第十話 貴族の婚約とは5
「また、勝手に話を進めたんだね」
母様を呆れたように見ながら公爵はそう言った。
魔法学校行きを私に伝えずに決めていたことを言っているのだろう。
「君は「お願いだ」
公爵は色々言いたい事があったようだが母様の言葉ですべてを飲み込んだ。
そして、私の手を取る。
このまま連れて行きたいようだが。
「大人の事情で振り回されるのはもうお腹いっぱいだ!」
公爵は驚いて目を見開くが、母様は更にさみしそうな瞳で私を見る。
だが、ずっと思っていた。
大人たちは子供の意見を何一つ聞こうとしない。
私の知らないところで勝手に話が進んでいて、決まってからも直ぐに言わず、直前に私に明かす。
心の準備すらさせてくれない。
さすがに堪忍袋の緒が切れるというものだ!
「アルベルトくん」
公爵はやさしく声をかけてくるが、ここで言いたいことを言わないと。
「母様、さすがにひどすぎると思いませんか?」
「なにが?」
「勝手に色々決めたことです」
「魔法学校へ行きたいと最初言っていたのはアルベルトの方ですよ」
「そうですね。でも、さすがにいきなり過ぎませんか?」
「この方が後腐れが無いでしょう」
「私が駄々をこねると思いましたか?」
「……」
沈黙は肯定か。
だが、この状況下でこの提案を断るつもりはない。
「私はバカかもしれませんが、愚かではありません。なんとなく事情は察しています」
私がこの家で無理やりレベル上げで危険に晒される可能性がある。
だから、母様がなるべく目の届くように毎日特訓してくれていた事。
なのに、遠ざけておきたいパンディナと仲が良くなったりした。
母様はずっと不安だったんだ。
「母様、ごめんなさい」
この謝罪は母様の不安をよそにパンディナと仲良くなってしまった。
彼女と仲良くなる事はきっと。
「ぼくがパンディナと結婚する話でもありましたか?」
母様は何も言わない。
最初からおかしいと思ったのだ。
外から来た人間なのに食事の時は祖父と一緒の席に座らされ、その隣にはパンディナがいた。
それ以外もパンディナは私を頼る事が多かった。
レベル上げの時も、私じゃなくて他の大人に頼めばよかった。
母様に脅された後も懲りずに私のもとに来ていた。
裏でだれかに諭されていたとしか思えない。
「母様!」
私の声に母様は一瞬体を震わせる。
こんな怯えた母様を見るのは初めてだ。
きっと、私に嫌われる覚悟だったのだろう。
「行ってきます」
その言葉に母様は私をやさしく抱きしめる。
私は抱き返す。
「サーディ、息子を頼む」
そう母様が言いながら私をはなした。
「親友のお願いは断れないな」
公爵は私の肩に手を乗せる。
「ありがとう」
「初めて君から聞いたよ」
「頼み事はお前の方ばっかりだっただろ」
「違いない」
私は公爵たちと一緒に馬車に乗る。
動き出した馬車はゆっくりと母様から離れていく。
どんどん小さくなるその姿を見て、いつの間にか涙を流していた。
「成長して、戻ってきます」
強く心に刻もう。
これで一章が完結しました。
これからも頑張って書いていこうと思いますが、私が飽きて書かなくなったほかの話も更新していこうと思っています。
ですので、この小説の更新が間が空くようになります。
変わらずご愛読いただけると嬉しいです。
それではまた次回に。




