第四話 祝儀と女神と勇者と2
『もう疲れた! やっと、解放! バイバイ、地上のみなさ~ん』
この像は何を言っているのだろうか?
とりあえず。
「お願いします」
『ん? あ、帰る準備ね。大丈夫、私フットワークは軽い女なの。ものは少ないから、もうすぐ戻してくれてOKよ』
これはあれかな。
何か勘違いしているのかな。
「すみません。何を仰っているのか分かりませんが、祝儀の続きを」
私の言葉に首を傾げて満面の笑みが崩れていく。
美しい像が徐々に泣き崩れていく姿はかなり不気味だ。
『え、勘違い? ちょっと待って。封印解いて、神界に戻してくれるんじゃないの?』
「いえ、そんな事できるわけないですし。なんでそんな勘違いされたかも分からないのですが」
『そう、です、か』
あからさまに肩を落とす姿を見て申し訳なく思う。
そして、なんとなく思い出した。
魔王というシステムを勝手に世界へ取り入れてしまった女神が封印されているのだった。
もしかしてこの美女が?
『それで御用は何ですか?』
「御用も何も、天職を」
『え? あ、ああ。そういえばあの子の。なるほど、ね』
一人納得したように頷き、大きくため息をつくのだった。
そう言えば、この美しい像がこんなに感情豊かに動いているのに何で周りは反応しな、いん、だ。
「止まってる?」
まわりを見渡すと神父や子供たち全員が石造のように固まっているのだった。
『時間を止めてるの。力のほとんどを封印されているから、持って後数十秒だけど』
「なるほど」
封印された神様で間違いないな。
時間を止めるなんて事は神様以外ではできるはずがない。
『それより聞きたいんだけど、あなたはこの世界の調査に来たって理解でいいのかしら?』
落ち着きを取り戻し毅然とした態度をとるが、先ほどの姿を見てしまった事もあり、あまり威厳があるようには見えなかった。
それと、封印されているせいか、もしくは意図的なのか分からないが他の神と連絡はとれていないようだ。
「はい、天照様に頼まれて」
『もしかして、前の世界は日本って名前だった?』
「はい」
『あの子も難義な好みしてるわよね』
もしかして、天照様が私を何度も助けてくれていたのを知っているのだろうか。
しかも助けた理由がイザナギ様に似ていたからというのも。
口ぶりからそうなのだろうが。
そうだ、それよりもずっと気になっていることがあったんだ。
「こちらも、質問いいでしょうか?」
『どうぞ』
「勇者は誰でしょうか?」
ずっと気になっていたんだ。
一緒に魔王を倒すのだ。
早めに会ってコミュニケーションをとった方がお互いの理解が深まるし、友情が芽生えるかもしれない。
前世でも友達はいたが、幼いころからの友達は外で遊べなかったこともあり一人もいなかった。
いやあ、この世界で幼馴染っちゃおうかな!
『は? いるわけないじゃない』
え? なんです、と。
『勇者は魔王が現れた時に生まれるの。魔王がいない世界じゃ勇者はいないわよ』
魔王もいない?
ちょっと待って。
少し待って。
本当に待って。
勇者も、魔王も、いない?
「勇者のシステムを確認して欲しいと頼まれてきたの、です、が」
私の言葉に像は表情を固める。
像なのでそれが正しいのだが。
『え!? テラスちゃんがそう言ったの? ウソ! もう、魔王復活するって事!?」
逆に復活しないの?
しないなら、私が転生した意味がないんですが!
『ああ、もう。時間が動き出しちゃう!』
女神の像さんは慌てたり、感情が高ぶると素が出てしまうんだな、うん。
『最後に確認だけど、あなたの天職みんなに公開して大丈夫?』
何かまずいのだろうか?
でも、教えてもらわないと、困るし。
「え、あ、はい」
『後悔しないようにね』
え? そんなにまずいのですか。
そう聞こうと思ったが、既に世界は動き始めていた。
そして、私の頭上に他二人のように文字が浮かび上がる。
天職 英雄 賢者 仙人
適性値 100
『太陽の加護』
私も三職あるし、適性値も高い。
やった。
「加護持ちだ」と誰かが呟く。
それを皮切りに周りがざわめきだした。
男の子のお嫁さん、妻、お母さんの三職ではもっといい雰囲気だったのに、私の三職は加護があるというだけで少し不穏な空気だ。
ふと、先ほどの像が言っていた言葉を思い出す。
何か悪い事でも起きるのだろうか。
神父が部屋の外の人と何かを話している。
「す、すぐに国に連絡を!」
く、国に、連絡?
神父の言葉に背中や掌に嫌な汗が流れる。
「勇者が現れました!」




