第七話 渇望する強さと守る強さ1
パンディナに手を引かれて付いてきたが、そこは屋敷前の門だった。
そこには馬車と数人の騎士と男性が待っていた。
「どこに行ってたんだい? って、君は」
確かこの男性は先ほどの朝食で長テーブルにいた。
つまりは、グリフォンス家の人という事だ。
「はじめまして、アルベルトです。よろしくお願いします」
「え? あ、うん。よろしく。ベゼンタ・グリフォンスだ」
パンディナによく似た男だ。
もしかして、兄妹?
それにしても、彼からは驚きの表情が見える。
「……」
「……」
お互い次の言葉が出てこない。
パンディナに視線を向けるが何も言わずに馬車に乗ってしまったのだった。
これはどういうことなのだろうか。
「どうして、アルベルト君がここに?」
「パンディナさんに連れられてきたのですが、何も知らされてなくて」
やはり彼が私を呼んだわけではなかったか。
だが、私の言葉を聞くと一人何かを理解したかのように頷いて騎士たちに何か指示を出した。
「そういう事か。あの子が言う事なら仕方がない。馬車に乗りなさい」
何がしかたないのか分からないが、どうやら私は付いていかなくてはいけないようだ。
本当はこの後本を読みたかったし、母様には何も言ってないし、嫌な予感がするしで、着いていきたくなかった。
だが、今の私に拒否権など無く、男性に言われるがまま馬車に乗ったのだった。
「来月からパンディナは王立学校に入学することが決まっていてね。その前にレベル上げをしに行くんだ」
「は、はあ」
「そういうわけで近場の森で魔獣討伐に行くことになる」
行き先や理由は分かったが、出来れば馬車に乗る前に聞きたかった。
拒否権がない私は結局は同行することになっただろうが、せめて準備する時間くらいは欲しかった。
五歳の子供が丸腰だよ。
一緒に行く意味ある?
彼の隣に座るパンディナはよく見れば急所を守るような皮の鎧を着ている。
準備万端な彼女と見比べて私は。
これは私が魔獣をおびき出す餌にされるのかな。
「緊張することは無いよ。騎士たちがモンスターを瀕死状態にするから、それにパンディナがとどめを刺すだけの作業だ。現状君に何かさせるわけではないから安心して」
現状、ですか。
何か緊急事態があれば、囮にでもさせられそうな言葉ですね。
チクショウ。
「あの、なぜ僕が、呼ばれたのでしょうか?」
「ちゃんとした理由は分からないが、この子が言うなら仕方ない」
え、それだけ?
それだけの理由で私は危険な所に行かなくてはいけないのですか。
自分で歩いて帰るから今からでも帰れないだろうか。
「母様に外出の許可ももらっていないですし、同行する意味がないですよ」
はっきり言えばパンディナはとても社交的とは言えない。
それに、あの祖父と性格はだけ見れば瓜二つだ。
退屈しのぎに友達を誘うよりは本を持ってくるタイプの人間だろう。
今も私やベゼンタさんがいるのに一言もしゃべらずに本を読んでいる。
「いや、なのかい?」
「え?」
気のやさしそうな表情を浮かべるベゼンタさんだが、その目は笑っていない。
あまりに低い声に驚いた。
「いや、とかではなく。ただ、理由が分からないと納得ができないわけで」
「だから言っているだろ。パンディナが言ったからだ。それ以上の理由はない。それとも、説明が聞きたいのかい?」
強い圧力を感じるが、怒ってはいない気がする。
分からないことだらけだが、これは警告のようなものだろう。
「大丈夫です」
「賢い子でよかったよ。あのテーブルに座るだけある」
あのテーブルとは、朝食の時に座ったあの窓辺のテーブルの事だろうか?
でも、私自身座りたくて座ったわけではないし、ベゼンタさんの言葉からもあのテーブルに座ることには何か意味があるのだろう。
うん、明日からは母様の隣に座ろう。
「さあ、もうすぐ着くよ」
仕事で書けず、遅くなりました。
今日中にもう一話更新します。




