第六話 母様の歴史と黒歴史1
急いで食べたものの食べ終わったのは一番最後だった。
それも、あの女の子の偏食が過ぎて最終的に彼女の半分近くも食べてしまったからだ。
残せばよかったものの、前世の日本人なら誰でも持つ勿体ない精神がそれを許さなかったのだ。
その結果、お腹いっぱいになっても食べ続ける手は時間に連れ遅くなり、最後に食堂を離れることになったのだった。
「そういえば、あの子の名前聞かなかったな」
祖父もあの子も苦しんでいる私のことなど気にせずに自身の食事が終わると帰ってしまったのだった。
もう二度と食べてやるものか。
「なんなのそれは!」
廊下を歩いて自室に戻る途中で大声が聞こえてきた。
あまり関わりたくないし、胃が重いので早く自室に戻って横に「すみません」
母様の声だ。
声の方へ歩を進めるとそこには母様と、母様の顔に何かをかけている女性が。
「な、なにをしているのですか!」
私は母様とその女性の間に入って止めさせる。
その時、母様にかけていた液体が落ちる。
「あ、ああ! た、高い物なのに!」
うん?
高い物?
母様の顔を見るといつもの厚化粧がとれていた。
初めて母様の素顔を見たが、母様。
「かわいい」
実の息子が言うのもなんだが、素顔は化粧などしなくてもいいくらいに整った顔をしていたのだ。
「そうなのよ! この子変な厚化粧覚えちゃって、誰から習ったのよ!」
「フレンテール夫人に」
「あんた、それ騙されてるわよ」
そう言ってその女性はため息をついた。
その顔は素顔の母様によく似ているを通り越して、瓜二つだった。
「もしかして、母様の」
「そう。双子の姉のアマリリよ」
「あ、おば「お姉さん、ね」
「はい」
この世界でも女性は年齢と呼び方は気にするものなのか。
気を付けないとな。
「お姉様は何を?」
「変な厚化粧してたから、クレンジングオイルで落としてたの。もう、これ結構高いのよ」
「すみません」
「まあ、いいわ」
そう言ったアマリリさんは小さく笑顔を見せる。
そして、私の頭をやさしく撫でてくれたのだった。
「お母さんがいじめられてると思ってたのよね。やさしい子ね」
「はい。自慢の息子です」
私は母様たちのやり取りがくすぐったくて視線を下に向ける。
すると、アマリリさんから小さな笑い声が聞こえてきたのだった。
「私の部屋に来なさい。アリアマは一から化粧を教えてあげるから」
「はい、姉さん」
姉妹水入らずで話をするなら私はいらないな。
自分の部屋に「坊やも来なさい」
「はい」
帰ろうとしたが、アマリリさんに捕まってしまったのだった。
アマリリさんの部屋は私の部屋よりもずっと大きく、装飾一つひとつが煌びやかに輝いていた。
でも、ごった返しているわけではない。
こだわりのある部屋だった。
「ほら、ここに座りなさい。坊やも適当に椅子に座って」
私は適当に椅子に座る。
母様たちの方を向くが既に化粧を始めていた。
ただ、二人とも何もしゃべらず黙々と進めていく。
そして、髪を結い始めた頃だった。
「ごめんね」
沈黙をくじしたのはアマリリさんだった。
その言葉に母さんは何もしゃべらずにいた。
「私が嫁ぐはずだったのに」
「もう終わった事でしょ」
「でも」
また、静寂が訪れた。
……
…………
あれこれって私が聞いていい話なのだろうか。
耳でもふさいでいた方がいいような気がする。
「姉さんには、好きな人がいたじゃない」
「あんな馬鹿、死んじゃ意味ないのに」
「本当に、神様って意地悪よね」
ああ、聞こえない。
いや、聞こえているけど。
そうだ忘れればいい。
って、スキルのせいで忘れられないやないか~い。
その前に、こんな重い話忘れられるはずがないやないか~い。
「はい、終わり」
「ありがとう、姉さん」
「今度はちゃんと自分で化粧できるようにするのよ。もう、冒険者じゃないんだから」
「でも、離婚したし、冒険者に戻ろうかしら」
「バカ、あなたはお母さんでしょ」
二人は私を見る。
そして、顔を合わせると笑いあうのだった。
たぶん二人して私がいるのを忘れていたな。
息子にこんな話をするなんて普通素面でもできないし。
「結婚して悪い事ばかりではなかったわ」
「そうね、いい息子ができたみたいだしね」
母様が手招きをするので、私は母様の近くに行く。
化粧した母様はかわいくもあり。
「綺麗です」
「ありがとう」
強く抱きしめてくれた。
「あのクズに似なくてよかったわね」
「ほんと、この子がこんなにかわいくていい子じゃなかったら、愛人ばっかにうつつを抜かすあのクソ男のあそこを踏みつぶしてあの家から逃げてやったわ」
母様の前では紳士でいよう。
強くそう思うのだった。
遅くなってすみません




