第九話 グリフォンス家の晩餐4
祖父が手で空を払うと使用人は距離を開け、私達のテーブル分を囲うように結界のようなものが張られた。
「いつ、どこで、復活するかも定かではない」
そう言って、祖父は本を閉じる。
色々と説明してもらえると考えてもいいのだろうか?
でも、この祖父だ。言葉は慎重に、必要な情報だけを選んで聞いてみよう。
「この国の方針は決まっているのですか?」
これが一番重要だろう。
もし仮に国自体が私を魔王を倒すだけの殺人兵器に仕上げようとしているなら、これから過酷な人生が待っているはずだ。
時期を見て国外逃亡するしかないだろう。
「決めようがない」
不確定すぎる情報だからか。
でも、今までのグリフォンス家を見るに一部の貴族は水面下で戦力を集めているのだろう。
ゆっくりと着実に。
だが、中には有事の際に戦力を提供する名目で私腹や肥やす輩もいなくはない。
だから情報を一部に制限していると考えられる。
同じ伯爵位のバルフェルト家は多分知らないだろうしな。
そうでなければ、私を連れ戻しているはずだ。
さて、次の質問だな。
「魔王復活の情報はどこから?」
祖父の口ぶりから魔王復活は確実だろうが、情報源は知っておきたい。
もし、神と交信できるスキルとかであれば天照様に色々と伺いたいこともあるしな。
「多くの予言、予知スキルを持つ者たちだ」
一人二人でなく、多くのときたか。
それだけ多いと噂になっていてもおかしくはない。
しかし、そうなっていないという事は情報一つ一つはそれほど情報量は多くないのだろう。
全ての情報をつなぎ合わせていって一つの結論にたどり着いた、といった所か。
「最後に私の今後は決まっていますか?」
「ふむ」
すぐに返ってこないので、まだ決まっていないのだろう。
少し悩むが「好きにしろ」と一言吐いて、また器用に本を読みながら食事を始めてしまった。
これ以上の質問は難しいだろう。
祖父は食べるのが早い。
私がまだメインディッシュを食べているころにはデザートまでしっかり食べて席を立ったのだった。
しかし、今回はパンディナの好き嫌いに付き合わされずに済み、パンディナより先に食べ終わった。
祖父もいなくなったし、私は談笑する母様たちの所へ行こうとした時だった。
服の裾を掴まれる。
「どうしたの?」
裾を掴んだパンディナは顔を背けて何も言わない。
レベル上げの事があったのだから、極力関わりたくないのだがその手を振り解けない自分がいた。
子供は思いが言葉より先に行動に出てしまう事が多い。
これもそうなのだろう。
「待ってるからゆっくりでいいよ」
特にパンディナはコミニケションが苦手な様子がある。
偏屈そうな祖父とご飯を食べて、近しい年の子はこの館でバンダスだけ。
本人も本が好きなのだから人との会話が減るのは自然な事だろう。
「あ、あの。えっと。ごめんなさい」
たぶんレベル上げの時のことを言っているのだろう。
確かに危険な目にあったが、パンディナだけが悪いとは言えない。
パンディナが誘わなくても何かしらの理由を付けて似たようなことをしたはずだ。
それに最後の狼の魔物が集まってきたのも事故であった可能性が高い。
騎士が死ぬような事態は本来避けるはずだしな。
「いいよ。許してあげる」
私の言葉に顔を上げ笑顔を見せる。
今でもあまり関わりたくないが、謝罪くらいはしっかり受け取っておこう。
「じゃあ、はい」
そこに差し出されたのは手、ではなく。
赤い、トマトのような野菜だった




