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1章  3話 戦闘訓練

「ここは仮想空間になっているからね。死ぬことはないから安心して良いよ」

「もっと大前提の部分に配慮しないといけないことが多すぎるけどな」

「そうかなぁ?」

 助広はとぼけたように笑う。

「……もうそろそろ髪染め直さないと地毛見えてるぞオッサン」

「多分もっと気にするべきことがあると思うよ?」

「やっぱ自覚してるじゃねぇか」

 そう言いつつも、天は訓練室に一人で立っていた。

 部屋の外で、助広が機械の操作をしているのがガラス越しに見える。

「それじゃあ、まずは武器を出してくれるかな?」

「武器? 持ってないぞそんなの。なんだ? 笑顔でも見せればいいのか?」

「美少女の笑顔は世界を救うからね」

 常に武器を持ち歩くなど言い訳の余地なく危険人物ではないか。

 そして、天宮天は危険人物ではない。

「とはいえ、今回はそういう武器じゃないよ」

 ――まあ、後々はその武器も欲しいけどね。

「?」

 助広が言った言葉は小声だったせいで聞き取れなかった。


「――ALICEは本能的に己の力を理解する」


 助広はそう言った。

「覚醒直後でも、武器を呼び出すくらいならできるさ」

「できるさ――って」

 よく分からないが、できないことには話が進まない。

 天は右手を伸ばす。

「武器、か」

 そして目を閉じる。

 本能とやらに刻まれているのなら、余計な思考はいらない。

 ただ頭に浮かぶ感覚に従い、腕を薙いだ。

「!」

 同時に、右手に重量感が生まれる。

 その正体は――

「剣……?」

 彼女の右手には赤黒い大剣が握られていた。

 その全長は天の身長を越えている。

 自分の体重よりも重そうな大剣を彼女は片腕で振るった。

(ALICEってのは、身体能力も普通じゃないのか……?)

 そう考えるしかないだろう。

 数十キロ――場合によっては100キロに及ぶ可能性さえある大剣。

 にもかかわらず、確かに重さは感じるが振れないほどではない。

 それは、生前とは比べ物にならない力を持っていることの証拠だ。

「出たぞ?」

「うん。オッケーだ」

 助広がキーボードに何かを打ちこんでいる。

 すると、部屋の中心にホログラムが現れた。

「それじゃあ、今度こそ実戦だ」

 ただの立体映像だったはずのそれは徐々に現実感を帯び――

「……マジか」

 ――化物になった。

 体長約3メートル。

 腕が大きく――知る限りで一番近い生物を挙げるのであればゴリラだろうか。

 もっとも、ゴリラにこんな外骨格はないだろうが。

 天の前に顕現したのは、白一色の化物。

 おそらく――

「これが下級の《ファージ》だ。今から、これと戦ってほしい」

 化物の頭上に数字が浮かぶ。

 5から始まったそれは少しずつ減ってゆく。

(カウントダウンってわけか)

 天は腰を落とし、大剣を構える。

 初めての戦い。

 緊張のせいか、一筋だけ汗が頬を伝った。

「じゃあ最初はノーヒントで戦ってもらうよ」


 カウントが――0になる。



「おお……すごいね」

 助広は感心したようにそう言った。

 そこから見えたのは、戦場を跳び回る天宮天。

「身体能力が高い近接戦闘型のALICEね」

 蓮華はそう判断を下す。

 大剣を軽々と振るう腕力といい、接近戦を得意とするタイプなのは明らかだった。

「あれくらいのスピードで動けるなら即戦力だね」

「基礎スペックが高ければ良いってわけじゃないでしょ」

 最初期のステータスだけでALICEの資質は測れない。

 戦う上で必要となる才能は多岐に渡るからだ。

 それこそ心技体。その内の『体』が一定水準をクリアしていただけのこと。

「言っておくけど、使えない奴なら戦いに連れて行かないから」

 そう蓮華は言い捨てた。

 それでも部屋を出ることはなく、椅子に座って戦場を俯瞰する。

「連れて行かない……ね」

 ニヤニヤと助広は笑う。


「可愛い後輩が怪我したら、可哀想だもんね?」

「――――――アンタはちょっと黙りなさい」


 こういう野暮な事を言う男。

 瑠璃宮蓮華は、隣にいる胡散臭い男が嫌いだった。


 蓮華は属性的に『ストーリー進行によってツン期→デレ期と分かれるタイプのツンデレ』です。

 彼女がデレるのはまだ先の話……。


 現在判明しているALICEのメンバー

・天宮天

・瑠璃宮蓮華

・???

・???

・???


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