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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第二章 遺跡
26/131

遺跡はどこ?

ソルト達がここ『エンディ』に滞在してほぼ一月が経過していた。

その間に特に変わったこともなく、今日も朝からギルドの依頼を受け魔の森へと出掛けるソルト達四人だった。


「よう、ソルト。今日も魔の森か?」

「ああ、そうだよ。なにかリクエストあるなら聞くよ」

「おう、そうか。なら、バイパー系がいいな」

「げっよりによってヘビなの」

「あら、レイだって美味しいって喜んで食べてるじゃない。なにがダメなの?」

「最初っから、唐揚げの状態でいるなら私だって文句はないわよ。でも、あのトグロを巻いて滑っとしたのはね~」

「ほれ、バカ言っとらんで、さっさと行くんじゃ。後ろが支えとるわ」

「あ、ゴルドさん。今日も付き添いですか?」

「ああ、そうだ。お前らも頑張れよ!」

「「「はい!」」」


ソルト、レイ、ゴルド、エリスの四人で構成されるパーティ『探求者』の一行が、街の門を抜けると魔の森を目指す。

「ねえ、ソルト。そろそろいいんじゃない?」

「なんだ、レイはもう疲れたのか?」

「ゴルド、そういう訳じゃないけどさ、疲れないのなら、その方がいいじゃない。ね? ソルトもエリスもそう思うでしょ?」

「ああ、分かったよ。じゃ、ちょっと離れてくれ」

ソルトが地面に手を付けると『加工(モデリング) (ボード)』と唱えると、地面に触れていたソルトの手が少しだけ、地面から浮き上がり幅一メール、長さ三メール、暑さ五センチメールの土で固められた板が現れる。

