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第五話 味がしない朝食(ストレスで)1

「よろしいでしょうか?」


起きてからしばらく経ち、日が完全に昇る頃にドアの向こう側から声がした。

因みに少し前に部屋の外に出ようとしたが、外から鍵がかかっていたのだ。

もようしてきてトイレを探そうと開けたので一瞬焦ったが、よく見ると部屋の隅に小さな扉があり、そこがトイレ兼バスルームになっていた。

私は「かまわない」と適当に返事をする。

紳士として対応するならこちらから戸を開け挨拶するのが常識ではあるが、それ以上に私の関心を引くものがこの部屋にあったのだ。


「失礼します」


そう言って入ってきたのは若いメイドだった。

その顔は少し驚きの色が見えた。

その視線の先は私で。


そうか、少し汚し過ぎたか。


私の前にあるテーブルの上はおろか、周りの床にも多くの書物を積み上げてしまったのだ。

つい昨日までは絵本を読むにも時間がかかってしまっていたが、今はずっと難しい書物も物の数分で読めてしまったのだ。


「すまない。ここに置いてあった書物が面白くて、読んだものを積んでいったらこうなってしまった」


書物の種類は多様で、物語や旅行記、魔法書の類まで。

しかも、内容がどれも深いのだ。

ついつい、はまってしまうのも仕方のないことだった。


さて、それよりも。


「何の用かな?」


「は、はい。朝食の準備ができましたので」


「そうか」


昨日は夕食を食べ損ねたからお腹がすいていた所だ。

だが、この朝食は今までのように母様と二人だけのほのぼのとしたものではないだろう。


「お爺様も一緒にですか?」


「はい、グリフォンス家の皆様が集まります」


グリフォンスというのは母様の旧姓だ。

つまり、ここは祖父の邸宅なのだろう。


「グリフォンス家の皆が集まるのかい?」


「はい。グリフォンス家の皆様は邸宅にいる限り朝食は必ず食堂に集まって召し上がっています」


あの祖父がみんな一緒に朝食をとりましょう、なんて言うようには見えないな。

であれば、この家の風習みたいなものなのだろう。


「分かった、支度をしよう」


まだ、私は寝間着のままだった。

自分で着替えてもよかったのだが、まだどこに何があるか分からないし、前世とは違いこの世界での流行というのはよく分からない。

因みに今までも私の着るものは母様やマーマンたち使用人が決めてくれていた。

前世でも妻や娘に頼っていた私ではどちらにせよとも思うが。


着替えた後、私はそのまま部屋を出て朝食の場所に向かう。

私が着せられた物は普通のシャツやズボンなのだが、その上に魔法使いのような長いローブを羽織っている。

このローブはどこかで見たような。


「それでは向かいましょう」


メイドに言われるがまま部屋を出る。

出た先で思わず目を見開く。

そこは広く大きな廊下であった。

前に住んでいた館の廊下も広かったが、ここの廊下は大人が十人並んで歩いても余裕があるほど幅があり、天井は梯子などを使っても届かないのではないかと思うほど高かった。

また、部屋は壁紙や絨毯で飾られていたため気づかなかったが、壁や床は大理石で出来ているようだ。

これだけで、グリフォンス家がどれだけの財力を持つかを理解できた。


「どうされましたか」


あまりの驚きに足が止まってしまっていたのをメイドが気にしたようだ。

「なんでもない、大丈夫だ」と言うと、メイドは歩みを戻した。

廊下には様々な芸術品などが飾られていた。

思わずどこかの美術館にでも来たのかもしれないと思わせるほどだった。


「こちらにございます」


芸術に見とれている間に大きな扉の前にたどり着いていた。

扉の前に立っている使用人が扉を開けるとそこは大人数を呼んでパーティができるほど大きな部屋だった。

そこには何人掛けなんだよと思わず突っ込んでしまいそうになるほどの大きな長テーブルがあった。

すでに何人かが座っている。

その中で母様はテーブルの端っこに座っていた。

私はその隣に座ろうと向かう。


「お待ちください」


「はい」


メイドの言葉に足を止める。

視線を向けるとメイドは「こちらです」と窓際になぜか置かれた丸テーブルに案内された。


なんだ、私は一人で食べろという事なのだろうか。

イジメだろうか?


よく見ると長テーブルに座る人がこちらを見てひそひそと話している。

そんなに私の今の状況が滑稽だろうか。

全く、人の神経を逆撫でするような者はどこにでもいるのだな。


「おい!」


憤りを感じながらも余所者である自覚はあるので、窓から見える景色に視線を向けながら惚けていると小さな男の子がいた。

私と同い年だろうか?


「どうされましたか?」


無礼な振舞ではあるが、子供に一々腹を立てても意味はない。

それに、子供は知らない人間がいると特に警戒してしまう生き物だ。

まずは話を聞いてあげながら、無害であることをアピールしよう。


「そのイスはお爺様のいいって言われないとすわっちゃダメなんだぞ」


「そう、なのですか?」


許可も何もメイドにここに座れっと言われたから座ったのだが。

でも、私もあまりこの席には座りたくなかったので丁度いい。


「教えていただきありがとうございます。それでは、皆さまと同じそちらに座らせて「ダメだ!」


では、どこに座れというのだろうか。

もしかして床に?


「お前はグリフォンス家じゃない。出て行け!」


おう、なるほど。

どうするべきか迷う所だな。

まわりを見ると母様以外のグリフォンス家の皆様は面白がってはいて、止める気は無し。

使用人たちはどうするべきかと話し合っているが、雰囲気的に止めることはできないだろう。

あまり角は立てたくないので、部屋で朝食をとってもいいのだが。


「何をしているのだ、バンダス」


「え?」


その後ろには祖父が立っていたのだった。


「お、おはようございます、おじい「何をしているのかと、聞いているのだが」


祖父の睨みに男の子 バンダスが思わず言葉を詰まらせる。

このままでは話が進まないな。


「この席がお爺様の許可がないと座ってはいけないと知らなかったので、教えていただいたところです」


「そうか」


「私は母様の隣に座らせていただきます」


幸い母様の隣は空いている。

そこに座るとしよう「なぜだ?」


「え? なぜって、お爺様の許可が」


「使用人に予めこの席に座らせるように指示を出したのは私だ」


その言葉に全員がざわめき始める。

だが、逆に祖父は興味が無くなったのか席に座る。

私も色々と思う所があるが、とりあえずバンダスから視線を逸らすのだった。


ご飯食べたいしな。







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