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第六話 母様の歴史と黒歴史2

「さすがに過保護過ぎよ」


アマリリさんの提案で庭園の一角でお茶をすることになった。

二人は仲が良いのか昔話をしていたのだが、途中から私の話になった。

そして、どういう教育をしてきたのかという話になって母様の言葉にアマリリさんの笑顔が崩れていき、完全に呆れた顔になったところで今の言葉が漏れるのだった。


「どこが?」


いやいや、カルマイン公爵にも言われてたじゃないですか。

過保護過ぎだって、自覚を持ってください。


と、言ってやりたいが、愛ゆえだと分かっているのでお茶と一緒に飲み干した。


「どこがって、一歩間違えれば監禁よ! それに、貴族社会で生きていくには小さい頃からのコネも必要なのよ。昔なじみを作っておけば、そこで縁故雇用してもらえる可能性もあるし」


やはりそういった面があるのか。

前世での社会も中々に腐敗していたが、中世の貴族社会に似た縦社会が形成されているこの世界ではもっとひどいはずだ。

上の者が一定の権威を持つためにグループを作り、仲間で周りを固めたいのは権力者の性質でもあるしな。


「それと、あなたが言っていた王立学校の入学だってもう無理よ。あそこは学内で派閥があってそのどれかに属さないといけないのだけど、その派閥は入学前からできてるの。子供の頃から親の派閥によって遊ぶ友達を決められ、そのメンバーで派閥を作るの。この子のように派閥に知り合いはおろか、友達もいないのでは入るだけ酷よ」


「そ、そうなの?」


「あなたは魔法学校に入って、その年に退学して、冒険者になったのだから分からないでしょうね」


「あの」


「なに?」


「母様ってかなりやんちゃだったのですか?」


婦人同士の会話なのでなるべく入らないようにしていたが、やはり気になる。

冒険者の件もそうだが、魔法学校を退学。

しかもその年に。

どんな波乱万丈な人生を送ってきていたんだ。


「気になる?」


「すごく」


「お願い、やめて。息子に聞かせたくない黒歴史が多いの。特に退学辺りの所には」


「男の子殴っちゃった話とか?」


「やめて! 絶対!」


母様は顔を真っ赤にしながらアマリリさんの言葉を全力で止める。

そこまで言ったなら全部話してほしいのだが、アマリリは手を上げたのでもうここで話すことは無いだろう。

でも、気になる!

後でこっそりアマリリさんに教えてもらおう。


「アルベルト、後で私が話していい内容を吟味してまとめるから。それまで待ってなさい」


「はい」


釘を刺されてしまったので諦めよう。


「そういえば、パンディナちゃんと仲良かったわね」


アマリリさんはそんな事を言うが。

はて、パンディナってだれ?


「あなた、名前も知らないで仲良くしてたの?」


え、口にしてた?


「口にしなくても分かるわよ。そんなコロコロ表情が変わっていればね」


「すみません」


「そんな所もかわいいから、気にしなくて大丈夫よ」


母様は親バカだなあ。


「アリアマは親バカね」


「世の母親はみんなそんなだと思うわ。それに、姉さんは私に性格まで似てるのだから、子供ができれば絶対に親バカになるわよ」


「結婚の予定も相手もいないし、子供はまだずっと先の話よ」


この世界の結婚適齢期とかまだ分かっていないが、グリフォンス家は結婚などの部分は自由なのだろうか?

そう考えるともう一つ疑問が生まれる。


「なんで母様はバルフェルト伯爵と結婚を?」


「バルフェルト伯爵って、自分の父親を」


「あんなのは父親ではなので」


そう言うとアマリリさんは腹を抱えて笑う。

ついには涙まで流して。

そんなに面白い事だっただろうか?


「全く、アリアマの教育は完ぺきとしか言えないわね」


「でしょ」


ひとしきりアマリリさんが笑った後に「政略結婚だった」と話した。

事の発端が、十年ほど前に軍部の役人を魔導部の人が間違って殺してしまった事故があったのだ。

完全に事件性のない事故であったが、元々軍部と魔導部は険悪な仲であったがために変に勘繰る人も少なくなかった。

そこで、この国の王より軍部、魔導部のそこそこ名のある家でまだ結婚していない二人を結婚させようという話になったのだ。


「そこで白羽の矢が立ったのが私とバルフェルト伯爵だったの。でも、当時好きな人がいて」


あれ?


「母様は?」


「えっと、勘当されて、冒険者やってたの」


「今回、良く家に戻ってこれましたね」


「まあ、勘当したのがお爺様。あなたで言う曾祖父に当たる人だから。お父様は魔法以外に全く興味がないけど、親としての最低限の愛は持っていると思う。たぶん」


そこは自信を持って行って欲しいが。

まだ、二日しか面識がない私があの祖父を見るにありえるなって思ってしまうあたり、仕方のないことなのかもしれない。


「まあ、それは置いておいて。私と姉様は冒険者やっている間も手紙のやり取りをしていたのだけど。助けてほしいって、それで婚約式に潜伏して入れ替わり、私が婚約したって事なの」


「婚約した後でお爺様は慌てていたけど、今更なしとは言えなくって」


王様の指示があったあたり、婚約式も国を挙げて盛大にやったのだろう。

それを、手違いです、すみません。

なんて、口が裂けても言えないな。


「でも、お爺様は関係各所から色々言われたみたいで、ストレスで寝込みがちになって、仕方なくお父様が当主になったのもその頃だったわね。お爺様はその三年後に病に倒れて亡くなったわ」


「なるほど」


色々と分かったが、一番疑問だった伯爵と母様の仲が良く無いのは政略結婚だったからなのか。

元々好きだった人がいたのに結婚出来ず愛人に、と考えるとあの人も不幸だったのかもしれないな。

許すつもりもないけど。


「お父様本人はさっさと代替わりしたいみたいだけど、魔導部の方からまだ辞めないでって言われてるらしいのよ。お父様ってすごい魔法使いなの。やろうと思えば都市一つを一瞬で焼け野原にしちゃうくらい」


都市一つ焼け野原って、核兵器並みじゃないか。

怒りをかわないようにしよう。


「あら」


アマリリさんの視線が私からわずかにそれる。

後ろに何かあるのだろか。


「来て」


後ろにいたパンディナが私の手を握る。

それを微笑ましく二人。

なんとなくいたたまれなくなった私はパンディナに手を引かれるままついていくのだった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の午後以降になります。

引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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