第五話 味がしない朝食(ストレスで)2
食事とは食べるだけでなく、視覚や嗅覚すべてで楽しむものである。
そう意味ではグリフォンス家の朝ご飯は今まで食べていたものの数段も上の食事と言える。
彩りを考えられた一皿はそれ自体が一つの芸術のようにも見える。
香りは一たび嗅げば空腹を刺激して、最高のコンディションに導いてくれる。
口に入れればきっと最高のひと時を私に見せてくれる、はずだった。
カチャッ カカチャ
静かすぎる食堂では食器がぶつかる音だけが響いていた。
この原因である、祖父は我関せずと本を読みながら食事をしていた。
この世界でも何かをしながらの食事は礼儀に反するのだが、それ以上にこの人は自身の興味を満たすことが大事なようだ。
ただ、先ほどのバンダスの件で食堂内が緊張で包まれていたのだ。
近くに座る私から祖父の顔を見る限り怒っているようには見えないが、向こうの長テーブルからは見えないし、これ以上刺激しないように鳴りを潜めているのだろう。
コロ
何かの音に自身の皿を見るとトマトのような野菜が増えていた。
その隣に座る女の子に視線を向けると祖父と同様本を読みながら黙々と食事をとっていた。
食事が始まる少し後に来て私の隣に座ると本を広げながらも食事を始めたのだった。
好き嫌いが多いな。
私の皿に食べ物が増えたのはこれが最初ではない。
ニンジンのような野菜、肉の脂身、魚の皮等色々あるようだ。
そんな彼女は手を上げると一人の執事が新しい本を差し出したのだった。
「あ」
「何かあったか?」
思わず私の口から出た言葉に祖父が本から視線を逸らさずに問いかけてくる。
「すみません。彼女が読もうとされている本が先ほど読んでいた本の続きでしたので、気になってしまい思わず声が出ました」
祖父は自身の本を閉じると彼女が持っていた本の題名を見る。
題名は「魔法の歴史Ⅲ」だ。
内容は最初は魔法使いだけが使える魔法が発展するにつれて一般化し、誰もが使えるようになるまでの歴史が書かれた書物なのだ。
「魔法が一般化した理由は?」
祖父が質問してくる。
「えっと、魔物との戦闘が過激化したことや、ダンジョンの発生が時代背景にありますが、一番は平民用の学校の設立したことが理由であると。明確に記述されてませんでしたが、魔法の利便性が誰もが魔法を勉強しようとするモチベーションになった事も原因だと考えられます」
「ふむ」
祖父の眉間にしわが増える。
なにか、間違えただろうか?
「他に欲しい本はあるか?」
「えっと」
そうだな。
私が寝かされていたあの部屋にある本はどれも面白かったが、その中でもというと。
「イゼアン海岸旅行記、それとアルバドル山登山記とか欲しいです」
「なぜだ?」
「シフテン森林記を書いた著者が他にも書いた本です。この人の本は探検もそうですが、探検中に食べた食事に関して事細かにレポートされています。その地でしか取れない食べ物や料理の話を読むと私もそこに言った気がして楽しいです」
私が自分の意志で旅が出いるようになるのはまだずっと先の話だろう。
それならば本の中だけでも自由を楽しみたい。
素直に自分の意志を伝えたはずなのに祖父の視線が鋭くなる。
「魔法の歴史はどうやって読んだのだ?」
「どう、とは?」
「お前部屋に置いた本はお前が読んだことのない物だけを用意させた。アリアマは絵本ばかり与えていたと言っていたからそれ以外の本。後は私の趣味嗜好から選んだ本ばかりだ」
祖父の言いたいことは分かった。
今まで絵本ばかり読んでいた子供がいきなり難しい本を読んだのだ。
しかも、一冊だけでなく数冊も読んだといったのだ。
疑いたくなるのも分る。
だが、出来てしまったのは間違いないし、それは私自身も疑問に思っていた。
「スキル」
隣で本を読みながらデザートのフルーツを口にする女の子が呟く。
スキルって、なんだ?
「そういえば、そうだったな。自身の深層心理に問いかけてみなさい。誰かに教えられなくとも分かるはずだ」
急に言われても。
しかし、深層心理ってなんだ?
瞑想でもすれば分かるか、な。
目を閉じて大きく息を吸いこみ、ゆっくりと吐き出す。
私のスキルは何ですか?
英雄:【能力向上(大)】
賢者:【完全記憶】
仙人:【仙術】
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