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第九話 グリフォンス家の晩餐3

私はグリフォンスを名乗れない。

それが私や母、アマリリさんとの共通の認識だった。

貴族にはその家の品位を守るという暗黙の了解がある。

そして、出戻ってきた娘やその子供に家名を名乗らせることは家の品位を落とすことにつながると考えられている。

家名が欲しいのであれば、分家に養子に出す、成人後に爵位を与え別の家名を名乗らせる等の方法があるが、特別な理由がない限りそれすらも叶わないのが常識だ。

また、グリフォンス家は伯爵位でバルフェルト家と爵位が同じだが、建国から続く歴史のある家だ。

その歴史の分他家よりもずっと品位や誇り、格式に重きを置く。

この事から今の私はただのアルベルトだった。

だからこそレベル上げの時の騎士たちは私に軽い対応をしていたし、仕方ないことだと思っていた。


そして、当主である祖父は私に言ったのだ。

「これからグリフォンスを名乗りなさい」、と。


元々、母様との約束で学校を卒業するまでの援助をしてくれることになっていた。

卒業後は冒険者でもなろうと母様と話していたが。


面倒なことになった。


これでは勇者の捜索ができない。

今は幸いなことに魔王の出現の話はないし、今の私では魔王討伐のお荷物にしかならない。

そこで、学校に通いながら自身の能力を上げて、卒業後は冒険者を生業に実績を上げれば強い仲間を求めてやってきた勇者に巡り合える。

それが私の中の計画だった。

なのに。


「お、おじいさま。その提案は大変名誉ではありますが、グリフォンス家に泥を塗ることになります。お気持ちだけ頂こうと思うのですが」


「何を言っている?」


あれ? もしかして、私は何か勘違いをしていたか。

そうだよな、常識に考えて家に迎え入れるなんて。


「提案ではない。これは決定事項だ」


母様やアマリリさんの方に視線を向けるが、母様は喜んでるし、アマリリさんは驚きのあまり目を大きくして、開いた口が塞がらなくなっていた。

これは、断れないやつだ。


「謹んでお受けいたします」


私の言葉に祖父は満足そうに頷くと食事を始めるのだった。

皆も食事に始める。


ここで色々と考えをまとめよう。

この際、勇者捜索は横に置いておこう。

まずは祖父の真意だ。

私がグリフォンス家に入っての利点について考えよう。


勇者が持っていたと言われる三つのジョブを持つ、加護持ちの子供を近くに置くことができる。

だが、一般的に戦争が無いこのご時世では過剰な戦力を持つことはむしろリスクしかない。

しかも、教会と軋轢を生んででも私を回収した。

神父の対応もおかしかった。

教会のような慈善団体に戦力は必要ないはずだ。

また、あの男は勇者の使命を全うしなさいと、言っていたような。


嫌な予感が背筋を凍らせる。


それに、母様やアマリリさんは私のグリフォンス家入りは知らなかったようだが、セグレットとベゼンタからは驚きはおろか何の感情も見えない。

まるで最初から知っていたように。


そもそもレベル上げにしたって私が館に来た次の日に組まれ、連れていかれるのも今考えればおかしすぎる。

パンディナのレベル上げに対するやる気のない態度も今考えると違和感がある。

元々は彼女の為に組まれていたはずなのに、数匹倒しただけでめんどくさがって止めてしまった。

それを親であるベゼンタが諫めるのが普通なのに、何も言わなかった。

ここまでの一連がすべて組まれていたものだとしたら。


戦力が必要。

勇者の使命。

でも、切羽詰まっているようには見えない。

答えは。


「魔王の復活が近い」


思わず呟いてしまう。

離れた長テーブルまでには聞こえていないはずだ。

だが、隣の二人には聞こえてしまった。

パンディナは目を逸らす。


「アハハハハ!」


高らかに笑う祖父。

その異様ともとれる光景に冷や汗がとまらない。


「正解だ」







よろしくお願いします。

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