「レイ、まだ乗るんじゃないって、いつも言ってるだろ!」

出来たばかりの板にソロ~ッと乗ろうとしていたレイが、ソルトの声にビクッとなり上げた右足をゆっくりと下ろす。


「別に今乗ってもいいじゃないの」

「あのな、何回も言わせるな。先に重い物を載せるとバランスを取るのが難しいって言ってるだろ!」

「重くなんかないもん!」

「そうか、前に鑑定したら三キロほど変化があったぞ」

「うそ!」

「そう思うか? 心当たりがあるんじゃないのか?」

「な、ないわよ!」

「ふ~ん、まあいいけど。だが、ゴマかしてもその革鎧はパツンパツンじゃないか。特に腰の辺りがな」

「え?」

「確かにそうね。今度、いいダイエットの方法でも教えましょうか?」

「いらない! だって、私はまだ成長期だもん!」

「へ~最近の成長期は縦じゃなく横なんだな」

「……」

「はぁ、毎回毎回よく飽きもせず同じやり取りが出来るもんだな。もう、俺はこのやり取りなら、ソラで出来るぞ」

「「ごめんなさい」」

ゴルドがレイに注意するのを聞きながらソルトは準備を進める。


「後は、ここに魔石を嵌め込んで……よし、『浮遊(レビテーション)』、もう乗っていいぞ」

「どれ、よっこらしょ」

「もう、ゴルドはおじさんくさいね」

レイがピョンと勢いよく乗り込む。

「こら! 飛び乗るなと何回言わせるんだ!」

思わず転がりそうになるゴルドがレイに文句を言うと、本当にお子様なんだからとエリスがそっと乗り込む。


「よし、乗ったな。じゃ、出発! 『噴出(ジェット)』」

ソルトが板に嵌め込んだ魔石に手を触れながらスキルを発動すると浮遊している板の下から、空気が斜め下方向に噴き出し『探求者』を乗せた板が進む。


「ん~これこれ! やっぱり、風を切って進むのは気持ちがいいよね~」

「ほら、レイ! 危ないから座りなさい!」

「大丈夫だって、エリスもやってみなよ!」

「いいわよ。もう、落ちても知らないわよ」


ソルト達を乗せた板は魔の森の中を進んでいく。

「なあ、ソルトよ。この一月で魔の森の攻略も結構進んだと思うんだが、まだ遺跡には行かないのか?」

「遺跡ですか。多分、もうすぐなんですけどね」

「もうすぐ? どういうことだ」

「あれ? 言ってませんでしたっけ? 遺跡の場所は魔の森の中心近くなんですよ」

「「「え~」」」

「なにをそんなに驚くんですか?」

「そりゃ、お前驚くに決まっているだろ! 毎日、こんなヘンテコな板に乗せられて無理矢理に魔の森へと連れてこられているだけだと思っていたわ! それが、まさか……」

「でも、結構中心近くまで来てますよ」

「そりゃ、そうだろ。ここに来るまでにどんだけのコロニーを潰したと思ってるんだ!」

「でも、まだ残っているんですよね~例えば、そことか」

ソルトが板を止め、ゴルド達に準備するように伝える。


「で、今度はなんだ?」

「ちょっと待って。なんか嫌な音がする。なんか、生理的に受け付けないというか、こうシュルシュルって……」

「レイ、それって……」

「当たりですね。イビルバイパーのコロニーで、数は全部で……三十匹に届かないくらいみたい」

「みたいって……ああ、もういい! レイ、エリス行くぞ! ソルトはいつものように後方から援護だ」

「「「はい!」」」

「あ、ゴルドさん」

「なんだ、こんな時に」

『シュッ』と音がしたと思ったら、ソルトが投げた棒手裏剣がゴルドを背後の樹上から狙っていたイビルバイパーの幼体を仕留める。

「ありがとな……」

「いえ、どういたしまして」


ゴルド達三人がコロニーを目指して、奥へと進んで行くのを見ながらソルトは幼体を無限倉庫にしまうと、これじゃまだ足りないと呟きゴルド達の後を追い掛ける。


ソルトがコロニーに近付きコロニーの中を覗くとゴルドが成体のイビルバイパーを相手にしている横で、エリスとレイが幼体を仕留めている。

幼体と言っても大きさは三メール近くもあり、鎌首を上げるとレイ達の身長を超える。

「ちょっとエリス。もう少し頑張りなさいよ。こっちに流れてきてるじゃないの!」

「そんなこと言ってもしょうがないでしょ!」

ソルトは既にコト切れたイビルバイパーを無限倉庫に収納しつつ、それぞれの戦闘の様子を見ながら適当に魔法や、棒手裏剣でアシストしている。


「もう、そんな中途半端じゃなくて、ちゃんと助けなさいよ!」

「レイ、いつものことでしょ! 今は手を動かしなさいよ!」

レイがソルトのアシストを中途半端だと詰るが、エリスはいつものことだから気にせずに戦闘に集中しろと言う。


「まあ、ここはもう大丈夫そうだな。さてゴルドさんは?」

ソルトがゴルドを確認すると、雌雄二体の成体を相手取りなんとか持ち堪えている。


「ソルト! 見てないで、お前もやるんだよ!」

「分かりました。じゃ『拘束(バインド)』と。これでどうです?」

「ちっ嫌味だな」

ゴルドが、拘束された二体の首を刎ねながらソルトに不満を漏らすが、ソルトは涼しい顔で無限倉庫に成体の亡骸を収納する。

「まだ、これじゃ満足出来る唐揚げの量は作れないな」

「おいおい、幼体混じりとは言え三十体近くだぞ。これだけでどんだけ肉が取れると思ってんだ?」

「でもさ、遺跡に入ったらどうなるか分からないから、ある程度の食糧は確保しときたいじゃない」

「まあ、そりゃそうだがな」

「「ちょっと!」」

「手が空いたのなら!」

「手伝いなさいよ!」


エリス達がまだ幼体の相手をしていたのを見ると、しょうがねえなとゴルドが手伝いに行こうとするがソルトは動く気配がない。

「ソルト、お前も来るんだよ!」

「え~」

「え~言わない!」

「は~い」

「返事は伸ばさない!」


ゴルドが不満そうなソルトと一緒にエリス達の手助けに向かい、四人で次々に仕留めていく。

「はぁやっと終わった~」

「そうよね、もうソルトも手が空いたのなら、さっさと手伝いに来なさいよ!」


「あ~」

「なによ、ソルト大声なんか出して」

ソルトが急に大声を出すものだから、レイが耳を押さえながらソルトに大声の理由を尋ねる。


「卵が……」

「卵? ああ、そんなの気にしながら、戦えるわけないじゃない。そんなに気にすること?」

「お前、卵はどんな料理にも使えるんだぞ! 知らない訳じゃないだろ!」

「知らないわよ。私は料理なんて出来ないし」

「……」

「なによ?」

「決めた! レイは料理スキルが取得出来るまで当番な。って言うか、自分で用意すること!」

「なんでよ!」

「お前は素材を大切にしなさすぎる。さっきの幼体だって表面にいっぱい傷が付いてたぞ。仕留めるなら一発で仕留めるようにと言われているだろうが。こんなに傷が多かったら、買取価格が下がるんだからな」

