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第十一話 婚約者の悩み1


馬車に揺られてはや五日が立った。

魔法学校まであと四日はかかるらしい。

だが、これでも予定よりかなり早く着くことになるだろう。

それも、今乗っている馬車のおかげなのだ。

公爵の馬車は魔道具らしく前世の一軒家並みに大きさがあるのだがほとんど重量を感じない造りになっているのだ。

聞いた話になるが浮遊と移動の魔術が施されているとのことだ。

それだけあれば馬が無くても動けそうに思うが初速が遅いのと方向転換が難しく、速度を補うのとコントロールに馬が必要なのだとか。

なら、馬車の大きさを小さくすればとも思ったが、二つの魔術を組み込むにはこれくらい大きくしなくてはいけなかったのだとか。


さて、そろそろ現実に戻るか。


「では、道具に術式を組み込むと魔道具になるのですが、その数によって道具の大きさが必要になる理由は分かりますか?」


「えっと」


マリアシスは考え込んでしまう。

少しまえに教えてもらったのに、忘れてしまったようだ。


「その」


視線が私を捉える。

私は教師をしてくれている魔法師のお姉さんに視線を向ける。

すると、笑顔で「アルベルト君、どうぞ」と許可が出た。


「組み込む術式は同一平面状に組み込む必要があるからです」


「どうしてですか?」


「術式同士が相互で干渉しあって、得られるはずの動きが鈍くなったり、全く動かなくなったりするからです」


分かりやすく言うと、術式とは磁石で出来た歯車のようなものなのだ。

近くに他の術式があるとそれが引きあったり反発したりするので本来の動きが取れなくなってしまうのだ。

そこで、同一平面に置き歯車の歯がかみ合うように配置しなくてはいけないのだ。

だが、先ほど磁石と例えたように術式には強く反発しあう組み合わせがあるので、ただ同一平面に置けば問題ないという訳ではないのだ。


「よろしい。では、次に ―――」


私達が魔法学校へ向かう間講師が学校の授業の予習を行ってくれているのだ。

この講師も魔法学校の大学でのエリートで公爵家に使える魔術師の一人だそうだ。

因みに魔法師と魔術師を間違えると嫌な顔をされるらしい。


そもそも魔法はスキル発現によって使えるようになるが、魔術は術式に魔力を注ぐことで発動することができるのだ。

これだけ見ると魔術の方が利便性が高いように見えるが、魔道具のように元々組み込まれた魔術でないと一般人は使用できないほど難しい。

それも、脳内で的確に魔術を再現し魔力を注いで発動しなくてはいけないからだ。

実際にやってみると脳内再現は出来たが、それに並行して魔力を注ぐところで失敗してしまった。

私には【完全記憶】のスキルがあるので脳内再現は容易だったが、【平行思考】があるにも関わらず魔力を注ぐのは感覚がつかみきれず失敗してしまったのだ。

これを他の人はスキルの補助なしで行うのだ。

並みの努力ではまず無理だろう。


この事から、魔法師は神に選ばれたと選民思想が強く、魔術師は魔法師を怠け者と思っているらしくお互いを一緒くたにされるのが耐えられないのだそうだ。


「アルベルト君は本当に優秀ですね。ぜひ、魔法学校でもその才能を遺憾なく発揮してください」


「あ、ありがとうございます」


数日前の態度との違いに戸惑いを感じていた。

事の発端は私が彼女に「回復魔法が使えます」と話してしまった所からだ。

彼女は魔術師であるからスキル持ちをあまり快く思っていなかったらしく、私の発言の後に「魔術が使える程度に努力ができればいいのですが」と、言われたくらいだ。

だが、その後に「魔法使いですか?」と聞いてしまったのだ。

その後の授業で私への当たりが強い事。


だが、授業中マリアシスが魔術を実際に使用している横で私もふと使って見ようと思ったのだ。

最初は出来ず彼女は鼻で笑っていたが、試行錯誤を繰り返すこと数分、私の掌に火球が発生していたのだ。

それを見た彼女は驚くでもなく、憤るでもなく、ただ落ち込んでいた。

その日は授業にならず、次のマナーの授業が前倒しになったのだった。

そして、次の日から態度が変わり今のようになった。


「アルベルト君は魔術の才能が有ります。いえ、あるなんてものではありません。魔術の為に生まれてきたのです!」


私が先生である彼女から教わった魔術を成功するたびにそう言うのだった。

褒められるのは嬉しくないわけではないが、期待が重い。


「私の義理の息子が天才なら、カルマイン公爵家は安泰だ!」


公爵はそう言って笑う横で、先生は言う。


「天才ではありません」


「なに?」


「神童と呼ぶべきかと!」


そして、二人で笑うのだった。




休暇を頂きありがとうございました。

また、一、二日おきくらいに更新できればと思っています。

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