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第二話 早すぎる反抗期1


身体を鍛え始めて一週間が経った。

たるんでいた二の腕や少し出ていたお腹も引っ込んで、健康的な身体に近づきつつある。

やはり、子供の頃は多少の不摂生であっても取り戻せる。

後は不健康な白い肌くらいだろうか。

であれば、やはり外に出たい。

走り回りたい!

友達と遊びたい!!

だが、あれから母様は交渉はおろか、見にくることすらしない。


「さみしい」


「アルベルト様」


振り向くと心配そうな顔をしたマーマンが私を見つめていた。

彼女が近くに来たことすら気づかないくらい、感情に呑まれているようだ。


「大丈夫ですか?」


「うん」


両親がいなくてもマーマンや他の使用人がいてくれる。

彼らは勉強や遊びに付き合ってくれる

それに、沢山の本やおもちゃは用意してくれる。

まったく愛されていないわけでは無いのは分かるし、外に出れない以外はなに不自由ない生活には感謝もしている。

だが、やはり親や同世代の友達がいないのは寂しいのだ。


「かあさま、なにしてるの?」


「奥様は仕事で忙しいのです。でも、奥様も会いたがっておられます。繁忙期が過ぎれば会える機会も増えます。それまでは」


「わかってる。がまんします」


はあ。

前世の子供達や孫達は今頃何をしているだろうか?

最近は寂しいと前の家族を思い出してしまう。

無くなって初めてそのものの価値を理解するとは誰の言葉だったか。

前世とは違い健康は手に入れたが、その代償は少なく無かった。


「また、きたえますか」


もうお馴染みの金ピカ棒を握ると真っ直ぐに力強く振る。

最初は振られてる感があったが、今では身体の一部のように使える。

子供の成長とは驚かされることが多いな。


「アルベルト!!」


突然母様が現れた。

次いつ会えるかわからない。

今日こそ外に出る交渉を!

交渉を。

こうしょう。

……


「かあさま!!」


私は外に出たい気持ちも忘れて、思わず母様を抱き締めていた。

精神年齢は母様の数倍は上なのに、本物の子供のように泣きながら抱きついていたのだ。


「さみしかった」


「ごめんなさい。これからはもっと会ってあげられるから」


「うん」


抱き締められる暖かさに得もいわれぬ幸せが全身を走る。

先程まで感じていた寂しさも悲しさも私の中には無くなっていた。

そして、抱き締めていた手を解いた時だった。

母様が何かに気づいて目を大きくする。


「アルベルト、この手はどうしたの?」


「え?」


手を見ると、金ピカ棒を振り過ぎてできた豆が更に潰れた跡があった。

剣道を志せば誰もが通る道だ。

別に気にするようなものではない。


「いっぱい、たんれんしたの!」


「た、鍛錬!? あ、マーマン!!」


「はい! 奥様!!」


青ざめたマーマンが膝を床に付いて頭を下げる。


「アルベルトが怪我をした時に言いましたよね!? この子に危険がないようにと!!」


「申し訳ありません」


母様はマーマンを叱責しているが、何が悪いのだ?

彼女は私の世話だけでなく、勉強にだって付き合ってくれた。

寂しくないようになるべくずっといてくれたし、この手の傷だってマーマンが手当てをしてくれたから傷が塞がっている。


「マーマンをおこらないで!!」


「え?」


「マーマンはいつもやさしくしてくれて、いろいろおしえてくれて、がんばったらほめてくれて。それに、これはぼくがつよくなりたくて、がんばったのに「ダメ!!」


母様の声に思わず言葉を失う。

もちろん、母様に褒めてもらう為に鍛錬していたわけではない。

女神様との約束を守る為だ。

でも、それでも頑張っている事をなんで褒めてくれない!?


「なにがだめなの?」


「アルベルト、これには」


「そとにも、だしてくれないし」


「それは、まだ小さいから」


「もう、よんさいだよ! わからずやのかあさまなんて、だいっきらい!!」


私は母様やマーマンの横をすり抜けて、扉の外に走り出していた。

自分の家の中だと言うのに全く道がわからない。

だけど、感情の高まりが抑えられず。

ここにいたくないという欲求だけが、私の体をを動かしていた。

そして、小さな扉を開けると、とうとう屋敷を出ることができた。

待ちに待った外なのに気持ちは晴れず。


「うわ〜〜〜ん!!」


年甲斐もなく。

いや、年相応に泣き出してしまったのだった。


「大丈夫かい?」


声の方に視線を向けると優しそうな男性がそこにいたのだった。

モノクルをかけた彼は本を片手に持っていた。

少し細めの身体からも彼が学者よりの人間だということは明白だった。


「はい」


「そう、か」


私の返事に少し考えるように頭をかくと、私の手をとった。


「よかったら、お茶でもしないかい?」


本当は見ず知らずの大人について行くのは悪い事だと分かっている。

でも、今は一人でいたくなくて。

更に言えば、やさしい笑顔の彼をどうも疑うことができず。


「うん」


二つ返事で彼について行くのだった。



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