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第一話 若さは宝、転生して身に染みる1

私はアルベルト・バルフェルト、四歳である。

たぶん、貴族の子供だ。

なぜ、自分の事すら分かっていないかと言うと、私は今いるこの部屋以外の世界をほとんど知らないからなのだ。

生まれてからほとんどをこの部屋で過ごし、たまの外出すら使用人に抱かれて、移動するので、全く外の情報が入らないのだ。


それに、生まれてすぐに前世や女神様との約束を思い出したわけではない。

物心がつく二歳くらいからこの世界には無い、前世で好きだった麻雀や将棋を思い出したのをきっかけに、少しずつ色々な事を思い出し、先日四歳の誕生日を迎えた次の日、女神様を思い出したのだ。


だから、勇者がどういった人間なのかも知らない。

だが、私が生まれる前に既に勇者はいたようなのだ。


「ねえ、ゆしゃのえほんよんでくだしゃい」


「アルベルト様は本当に勇者が好きですね」


私が絵本を渡すと給仕のマーマンはいつものように笑顔でそれを受け取った。

マーマンは見た目五十歳ほどの女性で、今まで怒った顔を見たことがないとても優しい印象の人だ。


「今日は三ページまで、アルベルト様が読んでみましょうか」


「はい」


ついでに言えば、教育係もマーマンが受け持っていて、読み書きを習っている最中なのだ。


「むかし、せかいがまだへいわだったころ、みながてをとり、わらいあっていました」


しかし、ある日突然そんな穏やかな日が終わりを迎える。

世界が闇に包まれたのだ。

すぐに神テラスの力により世界は光を取り戻すが、そこには今までの世界は無く、魔物が蔓延る世界になっていたのだ。

人々は今までの生活を取り戻すべく、魔物達と戦いを続けた。

だが、人々の悲劇に追い討ちをかける出来事が起きる。


それが、魔王の誕生だった。

魔王の力により魔物達は更なる力を得て、人々のは苦戦を強いられることになる。

そして、誰もが戦うことを諦めそうになった時だった。

一人の青年が人々を励まして、先導し始めたのだ。

青年の力は魔物達や魔王の力を削ぎ、今まで負け続きだった戦を勝利にみちびいたのだ。

そして、勇者は魔王と相打ち、平和を取り戻したのだった。


「おしまい」


「アルベルト様、凄いです! まさか、十三ページ全て読まれるなんて!!」


まあ、人生二度目だし、これまで何度も読んでもらったのだ。

これぐらいは覚えられる。


「これなら、文字の勉強も始められますね!」


「うん! 教えて!!」


いずれは学ばないといけないことだ。

それに、早ければ早いだけ勇者の情報も手に入りやすい。

そうすれば、勇者をどのようにサポートすればいいか、すぐにでも分かるだろう。


出来ることは今のうちにやっておかないと!


絵本の勇者の話からもそれなりに推察できる事もある。

この手の絵本では勇者が大々的に大技を繰り出して、何々を倒したという、話が混ざっているのがお約束というものだ。

なのに、そういった話はない。

それに、魔王や魔物の力を削ぐといった話が出てきた。


もしかすると、勇者の力とは大きな力で敵を倒すようなもので無く、持続的に敵を弱らせるような力なのかもしれない。

だとすれば、その傍らでサポートするとなれば、勇者を守る、または勇者の力で弱っている敵を倒すといった手助けをするべきかもしれない。

だとすれば。


「マーマン、おそとであそびたい」


出来れば剣の稽古をしたい!


だが、マーマンは真顔で顔を激しく横に振る。


「だ、だめです! 先日、転んで膝を擦りむいたではありませんか!!」


男の子供なんてそんなもんだろう。

外で遊んで、友達とやんちゃして、擦り傷だらけで帰ってくる。

そうやって身体を鍛えて、大人になっていくものだ。


「でも、あそびたい!」


それに、前世では身体が弱くて小さい頃は部屋の布団から出れなかった。

外で他の子供達が楽しそうな声を聞くとすごく羨ましく感じたのだ。

今回はそこそこ元気な身体で産んでもらえたのだ。

それなら、昔の心残りを今ここで発散させたい!


「ですが、外で遊ぶのは危険です」


「おさんぽだけ。ね? おねがーい」


「それも、いけません」


「なんで? ほかのこたちは、あそんでるでしょ?」


「そうですが」


「すこし、すこしだけ。それでもだめ?」


「えっと、その。うーん」


普通の大人なら今の私の状態がどれだけ過保護なのか分かるはず。

マーマンの言葉も徐々に力が弱くなっている。

これなら、もうひと押しで。


「ダメです!」


声の方を向くと、扉の前で気の強そうな女性が仁王立ちしていた。

煌びやかなドレスや宝石を身につけて、がっつりメイクをしているこの人こそ、今回の私の母である。


「外は危ないことで溢れているのです! それに、この前だって可愛らしいあなたの膝に擦り傷が。ぜ、絶対にダメです!!」


「かーさま。でも、ぼくもおとこです。こもってばかりではよわくなってしまいます。それでは、まわりのわらいものです」


「バルフェルト家を笑うですって!? そんな者がいたら、即刻首を切ってやりますわ!!」


悪い人では無い。

ただ、過保護が過ぎるだけ。

だが、このままでは話は平行線だ。

絶対に外に出るのを許してはくれないだろう。

なら、ここは父に頼むしかない。


「おとうさまは!?」


「あの人ならまた仕事ですわ」


そう言って母様は遠くを見ていた。

もしかして、今回の両親は夫婦仲がそこまで良く無いのだろうか?


「とにかく、ダメなものはダメですからね!」


そう言って出て行く母様の後ろ姿を目に、肩を落としてため息を吐くくらいの反抗しか出来なかった。




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