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第二話 早すぎる反抗期2


学者風の男にお茶に誘われて、一緒に外を歩き、しばらく経つ。

だが、未だに目的の場所に着くどころか、どこが目的地なのかもわからない。

屋敷の敷地内とはいえあまり遠くへ行くのは母様とマーマンに怒られるだろう。


「あの」


「なんだい」


「目的地はどこですか?」


「特に決めてないよ」


お茶をするのにいい場所を探しながら、ということだろうか?

でも、あまり遅くなるのは。

それにここはどこだろう。


「ここどこですか?」


「どこだろうね」


「え!?」


まさか、ここがどこかも分からずにこの人は歩いていたのか!?

自分の家なのに、自分の部屋の事しか知らない私が言うことではないが。


「まあ、どこでもいいさ。さて、お茶にしよう」


彼が指を鳴らすと何もなかった場所にテーブルや椅子だけでなく、温かなお茶やお菓子が目の前に現れたのだ。

庭園でもなく、ただレンガで舗装された道の上でお茶というのも驚いた。

だが、それ以上に私は初めて見てた魔法に心を奪われていた。


「それじゃあ、何で泣いてたか教えてくれるかい?」


「それは、その」


そういえば、そうだった。

あまりに急な出来事が起こり過ぎて、泣いていた事を忘れていた。


今回の事を見ず知らずの人に話していい物だろうか?

それに、ちょっと恥ずかしい。

ほどんど、子供の癇癪だ。

あまり褒められた物ではない。

でも、私の心の中が靄がかかっているのもまた事実。

そして、周りの使用人は全員女性でなかなか本音で相談をすることも出来なかった。

彼に話してスッキリするのも一つの手段でもある。


「じつは、かあさまにたんれんしてたこと、おこられて」


「鍛錬?」


それから、私がいつも部屋に閉じ込められて外に出られないでいる事、友達が一人もいなく寂しいこと。

一度蓋を開けると次々に言葉が溢れ出してきていた。

言葉と共に涙まで溢れ出して、言うつもりのなかったことまで口にしていた。


「ぼくは、みんなをまもれるくらいつよくなりたくて」


「なるほど」


そうか。

聞いてもらって、話していて初めて気づいた。

私は前世の記憶はあるが、それと同時にアルベルト・バルフェルトでもあるんだな。

前世の家族を大事に思うように、今の家族も大事なのだ。

だから、勇者をサポートする必要がある。

つまりは魔王が現れることが確定された今の現状で、弱いままでいる自分が許せないのか。


「でも、君のお母さんは心配して言ってるんだよ」


分かっている。

母様のやさしく抱いてくれた温もりが嘘だとは思わない。

みんなやさしくしてくれる。

だからこそ、守りたい。

でも、それはみんなに心配や迷惑をかけることとは違う。


「まあ、部屋に閉じ込めるのは流石にやりすぎだと思うけどね」


「はい」


そこはやはりやり過ぎなんだな。

この世界では当たり前なのかと思っていたが、そうではなかったようだ。

しかし、喧嘩をしたままなのはやはり嫌だ。


「ぼく、あやまります」


それに、マーマンにも迷惑をかけたな。


「あやまって、ちゃんとせつめいして、マーマンをおこらないでっていいます」


彼はお茶を口にする。

そして、やさしく微笑みを向けてきた。


「そうか、さすが彼の孫だね」


「え? それって「アルベルト!!」


声の方を見ると、そこには息を切らした母様がいた。

いつもの化粧は崩れかけていて、ドレス端も汚れている。

それだけ、心配してくれたのだろう。


「ここにいたのね」


「かあさま」


私の前まで歩いてきた母様は手を大きく広げる。

平手の一つでも来るのかと構えていたが、母様は強く私を抱いてくれたのだ。

優しい温もりにまた私は感情が漏れ出してしまっていた。


「ごめんなさい」


更に母様は私の頭を撫でてくれた。

こんなに安心したのはいつぶりか。

すっかり、私が忘れていた感覚に溺れて行くのだった。


「さて、アリアマ様。君も謝るべきではないか? 流石に過保護が過ぎると僕は思うけどね」


いい感じに終わったからそれでもいいのに。

やさしそうな男性はその笑顔とは裏腹に、怖いほどの圧力が彼にあった。


「サーディ・カルマイン公爵様。これは我が家のことです。口出しはいりません」


しかし、母様は気にする様子もなく彼に言葉を返す。


「そうかい? 今はその子が随分と大人だから上手くいってるように見えてるだけだけど、このままいけば彼に見捨てられるよ」


「アルベルトはやさしい子だからそんな事は」


「そういえば、市井では君のような親をなんだっけな」


そう言いながら私をみると、いじめっ子のような薄気味悪い笑顔を一瞬見せる。


「そう、ドクオヤって言うらしいよ」


「ど、どくお」


カルマイン公爵の言葉に毅然としていた母様も言葉を失い、顔を真っ赤にさせていた。


「そうだ、アルベルトくん。よかったらうちの養子に来ないかい?」


「え?」


「ダメです!!」


私よりも先に母様が声を荒げて拒否する。

でも、カルマイン公爵は気にせずに私に視線を向ける。


「どうだい?」


「ぼ、ぼくは。その」


何で返せばいいのか分からない。

彼は公爵様らしい。

そうであれば、私は家的にも身分は下だろう。

断っていいのだろうか?


「嫌かい? なら、そうだ! マーシャのお婿さんに来なさい。うちは娘一人だからお婿さんを取らないといけないし、君のような子は大歓迎だ!!」


「なんで、そこまで」


よくよく考えてみればおかしな話である。

一介の子供でしかない私をなぜ、彼が欲するのか?

それに、話し方ややりとりを見るに、母様と顔見知りではあるようだが、一体どんな関係だったのだろうか?

そこが関係して


「それは君が将来有望からさ」


いなかったようだ。

私のどこを見てそう考えが至ったのか分からないが、自分自身ではそうは思わないし、母様から離れる気はない。


「ごめんなさい」


「そうかい。君だったら勇者にだって、なれるだろうに」


「ゆうしゃ?」


どう言う事だ?

私が勇者になれる?

そんなわけがない。

女神テラス様自身から聞いたのだから間違いは無い。


公爵の言葉に母様は私を後ろに庇い、前に出る。


「この子は戦いには出させません。平和にこの子の生きたいように人生を歩ませます!」


「そうはいかぬ」


低く重い声が急に周りの緊張感を高める。

そして、甲冑を着込んだ大男が現れたのだった。

顔はゴツゴツとして、眼光は鋭い。

その上、先ほどの公爵のとは比べ物にならないほどの威圧感と風格を身に纏っていた。


「婿入りも、平和になんてものもこの子には必要ない」


私の横に立った大男は一瞬私に視線を移したが、すぐに興味がないように視線を公爵や母様に向ける。


「我が息子であり、このバルフェルト家の人間として生まれたのだ。こいつは、戦場にて生き、戦場にて武勲を上げ、戦場にて死ぬのだ」


その言葉に私は戦慄が走ったのだった。



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