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「で、話を最初に戻しても大丈夫ですか?」
僕は、月宮さんがお茶を飲み、一呼吸ついたのを見計らって声をかける。
「はい。大丈夫です。でも、どこから話したらいいのかちょっと…」
月宮さんは、先ほどよりは落ち着いたようだったが、今の状況に混乱しているのは変わらないようだ。まぁそれは、いまだに自分の恰好にも気が付いている様子が見えない所から察しはついていたが。
「じゃあ、ここに来るまでのことを一から順に説明してもらっていいですか?」
僕は、できるだけ優しくという気持ちを込めて言う。
「わかったわ。じゃあ…」
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期末試験も終わり、もうすぐ夏休みに入ろうという頃。私は、季節外れの風邪を引いてしまった。
それは、風邪というには熱の上りが異常で、長く続いた。引き始めから39℃近くをずっと取り続け、今日で一週間になるというところだった。いつも風邪引いたときは、もう少し落ち着いた経過を辿っていたのに、今回は熱の上がり方からおかしかった。両親も心配して、医者に診てもらっても、ただの風邪ということしかわからなかった。解熱剤を飲んでも、全く熱が下がらず、お手上げ状態で一週間も経ってしまったのだ。
しかし、急に熱が収まったのは今日の夜の頃だった。何を施しても、全く熱が下がらなかったのが、寝て起きたときには苦しかったのがウソのように消えていた。最初は、現実感がなく、夢の中にでもいるのかと思ったくらいだったが、ベッドから身体を起こしてぼーっとしてみても覚める様子がなかった。嬉しさからずっと寝ていたせいか、怠い身体を必死に動かし、両親に会いにいった。風邪を引いている時、ずっと私のことを心配してくれたから、すぐに治ったのだと言いたくなったからだ。
自分の部屋から廊下へ出る。今の時間は時計を見なかったからわからなかったが、暗いのと使用人の姿が見えなかったので相応に遅い時間などだとわかった。が、両親なら、まだ起きているのではないかと思い、まず母親の寝室へと向かう。
部屋に着き、ドアをノックする。すると、案の定返事があった。まだ起きているみたいで良かった。
「冬陽です。入っていいですか?」
すると、部屋から歩く音が聞こえ、ドアが急に開く。
「冬陽!熱は治まったの?!」
驚いた様子の母親の姿にほっとした。
「はい。さっき起きたときに熱が治まっていて、報告すべきかと思って。こんな時間にすみません。」
「よかった。よかったわ。全然治る気配もなかったから本当に心配していたのよ」
少し、泣きそうになっている母親が嬉しそうに言う。私もそれにつられて少し泣きそうになる。風邪を引いていた期間が苦しかったのもある。しかし、それ以上に私の状態が良くなって、嬉しそうにしている母親をみて、再度安心したからだ。
そして、母親が両手を広げるので、それに答えるために前に踏み出す。
嬉しそうにする母親。
抱きあう。
その肌が触れた瞬間。
目の前が
血で溢れた。
「えっ?」