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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第二章 遺跡
33/131

そういうサプライズはいりません

「ただいま~」

「「「……」」」

エリスが使用人家族と一緒に帰宅するが、使用人達はなにも言わない。

「ほら、帰ったらなんて言うの?」

「「「え?」」」

「『え?』じゃないでしょ。今日から、ここがあなた達の家でもあるんだから、ほら『ただいま』でしょ?」

「ただいま?」

「そうよ、じゃ子供達! 元気よく言ってみようか! はい、『ただいま~』」

「「「「ただいま~」」」」

「じゃ、お母さん達も、はい!」

「「「ただいま……」」」

「もう、元気がないな~次、お父さん達ね、はい!」

「「「ただいま!」」」

「ん~元気はいいけど、可愛さが足りない。じゃ。も「もういいから、エリス」……は~い」

「さ、入って下さい。荷物は届いてますが、誰の物か不明なので、そこに一纏めにしています。後で分けて下さい」

「「「はい」」」


「じゃ、部屋なんですが、申し訳ないけど、赤ちゃんがいる家族を最初に。次にお子さんがいる家族で最後は若夫婦の順番で部屋を決めて下さい。エリス、お願いしていい?」

「いいわよ。じゃ、先に部屋を決めちゃいましょう。え~と最初は……あなた達ね。じゃ、行きましょうか」

「はい。ですが、いいんですか?」

「なにが?」

「いえ、部屋を用意して貰えるのはありがたいのですが、その分、賃金が減らされるのではと」

「ああ、そう言うこと。大丈夫、気にしないでいいから」

「あの、大丈夫とは?」

「ソルト、言葉が足りなさ過ぎて分からないわよ」

エリスに言葉が足らないと言われたソルトが、慌てて説明する。


「ごめんね、大丈夫と言うのはあなた達家族から家賃や食費とか徴収することもないからと言うこと。ついでに賃金は大体一家族で月三十万セルでお願いします」

「「「……」」」

「あれ? 少なかった? ナタリーさんから聞いた額よりは多めにしたんだけど?」

「逆です!」

「そうです。なんで増やすんですか?」

「そんなの聞いたことありませんよ!」

使用人家族が驚くが、ソルトは高い賃金に不満を言われる理由が分からない。


「先に言っとくけど、このソルトの言動にいちいち驚いていたら、ここで暮らすのは難しいわよ。で、どうする? 今ならまだ引き返せるけど?」

エリスが、使用人家族に文句があるなら、出て行っても構わないと話す。

「すみません。もっと酷い環境を想像していたので、あまりの厚遇に驚いてしまいました。賃金に関しては文句などありません。喜んで働かせて頂きます」

「「よろしくお願いします!」」


三家族が並んで頭を下げるのを見て、ソルトが苦笑する。

「ほら、エリスが脅すから」

「そうよね~怖いおばさんだね~」

「レイ! 子供達に余計なことを吹き込まないでよ!」

「だって、本当のことじゃない。ねえ」


ソルトが二人のやりとりを止めさせると、もう面倒だから先に契約しましょうと三家族に話しかける。

「契約ですか?」

「ええ、賃金を少し高くしたのも、契約に含まれると思って下さい」

「どんな契約かは確認出来ますか?」

「細かい内容は言えませんが、身体的にどうこうはないです。ですが、お子さんを含め家族全員を契約対象とさせて頂きます。その辺はご了承ください」

互いの家族の顔を見て、少しの間話し合い、やがて夫婦が決したように頷くとソルトにお願いしますと頭を下げる。


「分かりました。ちなみに契約内容は……」

『一.この屋敷内で見聞したことを他人に口外しない』

『ニ.屋敷の住人であるソルト、エリス、レイの私物を私的に利用しない』

『三.従魔のリリス、ショコラを敬わない』

「……と、なります。承諾して貰えるのであれば、こちらへ。『契約(コントラクト)』をかけさせてもらいますので」

ソルトから口頭で伝えられた内容をそれぞれの家族で反芻し確認する。


「あの、質問なんですけどいいですか?」

「はい、え~と……」

「あ、ワーグと言います。妻はティアです」

「ワーグさんにティアさん。で、質問は?」

「はい、一、二は分かるんですが、三はどういう意味ですか?」

ソルトが話した契約内容でリリス達のことが分からないと言う。


「あれ? ワーグさん達はなにも思わないの?」

「ええ、さっぱりです」

「でも、そっちの二家族は、なにか思うところがあるみたいだけど? まあ、分からないと言うのなら、そのまま契約しちゃいましょう。残りの人達はどうします? 三番がいや?」

