第十一話 婚約者の悩み2
魔術の先生が私の魔力量を測りたいとの事で授業の後に居残りを言い渡されていた。
マリアシスはちょうど馬車がとまるという事で外に身体を動かしに行っていた。
そして、私は先生と勉強室に二人っきりになっていた。
「怖がることは無いですよ。天井のシミを数えている間に終わります」
「先生、天井が綺麗すぎてシミがありません」
「それもそうですね」
次の瞬間人差し指の先に小さな痛みが走る。
ナイフで切られたのだ。
血が一滴紙の上に書かれた魔法陣の上に落ちると発光するのだった。
「血が必要ならそう言ってくださいよ」
注射が苦手な子供とは違うのだ。
血が必要ならそう言ってくれれば自分で指先を切る事だってできる。
「あら、結構強い魔力」
聞いてないし。
「レベル2で魔力増加系のスキルはないのよね」
「はい」
【能力向上(大)】を持って入るがこれは基礎能力を数割向上させるもので、魔力増加系のスキルのような基礎能力を一定値増加させるものと比べると微々たるものなのだ。
「それでこれなら十分強い魔力を持ってるわ」
そう言ってくれるのは嬉しいが比較対象がないため喜べない。
これが強く直視できないくらい発光していれば驚いたかもしれないが、蛍の光のような淡い光程度では強いと言われても実感がない。
「もう行ってもいいでしょうか?」
少し待つが魔法陣の淡い光はまだ消えない。
このままでは外で体を動かす時間が無くなってしまう。
「え? ああ。分かったわ。後は見ておくから」
先生がそう言うと同時に私は走り出していた。
広い馬車の中でももちろん身体は動かしていたが、外の空気に触れながら動かすのとはまた別物である。
解放感や新鮮な空気に触れながらの運動はすごく気持ちがいいのだ。
意気揚々と馬車から出るとマリアシスが護衛の騎士の一人と剣を交えていた。
しかも、剣だけでなく盾も装備しており二つとも鉄製の重厚感のある物だった。
マリアシスは私とそれ程年齢が離れてはいないはずなのに随分と体が作りこまれているようだ。
動きも綺麗で手加減はされているだろうが騎士との打ち合いに負けていない。
むしろ押しているところもある。
「身体強化系のスキルでも持っているのかな?」
「そうだよ」
私の独り言に応えてくれたのはカルマイン公爵様だった。
だがどこを見ても公爵の姿が見えない。
もしかして透明になる魔法かスキルが?
「ここだよ」
「え?」
馬車の下から公爵が出てきた!
どうする?
踏みつ、け
「待って待って、馬車の整備をしていたんだ」
驚きのあまり思わず攻撃をしてしまう所だった。
「公爵ともあろう人が、馬車の整備ですか?」
「そうだよ。この馬車の魔術は私が施したからね。空調の魔術が調子悪くて点検していたんだ」
「そうでしたか」
初めて会った日からどこか研究人のような風貌だと思っていたが、まさにその通りだったようだ。
馬車で一緒に食事をする時以外はいつも部屋にこもっている。
用事があり、何度か中を見たことがあるが書類とにらめっこしているか、何かを作っている事が多かった。
魔道具職人なのだろうか?
「ただ、少し魔術を組み替えないといけなくてね。今日は最寄りの町で一泊しようと思う」
久しぶりの町だ。
だが、この馬車の中が居心地が良すぎて。
いや、ベットのフカフカ感が良すぎて町の宿のベットでは寝れないかもしれない。
「そこで、アルベルト君にお願いがあるんだ」
「この馬車で寝泊まりしていいのであれば、何でも言ってください!」
「ごめんね。魔術をいじっている間は誰も乗せちゃダメなんだ。何かあるといけないしね」
おう、神よ!
「マーシャとデートに行ってきてね」
おう、神よ。
よろしくお願いします