「うわぁちっさい」

「分かった。今度から、レイの取り分は、お前が狩った分だけな。幸い傷の多さでエリスとレイのどっちが仕留めたか分かるからな。もう、等分はやめる。ゴルドさんもエリスもそれでいいよね?」

「まあ、かわいそうとは思うが、しょうがないか」

「そうね、レイはもう少し上手く出来るはずよね。それをキャーキャー言いながらやるもんだから手数ばかりが増えて、ダメなのよね」

「誰も味方がいない……」

「自業自得だな」

ソルトが忠告したのに不満で返したレイが、ソルトから辛辣な仕返しと言うか当たり前な制裁を受ける結果となったが、それを助ける者はここにはいなかった。


「ソルト、ここにも犠牲になった連中の装備品がある。すまんが収納してくれ」

「分かりました」

襲われた冒険者の装備品がコロニーの奥で一塊にされていた。犠牲になった人には悪いけど、これって排泄されてここにあるんだよな。『クリーン』を掛けたいけど、出来るだけ現状のままでと言われているし、気が進まないなと思いながら、ソルトは無限倉庫に収納していく。


「はぁ終わった。じゃ、もう一つコロニーを片付けたら、今日は上がりましょうか」

「また、コロニーか」

「今度はなに?」

「今度はオークかな。ちょっと数がすごいね」

「数がすごいって、どれくらいなの?」

「え~と、三桁後半?」

「「「はぁ?」」」

「無理だ! この人数で相手に出来る数じゃない!」

「そうよ、いくらなんでも無理よ!」

「なんで、そんなのを見つけるのよ!」

ソルト以外の三人が、口を揃えて無理だと反対する。


「分かりました」

「分かってくれたのなら、それでいい。じゃ戻ろうか」

「俺、一人で狩ってくるね。じゃ、ちょっと待ってて」

「おい!」

ゴルドが慌てて止めるが、ソルトは『身体強化』を使って走っていく。

「行かせたの?」

「なんで、止めないのよ!」

「お前達も見ただろ? 誰があれを止められるんだよ」

「それもそうか」

「まあ、チート持ちだから、大丈夫でしょ」

「俺もそのチートってのが少しは分かって来たよ」


ソルトがゴルドの制止を振り切って、オークのコロニーへと近くまで来ると、とりあえずは偵察と、コロニーの規模を確認し周辺には他の魔物がいないことを確認する。

「ルーどうかな?」

『そうですね、周辺には感知出来ません。今はコロニー内に全てが滞在していると思います』

「そう。なら、他に気を付けるところはある?」

『そうですね、オークメイジが五体、オークウォリアーが十体、それにオークキングとオーククイーンがそれぞれ一体ですね』

「それだと全部で……」

『七百六十三体ですね』

ソルトが視界に表示されている光点を数えようとしていたが、くっ付いた光点もあるし目視で数えるには、その数が多すぎた。

「ありがとう、ルー。で、どうかな?」

『どうとは?』

「俺一人で、大丈夫だと思う?」

『そうですね。まずは遠距離でオークメイジとオークウォリアーを先に仕留めることをお勧めします。あとは普通のオークなので気にすることはないでしょう。オークキングとオーククイーンは自ら動くことはないと思うので、最後で十分ですね』