「くっ……しょうがない。別に敬うのを禁止されるだけだ。こちらが心の中で思うことまでは契約には反しないだろう」

「そうね。分かりました。お願いします」


「分かりました。そっちは?」

「お願いします」

「「「お願いします」」」


ソルトが全員の顔を確認するとレイを呼ぶ。

「なに?」

「いいから、そこに並んで」

「なによ。まあ、並ぶけどさ」


『ルーお願いね』

『はい、お任せを』

「じゃ『目標固定』」

『では、行きます! 『契約』』

使用人家族+レイの体が光り契約が成されたことを示す。


「あれ? ソルト、私も契約対象なの? どういうこと?」

「それは『お兄様、私から話します』そう? 出来るのリリス」

『任せて下さい』

リリスが使用人家族+レイの顔を見ると念話で話しかける。

『聞こえますか?』

「なんだ?」

「頭の中に聞こえた……」

「やはり、あの方は……あ、痛い」

旦那さんが頭を抑え疼くまる。


「あ~だから、言ったのに……」

「なにをしたのですか?」

「俺じゃないよ。多分、旦那さんはリリスに対して祈ろうとかしたんじゃないの?」

「ぐっ……そ、その通りです」

「それを止めないと、ずっと頭痛が続くよ」

「ですが……ぐっ」

「あなた、いいから言う通りにして!」

そんな様子を見ていたレイが一人訳が分からず、どういうことなのかソルトに質問する。


『レイさん。それは私がフェンリルだからです』

「え~フェンリル? ホワイトウルフって言ってたじゃない!」

「だから、三番の契約内容なんだよ。リリス達がフェンリルだと言うことは秘密にしたいのに、あんなに態度に出されちゃうとね」

「なら、なんで私まで契約させられたの?」

「だって、レイだし」

「なに、その理由!」

「いや、フェンリルだって知ったら、絶対誰かに自慢するでしょ?」

「……しないわよ」

「もう、その間が答えじゃない」

ソルトからの質問に対し、少し間があったためにエリスにバレてしまったレイ。

「……」


「ワーグさんも納得してくれた?」

「はい。そういうことなのですね。そういうことでしたら、納得です」

「ちなみになぜ、リリスを拝むのか聞いても? え~と……」

「シェルです」

頭を抑えながら立ち上がった旦那さんが答える。

「シェルさんね。理由はなに?」

「我々、狼系の獣人はフェンリル様が始祖と聞いています。なので、リリス様を見た時からフェンリル様だと直感しました。なので、つい敬ってしまうというか……」

「なるほどね」

『気持ちはありがたいのですが、私達はここで平和に暮らしたいと思っています。もし、私達がフェンリルだとバレたらどうなると思いますか?』

「どうなるかですか……」

ソルトは横で不満そうにしているレイにも聞いてみる。


「レイはどう思う?」

「どう思うって、皆してモフりたがるんじゃないの?」

「それは特殊な性癖の人だけだろ」

「じゃ、どうなるっていうの?」

ソルトが嘆息しレイの質問に答える。


「討伐されるんだよ」

「討伐……討伐ってことは殺されちゃうってこと?」

「ああ、そうだよ。人にとってフェンリルは恐れられる魔獣でしかないんだよ。それに毛皮とかも高値で取引されるとも聞く」

「それは本当なの?」

「試してみるか?」

「いや、そんなことさせない!」

「なら、レイにも契約させたことは理解してもらえた?」

「うん、分かった。ごめんなさい、リリス、ショコラ」

『いえ』

『なんの話?』


「はい、じゃ無事契約も済んだことだし、部屋を決めてもらおう。エリス、お願いね」

「はい、じゃ行きましょうか」

「「はい」」

赤子を抱いた家族がエリスの後をついて二階へと上がっていく。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「向こうの一番奥がソルトの部屋になるから、選ぶなら反対側の方がいいかもね」

