閑話 昼間寝ると夜眠れない
私は起きるとベットの上で寝ていた。
ここはどこだろうか?
大きな部屋は以前の私の部屋よりも広い、それに家具やカーテン一つとっても素人の私の目でも高級感を感じるものが置かれている。
ベッドから降りるとカーテンを少し開け外を確認する。
「本当にどこだ?」
辺りは暗く全様は分からない。
だが、私がいたはずの町並みはもう無く、広大な庭が広がっていた。
窓から続くバルコニーに出るとここが洋風の宮廷のような屋敷の一室だとういうことが分かった。
今の私の現状は誰かに聞かないと分からないな。
だが、この状況は好都合だ。
今日は色々あり過ぎた。
一回頭の中をまとめたかったところだ。
まずは母と離れ離れになりたくなくて祖父を頼ってしまったが最良の選択だったか分からなくなっていた。
あの時の神父の行動を深く考えてみるとしよう。
他に三職に適性値が高い男の子がいたのにもかかわらずその子には普通に接していた。
それに身なりからも私が貴族の子供だという事は分かっていたはずだ。
私の価値が貴族を敵に回し、人生を棒に振るほどの物だったのだろうか?
いや、欲に目がくらむような人間であれば地方の一教会の神父なんて地位で満足するとは思えない。
本当に私を救おうとしていた?
前世の常識を思い出せ。
もし、子供が常人よりも逸脱した能力、特に戦闘に特化した能力を持っていた場合、私はその子に戦い方を教えて戦線へ送り出すか?
答えは否である。
常識ある聖職者であれば、匿うのではないだろうか。
他にも祖父の入ってきたタイミングもおかしい。
あまりにも良すぎるのだ。
だとすれば、あの場で祖父の監視があったという事だ。
どういう理由があるかまでは分からないが、祖父の前以外もあまり気を抜かない方がいいだろう。
次に私の天職についてだが、たぶん天照様からの贈り物なのだろう。
だが、過剰過ぎではないだろうか?
勇者のサポートもそうだが、メインはシステムの確認だ。
過剰な能力は必要ない。
だとすると、英雄、賢者、仙人の内どれかは天照様の意図せぬ職業を組み込まれているのではないのだろうか?
もしくは何か状況が変わり、これだけの能力が必要になった、とか。
「もう一度、あの像に会う必要があるな」
でも、あの教会にもう一度行くことはできるだろうか。
いや、急ぐ必要はないだろう。
勇者が誰なのか分からないが、魔王の復活の話はまだ表に出てきていない。
もしかしたら、もう復活しているのかもしれないが、それを知るすべはないし、とりあえずは今まで通り力を付けるしかない。
いざ勇者が誰なのか分かった時にお荷物では目も当てられないからだ。
「とりあえずは、知力を蓄えなければ」
私はこの件だけでも自分の無知を痛感した。
魔王を倒したのは勇者単体でなくパーティだったこと、勇者パーティ全員を勇者と呼んでいること、たぶん本物の勇者の職業の情報が失われてしまっていること。
それに天職というシステムについても、適性値なる項目があることを知らなかった。
おそらく母様の仕業だろう。
与えていた本のほとんどは童話や子供向けの物だった。
私がまだ字を読むのがそこまで上手くないのもあるが、口頭などで予め教えてくれていてもおかしくない。
その証拠に私以外の子供二人は戸惑いのようなものを感じなかった。
つまりは、予め祝儀がどういうものかを知っていたという事だ。
なぜ誰も教えてくれなかったのか。
答えは簡単だ。
上の者が命令したからだ。
貴族の家で多くの使用人がいる中、誰も口にしないというのは徹底した箝口令がしかれていたのだ。
そして、あの家で私に無関心だった父以外でそれだけの力を持つのはとなると、答えは簡単だ。
「やることが多いな」
思わず私はため息をついた。
カーテンの間からうっすらと光が入ってくる。
もう日が昇るのだ。




