに、そこのサクラを裸にして、従属させたとそういうことか?」

「ゴルドさん、事実だけど事実じゃないよ。裸になったのは人化を母虎が……サクラが使った結果だし。そもそも俺が人化してくれと言った訳じゃないからね」

「で、この後はどうするんだ?」

「どうするって?」

「いや、サクラをテイムしたんだろ? なら、面倒を見る義務があるんじゃないのか?」

「え~」

「なんだ。旦那は私のことが嫌いか?」

「「『旦那!』」」

「旦那ってなに? 呼ぶならソルトって呼んでよ」

「なんだ。旦那様は恥ずかしがり屋なのか?」

「そうじゃなくて、サクラの旦那になった覚えはないからね」

 ソルトがサクラに対し旦那じゃないと言い切り、少しだけホッとするエリス達。

「なんで、こんな男が……」

 それを見たゴルドが、そう呟き不思議そうにソルトを見る。


『お母さんの旦那ってことは、お兄さんは私達のお父さん?』

『お父さんなの?』

「言っとくけど、それは違うからな」

「私をこんな体にしといて……」

「サクラ! 違うだろ? 言い方に気を付けて」

「で、結局どうするの?」

「飼い主として、責任を取らないとダメなんじゃないの?」

「そんな、責任って……」

『お兄様、少々迂闊過ぎるのでは?』

「リリスまで……」

 ソルトは目を瞑り腕を組んで考える……フリををする。

『ルー、どうすればいいと思う?』

『知りません! ソルトさんの好きにすればいいと思います!』

『ルー……』

『……』


「ソルト、いつまでも考えてるふりなんか止めて、さっさと言いなよ」

「なら、いっしょに来るか?」

「おや、それは私を迎え入れてくれるということか?」

「いや、飼い主としてだな」

「ふむ、まあいい。旦那……ソルトはまだ森の奥に行くんだろ。なら、私が案内してやろう」

「そうか。なら、頼む」

『お母さん、私達はどうなるの?』

『もう、お別れなの?』

「お前達も好きにすればいい。ソルトに着いていくのも、勉強になるとは思うが。選ぶのはお前達だ」

『『……』』

『私達は歓迎しますよ』

『一緒だと楽しいよ?』

 サクラの言葉とリリス達の誘いとも取れる言葉で小虎達は互いに顔を見合わせ頷く。

『ソルト……お兄様でいいんですよね?』

「ああ、それでいい。俺はお前達の父親じゃないからな」

『分かりました。では、改めてお願いです。私と弟も一緒に着いていってもいいでしょうか?』

『お願い』

「いいよ」

『『軽っ』』

「まあ、実際の世話はサクラがするんだろ。なら問題ないしな」

 小虎達の願いをあっさり承諾したソルトに驚く小虎達だが、ゴルド達はこうなることが分かっていたようで特に驚くこともなかった。


『では、お兄様。私と弟にも名前をお願いできますか?』

「名前か~俺じゃなきゃダメ?」

『ええ、お願いします』

『します!』

「じゃ、ちょっと待ってね。えっと、女の子の君は……カスミ。で、弟の君は……って、まいったな男の子の名前って……虎吉じゃダメだよね」

「ソルト、それはあんまりだよ」

「だよね、えっと……うん、コスモス。コスモスで!」

『コスモ! いい! 気に入った。今日から俺の名はコスモだ!』

「え? ちょっと待って。違う、一文字足りないから! って、あ~あ」

 ソルトと小虎の体が光に包まれ、小虎がテイムされたことが分かる。

『お兄様、ありがとうございます。私はこれからカスミを名乗ります。そして、人化を覚えた暁には……』

 カスミと名付けた小虎が言い切る前に、ソルトとカスミの体が光り出し、光が収まるとソルトのステータスの従属欄の『サクラ』の後に『カスミ』、『コスモ』が追加されていた。


「俺が洗ったのに……」

「ゴルドさん、しつこい」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「それで、私はどこまで案内すればいいの?」

「方向的にはあっちだな」

 サクラの質問にソルトが森の奥を指差して答える。


「そんな森の奥になんの用があるの?」

「遺跡だ。俺達は森の中心部にある遺跡を目指しているんだ」

「遺跡ね……私が行ったときには建物みたいなものはなかったけど」

「そうか。なら、埋まっているかもしれないな。実際、どうなっているかは行ってみないと分からないしな」

「そう、分かったわ。旦那様の頼みならしょうがないよね。私が案内してあげるわ」

「ああ、頼む」

 サクラ達の巣穴の前に作った家をソルトが処分し、森の奥へと向かう。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ねえ、サクラ。さっきから出てくるの爬虫類とか昆虫類ばっかりなんだけど……」

「そうね、この辺りはそういうゾーンみたいね。私もいい気分じゃないし、さっさと脱けましょう」

 サクラの言う通りで、昆虫類は多勢に無勢で襲ってくるが、討伐したとしても可食部分はなく、あったとしても手を出すのを躊躇ってしまうものばかりで、素材としても微妙なものばかりだ。たまに大型の甲虫とかを討伐することはあるが、大体は少し大きめの虫であるため、ソルトの無限倉庫に収納することなく亡骸は地中深くに埋められ焼却していく。

 爬虫類系は全く別で、討伐する際にはなるべく皮を傷つけることがないように要求される為に、粗雑なレイはうんざりしている。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

『ソルトさん、この辺りです』

『この辺か。ありがとう、ルー』

 ルーはこの辺りと行ったが、ソルトの視界には建物らしき物は映っておらず、見えるのは鬱蒼とした木々と小高い丘だけである。


『ソルトさん、場所的にはあの丘の辺りだと思います』

「あそこ……か」


 ゴルド達はまだ周辺をさがしている中で、ソルトはルーが教えてくれた丘の方へと足を向ける。


「ここで合っているのか? なにもないようだけど……なんの細工もない単なる岩肌だよな」

 ソルトは岩肌を触りながら、目の前の岩肌を鑑定してみる。

「お! へ~なるほどね~」

「なにがなるほどなの?」

 ソルトが鑑定結果を前にニヤニヤしていると、いつの間にかレイ達が周りに集まっていた。

「いやね、ちょっとした好奇心から、この岩肌を鑑定してみたんだ。そしたらさ、『遺跡の入口』って出た」

「「「「え~?」」」」

「でも、どこが入口?」

「そうよね、穴も無ければ鍵穴みたいな物もないし……」

「そうだな。それに俺の剣では切れそうもない」

「ちょっと、殴ってもいい?」

「サクラ、それは最終手段だ。なにがあるか分からない内は止めてくれ」

「ちぇ、残念」


 ソルトは岩肌をジッと見ていたら、ちょうど人の手の平くらいの大きさで窪んでいて、その奧が平たくなっている箇所を見つける。


「もしかして……」

 ソルトがその窪みに手を入れると、手の平をそのまま岩肌にペタリと着ける。

『……マスターノセツゾクヲカクニンシマシタ。イリグチノドアヲヒラキマス』

『今のはルーじゃないよね?』

『ええ、違います。私じゃありません』

 そして、ソルト達の前の岩肌がゆっくりと持ち上がる。


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