「では、反対側の奥から見てもいいですか?」

「いいわよ」


まずは突き当たりの部屋、ソルトの部屋と反対位置にある部屋のドアを開けた途端にすみませんと言われる。

「中は見なくていいの?」

「いえ、私達が使う部屋じゃないです」

「そう? でも、小さい子もいるしこのくらいがいいんじゃないの?」

「そんな……恐れ多いです」

「まあ、いいわ。じゃ、その隣ね」

エリスがドアを開けると中は二間の部屋が仕切りで分けられている。

「あの、これより狭い部屋はないんですか?」

「あるけど、屋根裏とか一階の使用人部屋とかになるけど」

「そこでいいです。そこにして下さい。お願いします」

「ふぅ。あのね、赤子を抱いて、一間でいいっておかしいでしょ? それに女の子も二人いるんだから。なんなら旦那を使用人部屋に移して、あなた達だけで、ここの部屋に住んでもいいくらいよ」

「それもいいかも……」

「お姉ちゃんもそう思う?」

「お前達……俺がそんなに邪魔か?」

ちょっとお父さんに同情しながらエリスが助言する。


「とりあえず、この部屋でいいわね。他にも待っているんだし。ね!」

「本当にいいんですか?」

「いいから、ほら! 旦那さんは自分達家族の荷物を取りに行く!」

「はい!」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

エリスが階段の上から、次の家族を呼ぶと子供達が我先にと階段を駆け上がる。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


エリスもさっきの家族の反応を見ているので、奥の部屋は紹介せずに先ほどの家族の横の部屋を紹介し、そのまま押し込む形で納得させる。


次の若夫婦は少し気を使い、一部屋ほど間を開けた部屋へと押し込むと、下に戻りソルトに終わったと報告する。


「お疲れ。あの家族のベッドは後で届くんでしょ?」

「ええ、なんとか数だけは揃えたわよ。でも、私達のがないのよね」

「そうか、じゃあちゃんとしたのは注文するとして、俺のを出すから。当分はそれを使ってくれ」

「いいの?」

「ああ、本当は野営用にと確保していた分だ。まあ、いいから。エリスの部屋に案内してくれ。レイもな」

「はい、お願いね」

「は~い」


まずはエリスの部屋へと向かうと、ソルトの隣の部屋がいいとなり、ソルトはエリサの仕事道具とベッドを指定の位置に置く。

次にレイの部屋だと、迷わず屋根裏部屋へと案内し、好きなのを選べというと、なぜか角部屋。つまりソルトの真上の部屋を選んだのでソルトは嘆息しながらもレイの持ち物とベッドを指定の場所に置くと部屋を出る。


気付くとショコラもリリスもソルトの横にくっついて歩いている。

「リリスとショコラはあいつらと一緒にいないでいいのか?」

『ええ、今はお兄様と一緒で』

『僕も』

「まあ、いいけど。そういや、風呂に行く途中だった」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルトは使用人達の部屋を回り、風呂に行くから替えとタオルを持って着いて来るようにと旦那達と男の子に言う。

