第十話 貴族の婚約とは4
貴族間の婚約や結婚は貴族にとっては義務のようなものだ。
まだ、この世界の政には明るいわけではないが、そのくらいは分かる。
母様も渋々ではあるが了承はしたようだ。
私が駄々をこねても状況は変わらないだろう。
「とりあえずは婚約の件は了承しました」
「とりあえず?」
「言い間違いました。婚約させてください」
「それでいい」
満足したように公爵は頷く。
この人めんどくさい。
それに本当に娘が好きならもっと慎重になるはずだろう。
少なくとも色恋を知らないような段階で婚約なんて私ならしない。
まあ、前世の娘は二十歳すぎた頃に子供ができて結婚したが。
あの時、感情に任せて義理の息子を一発殴ったせいか家族全体が私を悪者扱いして、妻の説得もあったせいで渋々認めた。
本当に、断腸の思いだった。
「でも、彼女に好きな人ができたら婚約破棄する。そのように約束していただけますか?」
「え? うむ」
「もちろん、公爵のお眼鏡にかなう事が前提になると思いますが」
結局は娘をさらっていった義理の息子はいい奴で、娘は男を見る目が合ったという事が証明された。
娘に振り回されてむしろ息子は大変だったに違いない。
そんな、二人を見ていたからこそ恋愛結婚の方を私は推奨したい。
特にこんな小さな女の子には。
「君がそれでいいのであれば」
「はい」
もし彼女に好きな人ができて婚約破棄になってもそれは喜ばしいことだ。
前世の妻のように、なってはかわいそうだしな。
「それじゃあ、こちらも準備があるし後は若い二人に任せようかな」
「えっと」
マリアシスと一緒に散歩でもして来いという事だろうが、準備とは何の事だろうか?
母様に視線を向けるが、何も言ってはくれない。
でもとりあえず。
「パンディナは図書室に戻っていてくれるかい?」
「うん」
ここで、パンディナも一緒に散歩に行くわけにはいかない。
この散歩がどういう意味を持っているかを理解はしているからな。
パンディナは何度か振り返りながらも、図書館へ戻っていった。
「では、カルマイン嬢。お手をよろしいでしょうか」
「はい」
彼女の手を取ると庭に向けて足を進めた。
私自身この屋敷に来てからまだ日が浅い。
もしかしたら他にも散歩にいいコースがあるのかもしれないが、知らないのでは仕方がない。
庭に着く。
訓練後の休憩に使っている場所だが、よく見ると綺麗な花が咲き誇っている。
いつも訓練で花を愛でるだけの余裕が無かった為に、いま改めて見るのも新鮮な感じがする。
さて、現実逃避はこれくらいにして。
「カルマイン嬢はどのようなご趣味を持っていますか?」
「えっと、魔法が好きです。魔法系のスキルを貰えまして、今はその精度を高めているところです」
「レベル上げとか?」
「それは、まだ。最初にもらったスキルを使いこなし、戦闘技術を学んでから、と聞いています」
「そうなのですね」
やっぱり、あのレベル上げは時期尚早だったのだな。
でも、初期スキルの中に戦闘に使えるものがあるのかよく分からなかった。
レベルが上がって剣術や回復魔法のスキルが手に入ったし、結果的には良かったのかな。
「アルベルト様は「様はいらないよ」
「そうですか?」
「家格的にはカルマイン嬢の方が高いしね」
「では、私もカルマイン嬢ではなく、マリアシスと呼んでいただけると」
「分かりました。マリアシスさん」
「はい。アルベルトさん」
更に他愛のない話をしながら庭を歩いて適当に時間をつぶした。
話して分かったが、パンディナと違い令嬢としてかなり多忙な日々を過ごしているらしい。
歌や楽器は得意だが、ダンスや絵、勉強は苦手だとか話すあたり苦手な習い事も辞めずに取り組んでいるのだろう。
それに、魔法の練習もしているとなると自由な時間は少ないように思える。
彼女が疲れてしまわなければいいが。
「準備ができたよ」
私が屋敷に戻ろうとすると入り口の前に公爵が立っていた。
屋敷の前に馬車が数台停まっているが、帰るのだろう。
「それでは、マリアシスさん。ご元気で」
「はい」
そう言うと、マリアシスさんは公爵の隣に移る。
そして、公爵にも別れの挨拶をしようとするが、その表情がおかしい。
怒っているとわけではなさそうだが。
困惑?
「君はこれから魔法学校に入学するんだよ」
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