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2章 10話 夢の底を目指して

「ダンジョンでも探検してるみてぇだな」

 階段を下りながら美裂はそう口にした。

 ある意味では彼女の言う通りかもしれない。

 先程まで天たちがいた場所には大量のドラゴンが生息していた。

 それらを退けながら進んだ先に存在していたのがこの階段だったのだ。

 魔物といい、唐突に現れる階段といいゲームのダンジョンを彷彿とさせる。

「だとしたら、ここはボス部屋ってか?」

 天は目の前の光景を見てそう言った。

 階段の先にあったのは大部屋だった。

 円形の大部屋の中心にはピンク雲の島があり、周囲は湖となっている。

 部屋に鎮座した桜色の孤島。

 そこには一人の少女が立っていた。

「……アンジェリカ」

 天は少女の名を呼ぶ。

 すると彼女――天条アンジェリカは振り返った。

 金髪ロールが揺れる。

 そして彼女は少しだけ安堵したように微笑む。

「やっぱり……いたのか」

「天さん――」


「アンジェリカの偽物がいやがった……!」


「……………………?」

 アンジェリカ(?)が首を傾げる。

 それはあまりに白々しい演技だった。

「夢の中だからいるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりいたか」

 天は大剣を構える。

 するとアンジェリカは慌てだし――

「お、お待ちになって!? わたくしは本物ですわ!」

 猛抗議するアンジェリカ。

 しかし美裂はそれを嗤う。

「本物だァ? なぁ天。偽物ってのは、いつもこうワンパターンなんだろうな?」

「典型的な偽物のセリフだな」

「本物も言うと思いますわよ!?」

 往生際の悪いアンジェリカを前にして、天と美裂は肩をすくめる。

「……えっと。もしかして、まだ疑われていますの……?」

「信じてる信じてる」「超信じてるから動くなよ。斬りにくい」

「絶対信じていませんわよね!?」

 アンジェリカはほとんど涙目だった。

 そんな彼女に天は笑いかける。

「冗談だって。分かってるよ」

「天さん……」

「さすがに、偽物との区別くらいつくに決まってるだろ」

「ですわよね……!?」

 感極まった様子で走ってくるアンジェリカ。

 そう。天は最初から彼女が本物であることくらい分かっていた。

 もっとも――

「ふんぬっ!」


 ――攻撃しないとは言っていない。


 天は素早い動きでアンジェリカの懐に潜り込む。

 そのまま彼女の襟首を掴み、背負い投げの要領で投げ飛ばした。

「どうしてですのぉぉ!?」

 空中に投げ出されたアンジェリカは放物線を描き――湖に落ちた。

「本ッ当にどうなっていますの!?」

 しばらくすると水の中からアンジェリカが飛びだした。

 彼女は水を滴らせながら絶叫する。

「濡れてもドリルが崩れない……本物だな」

「天さん! わたくしが本物かを判別する方法が雑すぎではありませんこと!?」

 そう叫ぶと、アンジェリカはため息をついた。

「まったく……暴力的ですわ」

「ほら」

 天はアンジェリカの手首を掴み、彼女の水から引き上げた。

「勘違いするなよな。これでも怒ってるんだからな」

「?」

 天の意図が分からず、アンジェリカは微妙な表情を浮かべている。

「こんな無茶しやがって……心配したんだぞ」

 天はそう口を尖らせた。

 アンジェリカにもしものことがあったら。

 自分が代わりになるべきだったのではないか。

 再び彼女を見るまで、そんな想いが渦巻いていた。

 その意趣返しだ。

「そう、でしたわね」

 アンジェリカは苦笑する。

 しかしそれはすぐに普段通りの笑顔に戻り――

「心配をおかけしましたわ」

 そして――

「わたくしは無事ですわ」

 そうアンジェリカは言った。

「なら……良し」

 天は少し照れながら微笑んだ。

 無事なアンジェリカの姿を見ることができた嬉しさを隠しきれないままに。

「かー。これだからツインテールは。デレの安売りしやがって。チョロインかよ」

「チョロインじゃねぇし!」

 美裂からのヤジに天は猛抗議した。

 チョロインなどという不名誉な称号を許容するわけにはいかないのだ。


「彩芽。アタシたち、何を見せられているのかしら……?」

「あはは…………何、でしょうかね……?」


次回からは2章ラストバトルに入っていく予定です。


それでは次回は「レディメア」です。

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