「へ~すごい分析だね。ありがとう」

『いえ、ソルト様のお役に立つのなら、これくらいは……』

「ふふふ、相変わらずの謙虚さだね。ま、いいや。じゃ、早速討伐といくから、カウントよろしくね」

『はい、お任せください!』

「お願いね。じゃ、行くよ! まずは『目標固定(ロックオン)』」

ソルトのスキルで、オークメイジにオークウォリアーの眉間に赤い光点が灯る。

赤い光点に気付いたオークが騒ぎ出すが、その前にソルトが放った『氷矢』が赤い光点を貫いていく。

『あと、七百五十八体です』

「了解! 『目標固定』x残り全部のオーク! おう、出来るもんだね。なら、『氷矢』x目標のオーク!」

ソルトが『氷矢』を放つとオークキングとオーククイーンを除いた残りの役職なしのオークの眉間に吸い込まれていく。

『残り二体です』

「ねえ、試してみたいことがあるんだけど、いいかな?」

『はい。なんでしょう』

「『目標固定』されたオークをルーが無限倉庫に収納出来るか試して欲しいんだけど、どうかな?」

『分かりました。やってみますね』

「うん、お願い」

『では、『収納』』

ルーが唱えると転がっていたオークが一瞬で消える。

『どうですか? 私、上手くやれたでしょうか?』

「うん、成功したみたいだね。助かったよ」

『ふふふ、ありがとうございます』

「じゃ、残りを片付けようか」

『はい、気を付けてくださいね』


コロニーの中で一際大きな小屋に入ると、いろんな動物の骨と木材を組み合わせた椅子に座っている二体の巨大なオークが、ソルトをじっと見ている。

『人間が、どうしてここにいる?』

『あら、もしかして生き餌かしら。でも、一匹だけなの? せめて私達二人が楽しめるように二匹用意しなさいよ。全く』

『そうだな。追加で用意させよう。おい! 誰か! 誰かいないのか!』

『変ね。いつもならすぐに来るのにね』

「来ないぞ」

『『え?』』

「だから、残っているのはお前達だけだ。そこに座ったままでいいのか?」

『こいつ、俺達の言葉が分かるのか?』

『まさか、たまたまでしょ』

「悪いが、さっきからちゃんと聞こえてるぞ。だから、そのままでいいのか?」

『こいつ!』

オークキングがソルトの横を通り小屋の外へ出ると、地面に血の染みは残っているが、死体は一つも存在していない。

小屋に戻り、オークキングがソルトに確認する。

『おい、死体はどこだ? 埋めたのか?』

「まさか、そんな勿体無いことはしないよ。ちゃんと美味しくいただくからさ。安心して成仏しなよ」

『食うのか? ワシらを食うと言うのか?』

「なに驚いてるの? そっちも人を食べるんでしょ? なら、おあいこじゃない。で、そろそろいいかな? 人を待たせているんだ」

『ふん! お前にワシがどうにか出来ると思っているのか?』

「ああ、もう面倒くさい。もう、いいや。『拘束』」

ソルトがスキルを唱えるとオークキングとオーククイーンが拘束され、身動きが取れなくなる。


『くっなんだこれは! おい、卑怯だろ! すぐに解放しろ!』

『なんで私まで』

「もう、おしゃべりは終わり。はい、バイバイ」

ソルトが刀を構えたまま、垂直に飛び上がると、一閃しオークキングとオーククイーンの首を刎ねる。


「『収納』と。あと、ここの小屋も片付けないとね。『穴掘り』x10」

コロニーの中央に少し大きめの穴を開けるとコロニーに点在する小屋を解体し、風魔法でその廃材を集め穴の中へと放り込むと『火球』で一気に燃やし、上から土を被せる。


「じゃ戻ろうか」

『ソルトさん、転移を試しませんか?』

「『転移』って出来るの?」

『空間魔法スキルを習得しました』

「なるほどね。じゃ、試すね『転移』!」


一方、イビルバイパーのコロニー跡で休憩している三人の目の前にいきなりソルトが現れる。

「うん、上手く行ったね。ちゃんと体もある。ただいま」

「おかえり。って、違うでしょ! ソルト、どういうこと?」

「え~まずはお疲れ様でしょ。いきなり、詰問って違くない?」

レイがいきなり現れたソルトを問い詰めるが、逆にソルトから文句を返される。


「え~と、コロニー討伐の話を聞けばいいの?」

