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第三話 親子で幸せを掴むため2


時間が経つというのはあっという間で、記憶を完全に取り戻したあの日から二月が経ち、とうとう祝儀の日が来たのだった。

祝儀へ向かうための準備で使用人達は皆忙しそうにしている。

ただ、馬車へ積まれていくこの荷物の量は何なのだろうか?

私の部屋のものももちろん、母様のものと思われる家具や日用品なんかもすべて運び出されているのだ。


「これもぜんぶ、しゅくぎにひつようなの?」


「え? あ、ああ。そうね。そうなのよ」


隣で一緒に馬車の準備を待つ母様は歯切れが悪そうにそう言った。

たぶん違うのだろう。

積み荷の量から遊びに行くというよりは旅行や引っ越しに近い気がするし、旅行だとしても絵画とかまではもっていかないだろう。

それに荷物を積み込んでいる馬車に昨日渡されたブローチと同じ二羽の鳥が向かい合う紋章が描かれている。

なにより、母様の顔がどことなく前世で出戻ってきた妹の顔によく似ていた。

気持ち的にはすっきりしたものの、これからの将来に不安がある。

そんな顔だ。


私は母様の手を握る。


「?」


「ぼくが、まもるよ」


母様の気持ちを分かってあげることはできない。

でも、寄り添うことはできる。

私は母様の息子なのだから。


「アルベルト!!」


母様は私を強く、やさしく抱き寄せた。

なに、勇者を助けて世界を救うのだ。

自分の母親くらい守ってあげるさ。

だから。


「だいじょうぶだよ」


私達が荷を積むのを待っている間に大きな馬車が玄関前に止まった。

そして、しばらくすると伯爵と一人の男の子が屋敷から出てきて、それに乗りこんだのだった。

その間にあの男はこちらに話しかけるどころか、目線も向けることは無かった。

本当に人の神経を逆なでするのがうまい男のようだ。


「……。ライボル様に未練は、ない?」


母様は私があいつを見ていたのを父親への未練だと勘違いしたようだ。

未練? そんなものがあるわけがない。

それに。


「らいぼる? だれですか?」


本当はマーマンから親父の名前がライボルって名前なのは知っていた。

だが、ほとんど顔を突き合わせたことが無いのだ。

奴への対応などその程度でいいだろう。


「っぷ。そうね、そうだわ。あんな奴さっさと忘れましょ」


母様がやっと心から笑ってくれた。

それだけで、十分にうれしかった。

そして、母様があの男と離縁した事が確信になったのだった。


「さあ、荷物も積み終わったみたいだし、教会に行きましょうか」


「きょうかい?」


祝儀は教会で受けるのか?


「そう、教会は神様が祀られているとっても神聖な場所よ。そこで神官にあなたの能力を見てもらうの」


なるほど。

それ以外では見る方法がないのか。

テラス様はこの世界をゲームのような世界だと言っていた。

孫のゲームでは自分の能力値を簡単に確認できていたが、この世界ではそうもいかないようだ。

少し不便だな。


「きょうかいだけしか、みてもらえないの?」


「他にもギルドと呼ばれる冒険者の集会所や商会、スキルで鑑定を持っている人なんかに頼むと教えてもらえますよ」


「マーマン!」


引っ越しの指揮をしていたマーマンがこちらにやってきた。

その顔は非常に晴れやかだった。


「奥様、いえ、アリアマ様、アルベルト様、準備が整いました。どうぞ、馬車にお乗りください」


「ありがとう」


マーマンに手伝ってもらい馬車に乗り込む。

中は私が知る前世の大衆用馬車とは違い椅子はフカフカのソファーのようで、これだったらお尻が痛くなることは無いだろう。


「アリアマ様、旦那様が祝儀の前にお会いしたいと連絡が来ています」


「お父様が?」


母様の父親って事は、私にとっては祖父に当たる人か。

まあ、離婚した後に身を寄せる場所として両親のもとを選ぶのはどこの世界でも同じか。

そして、私は今まで祖父母に会ったことは無い。

つまりは母様も頻繁に会いに行って訳ではないだろう。

それなら、向こうが会いたがるのはおかしくない。


「おじいさま、ですか?」


「そうですよ。アルベルト様に会うのも楽しみにされておりましたよ」


マーマンの言葉から祖父は優しい人なのだろうか?


「そう、お父様が」


だが、私の予想とは裏腹に母様はどこか不安そうだ。

何か不安要素でもあるのだろうか?

だが、その理由を聞いていいものか、悩んでいるうちに馬車は動きだしたのだった。


ほとんど屋敷の外に出たことのないので、どこか心躍る私がいたのだった。

だが、それも仕方ないことだ。

どれもこれもが新鮮な光景だったのだ。

馬車から外を見れば色鮮やかな鳥たちが空を舞い、見たこともない小動物たちが大地を走り回る。


「あれはなんだろう?」


その動物は顔や毛並みは狐に近いのに、体の大きさは兎ほどしかない。

それに、額に宝石のような物がついているのだ。

その愛らしさに目を奪われてしまう。


「あれはカーバンクルですね。あまりにも希少でその生態は謎に包まれている動物です。ここのような野原や洞窟、そして街中でも目撃談は聞くのですが、捕獲はおろか大衆の前でも現れることはないので、一部では伝説の生き物なんて言われてます」


「そんな、生き物に会えるなんて、今日はついてるわね」


マーマンの説明に母様は嬉しそうにする。

まあ、これぐらいの幸運はあってもいいか。





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