「風呂ですか?」

「そうです。入り方もついでに教えるので。風呂のマナーは大事だから、ちゃんと覚えて下さいね。奥さん達にはエリスが教えるから。ほら、用意して」

「「「はい」」」


風呂に行くと、まず脱衣籠に着ている衣服を入れるように言い、全てを脱ぐとタオルを持ち浴場へ入る。


「意外と広いな」

ボイラーに水を貯めると、ゴブリンの魔石に火魔法を付与したものを放り込む。

「これでしばらくは保つかな」

そして、お湯が張られていない浴槽に向かって、『給湯』スキルを使って満たす。


「よし、これでいい。じゃ、いいか。これから手順を見せるから、俺のを真似して下さい」

「「「はい!」」」


ソルトが浴槽から手桶でお湯を汲むと足元からゆっくりとお湯を掛けると次は肩口からお湯をかけ、最後に股間を軽くすすいでから浴槽に入るとふぅ~と思わず声が出る。

すると「「「「「ふぅ~」」」」」と横からも声が出る。

「いや、ここまでは真似する必要はないから」

「いえ、真似するつもりはなかったんですが、お湯に浸かると、なぜか自然と出ちゃいました」

「私もです。初めてですが意外といいものですね」

「喜んでもらえて、よかったです。でも、ちゃんと毎日入って、清潔を保って下さいね」

「「「え?」」」

「毎日ですか?」

「そう、毎日です」

「ですが、私達は魔法は使えませんよ?」

「それは、魔力があれば大丈夫なので」

「分かりました。使わせてもらいます」

「でも、風呂掃除は体力使うから、旦那さん達の当番制でお願いね」

「「「はい!」」」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

風呂から上がりタオルで頭を乾かしながら、革サンダルで厨房へと顔を出す。

「あ、ソルト。仕込み中だったものを出してよ」

「あ、そうだったね。はい、これでいい?」

「うん、揃ってる。あとさ、お祝いなんだから、ちょっとキングかクイーンを出してくれない?」

「ああ、そうだね。じゃ、キングとロースを十キロずつで」

「ちょっと、多いわよ」

「そんなことないでしょ。でも、なんのお肉か言うと食べてくれなさそうだから、黙っててね」

「あ~あり得る。分かった」

「じゃ、よろしく!」


「あ、ソルト!」

エリスが台拭きを投げてよこしたのを目の前でキャッチすると、テーブル拭きをお願いされる。

「了解!」


ソルトがテーブルを拭き終わるころ、旦那達が子供達の頭を拭きながらソルトの元にやってくる。

「旦那様、そういうことは私達の仕事です」

「旦那様? 俺のこと?」

「そうですよ。私達の雇い主だから、旦那様でおかしくはないですよね」

「いやでも、ほら、こんな若いんだし、その呼び方はどうかなと思うよ」

「ですが、他に呼びようもないですし」

「そうか、それだとそちらが困るもんね。じゃ、ソルトと呼び捨てで」

「「「それは出来ません!」」」

「じゃあ、ソルト君でお願いします」

「『様』ではダメなんですか?」

「だって、君達は俺が雇った使用人とはいえ、この家で一緒に暮らす家族みたいなものでしょ。それに歳上の人に『様』とか『さん』をつけて呼ばれるのは、正直抵抗があります。だから、ここは僕からの我儘と言うことで『君』でお願いします」