「いや、これは俺の物にするから、やめとく」

「え? 独り占めってことなの」

「そう」

「な「待て、レイ」ん……で?」

「ソルトが一人で行動して仕留めた物になにもしていない俺達が文句を言うのは筋違いだ」

「でも……」

「納得出来ないのなら、お前もそうすればいい話だ。でも、俺は許さないがな。まだ、お前には無理だ」

「……」

レイがソルトの成果に文句を言うが、ゴルドに咎められる。


「もういい? じゃ、帰ろうか。ちょっと寄って」

「寄る? 寄るって、ソルトにか?」

「そう。俺の体に捕まってもらうのが一番だけど、手で触れるだけでもいいから。ほら、早く!」

「そういうことなら、遠慮なく」

エリスがソルトの言葉に正面から抱き付く。


「ちょっと、エリス!」

「あら、しっかり抱き付く方がいいんでしょ。なら、これでいいじゃない」

「なら、私も」

そう言うとレイがソルトの背中から抱き付く。


「俺も抱き着いた方がいいのか?」

「ゴルドさん……」

「冗談だ」

ゴルドがソルトの腰に手を回す。


「じゃ、行きますね。『転移』」


一瞬でソルト達四人の景色が切り替わると、ゴルドの視線の先にはギルマスが座っていた。


「ん?」

「「「んんん?」」」

「お前ら! いつの間に!」

ギルマスの執務室に急に現れた『探検者』パーティにギルマスが怒鳴りつける。


「もう、ほら、エリスもレイも着いたんだから離れてよ」

「もう少しいいじゃない」

「エリス、早く離れなさいよ!」

「はいはい。じゃ、ソルト。また、あとでゆっくりね」

「エリスも揶揄わないの。じゃ、行こうか」

「待て! まずは説明が先だ!」

涼しい顔で当たり前のように部屋から出ようとするソルトをギルマスが大声で呼び止める。


「なんです? ニックさんのところに行きたいんですけど」

「いいから、先に説明しろ! これはどう言うことなんだ! ちゃんと分かるように説明してくれるんだろうな?」

「え~と、なにを?」

ギルマスの質問に対し、なにに対し説明しろと言ってるのかとソルトが聞き返す。


「なにって、決まってるだろう! お前達が急に部屋に出て来たことをだよ!」

「ああ、それ」

「それだよ!」

「転移だからです。じゃ」

「待て! 『転移だから』じゃねえ! なんで、お前がそんな魔法を使えるんだ」

「使えないんですか?」

「「「使えるか!」」」

「でも、使えるのは事実だし。ゴルドさん達も体験したでしょ?」

「ああ、そうだな。確かに魔の森のイビルバイパーのコロニーから一瞬だったな」

「待て! 今、なんて言った?」

「一瞬だったって話か?」

「その前だ! なんのコロニーって言った?」

「ああ、イビルバイパーだ。確か三十体近くいたな」

「なぜ、そんなところに行くんだ! 自殺行為じゃないか!」

「そうか?」

ギルマスがゴルドに自殺行為だと責めるが、今まで魔の森でやって来たことだからとゴルド達は躊躇することなくイビルバイパーのコロニーの中へと進んだが、確かに考えてみれば自殺行為かもと正気に戻り、一気に顔が青褪める。

「なんで、俺はそんなことをしたんだ?」

「分かったようだな。お前達はいつもこんなことをしているのか?」

「いつもというか、目的地の途中にあるからね。邪魔されないうちに潰した方がいいじゃない。ねえ?」

「そうか、なるほどな。ってならねえよ! なにやってんだよ。ゴルドもエリスもいながら」

「そうは言うが、もう俺達じゃ止めるのは無理だ」

「そうね」

「じゃ、ゴルドさん達はパーティから抜けるの?」


ソルトの言葉にギルマスが一瞬、ゴルド達のことを考え、そうした方がいいのかなと思うが、そうなるとソルトを放し飼いにすることになる。

「それはダメだ。ゴルド、エリス、すまんがもう少しだけ頑張ってみてくれ」

「ギルマス。いいよ、こいつを放し飼いにする方がよっぽど危険だもんな。エリスもそれでいいな?」

「私はいいわよ。これからもずっと一緒にいるつもりだし。ねえ、ソルト」

「エリス! ちょっと、離れなさいよ!」

「……」

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