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巻き込まれたんだけど、お呼びでない?  作者: ももがぶ
第六章 いざ、王都へ
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第11話 瞬殺、ダメ、絶対!

「ソルト、もういいよな?」

「えっと、もうちょっと待ってて。多分、そろそろお決まりのセリフを言うはずだから」

「お決まり? なんだそりゃ」

「まあまあ、待っていれば分かるから」


 横倒しにされている馬車をソルトとシルヴァで確認しに来たら、茂みの中からいかにもな方々がゾロゾロと出て来たのを見たシルヴァが我慢出来ないとばかりにソルトに確認してくるが、ソルトからは「待て」と言われる。


 シルヴァは何がお決まりなのか分からないが、ソルトに言われる様に黙って待っていると野盗の一人が「おい、命が惜しければ女と荷物は全部置いて行くんだな」と言われる。


「お約束キタァ~!」

「ん? じゃあ、もういいのか?」

「いいよ、やっちゃって!」

「おう! じゃあ、フン!」

「あ……」

「え?」


 ソルトからのOKが出たのでシルヴァは辛抱たまらんとばかりに茂みから出て来た野盗を瞬殺してしまう。


「『あ』ってなんだよソルト」

「あ~もう、なんで皆殺しなの。せめて一人くらいは生かしておかないとアジトの場所が分からないだろ」

「あ~そうか。じゃあ、やり直しで」

「もう、皆さん首と胴が離れちゃっているんだけど?」

「……お代わりって」

「そうだね。じゃあ、アジトまで行って……って。そのアジトが分からないんだよ!」

「……えっと、もしかしてだけど」

「うん、やりすぎだね」

「やっちゃったね」

「うん、引くほどに……」

「お前達まで……」


 茂みから出て来た野盗は十人近くだったが、一瞬の内にシルヴァが片付けてしまった。それは本当に見事なことだけど、これではアジトの場所が分からなくなるので困ったことになる。それをシルヴァに懇々と説教していると様子を見に来たブランカとノアからも何やってるの的なお言葉を頂くことになってしまい更に落ち込むシルヴァだった。


 ここまで落ち込まれると後々面倒なので「ルーえもんお願い!」とソルトはルーにアジトの探索をお願いする。


『私はあんなに青くも丸くもないですが、それらしい所は探索出来ましたので、地図に表示しますね』

「ありがとうね。じゃあ、ここは片付けて……行きますか」

「「「え?」」」


 横倒しになった馬車と首と胴体が泣き別れになった野盗だった物を無限倉庫に収納したソルトはゴルドに「ちょっと行って来るから」とだけ伝えるとゴルドは呆れながらもそれを了承する。


「俺達はこの先に用意されている野営地で休憩しているからな」

「うん、分かったよ。じゃあ、えっとブランカは留守番でいいかな?」

「しょうがないわね。シルヴァ、今度は失敗しないようにね」

「ああ、分かった」

「ノア、シルヴァが何か仕出かす前に止めるのよ」

「うん、分かった」

「……ブランカ、俺って信用ないの?」

「まさか、一応よ。一応、念の為にね」

「そ、そうか。そうだよな。念の為だよな」

「そうよ、ちゃんとソルトの言うことを聞くのよ」

「ああ、分かったよ」

「ソルトもお願いね」

「不安しかない……」

「大丈夫、私が見ているから」

「それはそれなんだよな」

「いいから、早く行かないと逃げちゃうだろ!」

「分かったよ。じゃあ、行って来るね」

「おう、気を付けろよ」

「うん、分かってるって」

「ふん、どうだか……」


 ソルトを見送ったゴルドは馬車を進めて行き、御者台に座ったブランカはソルト達に手を振っている。


「じゃあ、行くよ。なるべく静かにね。特にシルヴァ」

「分かってるって。まずは様子見だって言うんだろ。任せろ」

「……頼むねノア」

「ああ、いざとなれば斬り付けるだけだから」

「「……」」


 ノアの返事に背筋が寒くなるソルトとシルヴァだったが、無言で野盗のアジトらしき場所を目指し藪の中を進んで行く。


「あそこがそうみたいだね」

「どら? ふむ、確かにな。それっぽいのが見張りをしているようだし」

「中は分からないの」

「う~ん、もうちょっと近寄ってみようか」

「どうするんだ?」

「こういう風に……ね?」

「「……」」


 ソルトが見張りの二人をルーにお願いして昏倒させると、ソルトはその側に素早く近寄り両手足をしっかり縛り、猿轡をするのも忘れない。


 遅れてやって来たシルヴァとノアに消臭のブレスレットを渡すと装着して起動するように言う。


 最初は不思議に思っていたが、中の異臭を防ぐ為だとソルトから説明され納得し起動する。


「じゃあ。索敵をお願いね」

『はい、お任せ下さい。アジトの平面図を表示しますね。その赤い点が野盗の方々です。青い点は捕まった方々で、白い点は……』

「亡くなっているってこと?」

『はい。そうなります』

「ありがとう。ルーが気にすることじゃないよ。じゃあ、いつものようにやっちゃって!」

『はい、お任せを!』


 しばらくするとアジトである洞窟の外まで聞こえてきていた騒ぎ声がパタリと止む。


「うん、いいみたいだね。じゃあ、行こうか」

「なんだかな……」

「そうだね……」


 向かって来る野盗達を切り伏せてソルトにアピールするつもりが気付けば野盗が無力化されてしまっていることになんだか釈然としないシルヴァとノアだったが、ソルトの指示通りに倒れている野盗の両手足をロープで縛り動けなくしたところで、纏めてアジトの外へと連れ出す。


 野盗を全て放り出した後は、捕まっていた人達がいる簡易的な作りの牢の前に立つ。


「ヒッ……」


 牢の中にいた女性はソルト達に気付くと短い悲鳴を上げた。


「あ、怖がらせてすみません。俺達は冒険者でここにいた野盗達はすべて捕縛しましたので安心してください」

「え? ホントなんですか?」

「はい。じゃあ、今からこの牢を壊すので、少し離れてくださいね」

「あ、はい。お願いします」


 ソルトは牢の前に誰もいないことを確認すると、両手で牢を掴むと「フン!」と力を込めて外す。


「はい、順番にどうぞ」

「……は、はい。ありがとうございます。お父さん、大丈夫? 歩ける?」

「すまないねぇ」


 ソルトが対応した女性が父親らしき人を支えながら、奧から出て来る。

 ソルトが見る限り、どうもここに捕まっていた人達はどこかしら怪我を負わされていたようなので、無理に立ち上がろうとする女性の父親らしき男性に楽にするように言うと、奧の人達にもまずは気を楽にしてくれと言った後に『エリア・ハイヒール』を唱える。


「え、うそ」

「足が痛くない……」

「痣が消えた」


 奧に固まっていた人達からも歓喜の声が聞こえてくる。ソルトの回復魔法で歩けるまで回復したようだ。


 アジトの外までの案内をシルヴァとノアに任せるとご遺体をそっと無限倉庫に収納する。


「じゃあ、ルーお宝の場所を探して」

『はい、もう探していますよ』

「うん、サンキュ」


 ルーが探してくれた場所には少なくない金貨と煌びやかな装飾品が積まれていた。そして、紋章の羊皮紙も見つかった。


「やっぱり、誰かが……」

『ん~おかしいですね。これは……』

「ルー、ムリしてモノマネしなくてもいいんだよ」

『すみません。どうも探偵というものに憧れてしまったみたいで……』


 ルーが俺の記憶を共有出来るのは知っていたけど、何もあの警部補のモノマネをする必要はないと思うんだけどね。


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