ソルトが旦那達に頭を下げお願いする。


「顔を上げて下さい。私達に頭を下げる必要なんてありません。いっそ『君を付けて呼べ!』と命令して下さい」

「そんな命令なんて出来ません」

「それだと、こちらが困るのですが」

「いいから、ソルトの気がすむようにやらせてあげて。これも私からの『お願い』よ」

「そんなエリス様まで」

「あ、私はエリスさんでお願いね」

「「「……」」」

「返事は?」

「「「はい、エリスさん!」」」

「よろしい。あと、お子さんにも私のことはおばちゃんと呼ばせないようにね。これだけはちゃんと言っといてよ! いい?」

「「「はい! エリスさん!」」」

「うん、それでいいわ。じゃ、料理を運ぶのを手伝って」

「「「はい! エリスさん!」」」


エリスに指示で旦那連中が料理を厨房から運び、テーブルの上に並べて行く。


「これで全部ね。さあ食べましょ」

「「「はい! エリスさん……って、俺達もですか?」」」

「そうよ、ほら座って。ソルトは家長として、ここね。隣が私で、反対側にレイ。で、それぞれの間にリリスとショコラ。あとは自由に座ってね」

「「「……」」」

「ほら、どうしたの? あなた達大人が座らないと、子供達が座れないでしょ」

「いや、ですが……」

「いいから、座って下さい。それとも命令した方がいいですか?」

「いえ、ソルト……君。そこまでは必要ないです。ほら、お前達も座りなさい」

「はい。では」


皆が座ったのを確認し、ソルトが席を立つと今日からよろしくお願いしますと短い挨拶をすると、皆でいただきますと合掌し、目の前に盛られた色んなおかずへと手を伸ばす。


「父ちゃん、このお肉うまいよ。なんのお肉かな?」

「そうか、どれ? うん、確かにうまいな。でも、これだけのお肉は俺も初めてだな。なあお前は調理したんだから分かるだろ?」

「ごめんなさい。このお肉はエリスさんがメインで作ってたから、私はなにも知らないの。でも、確かに美味しいわね」

そんな会話が家族の間で交わされ、余らすのではと思っていたキングの生姜焼きとクイーンの厚切りロースはあっという間に完食される。


「ふぅ~うまかった。こんなに美味しいのを食べたのは初めてかもな」

「そうね、私もよ。でも、本当になんのお肉だったのかしら」


エリスとソルトはそんな会話を聞きながら、悪戯が成功した子供の様な笑顔を三家族に向ける。

「知りたいですか?」

「ソルト……君。意地悪をしないで教えてくれないか? 同じ物を食べたいと思っても、そもそもなんのお肉かを知らないなら頼むことも出来ないし。なあお前」

「ええ、そうですね。差し支えなければお聞かせ下さい」


ソルトはエリスと顔を見合わせ頷く。

「答えを聞いても怒りませんか?」

「こんなうまい物を食べさせてもらったんです。感謝こそすれ、怒ることなんてないですよ。それで答えはなんですか?」

「オークキングの生姜焼きとオーククイーンの厚切りロースです」

「「「……」」」

ソルトが答えを言うが、皆の反応がない。


「あれ? 聞こえなかったのかな」

「いえ、私の耳がどうにかなってないのなら、『オークキングの生姜焼き』と『オーククイーンの厚切りロース』と聞こえました。間違ってないですか? いえ、間違っていると言ってもらえませんか!」

「え? 間違ってないよ。大丈夫! それで合っているから」

「「「……」」」

ソルトがちゃんと聞こえたことに対し間違いがないと答えるも、また反応がない。


「あれ? どうしたの?」

「なんて物を食べさせるんですか!」

「え~怒らないって言ったのに~!」

「あ、すみません。怒ってはいないです。怒ってはいませんが……ああ、もう、上手く言えません。ですが、驚いています」

「そうでしょ、そうでしょう」

『驚いた』お言う言葉にソルトとエリスが小さくガッツポーズをする。


「ソルト君。あなたはこのお肉の価値を分かって、私達に食べさせたのですか?」

「そう、今の俺の手持ちの中で一番上等なお肉だから、出した」

「どうしてですか!」

「どうしてって、あなた達と一つの家族になった記念だから、いいお肉でお祝いしたいと思ったからかな」

「分かりました。それがあなたの私達への気持ちと言うことでいいんですね」

「う、うんそうだけど、なんか重いよ」

「当たり前です! 普通の人が一生の内に食べられるかどうかと言うお肉をあんなに食べさせたのですからね。私達もそれに見合う働きをしないといけません」

「え? そうなの。それは困ったね」

「なぜですか?」

「だって、まだいっぱいあるんだよ。皆で頑張って消費しないと無くならないじゃん」

「「「……」」」

「ねえ、また、このお肉が食べられるの?」

「そうだよ。俺はそのつもりなんだけどね。お父さんがダメって言うから」

ソルトの言葉に男の子が旦那さんの顔をじっと見る。


「ねえ、お父さんはなんでダメって言うの? お肉、おいしいじゃん」

「いや、俺は……」

「ねえ、いいでしょ」

子供達からの突き上げに困る旦那さんを見て、エリスが助け舟を出す。


「ソルト、もういいでしょ。はい、悪ふざけはここまでよ。ごめんね。ソルトがふざけ過ぎたわ」

「エリスさん、分かってくれましたか!」

「ええ、ソルト。キングは週に一回、クイーンは週三回でいいでしょ」

「そうだね。じゃ、メニューはエリスに任せるよ」


「えっと、そういうことじゃ……ないんだけど……」

「あなた、もうやめましょう。多分、この方達はこういう人達なのよ。あのフェンリル様といい、色々桁違いな人達なんだと、そう思いましょう」

「でも……」

「もう、でもじゃないでしょ。今は、この家に来られた幸運を喜ぶところでしょ。ねえ、あなた達もそう思うでしょ」

「そうだよ、父さん。毎日美味しい物を食べられるんだから、多少のサプライズは受け入れようよ」

「僕はよくわからないけど、美味しいし、楽しいから、ここは好きだよ」

「はい、あなたの負けね。じゃ、後片付けも手伝ってね。あなた達もお願いね」

「「は~い」」


「俺が悪いのか?」

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