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1章  2話 ALICE

「――――――――ぉぉ」

 建物を出た天宮天は感嘆の声を漏らした。

 全体的に白い建物。

 建築様式は――古代ローマを彷彿とさせる。

 柱に挟まれた廊下を天は歩く。

 彼女の前には、男と少女がいた。

 彼らに先導されながらも天は周囲に視線を巡らせる。

 心地よい日差しに照らされた芝生。

 あそこで昼寝でもしたらさぞ心地良いことだろう。

(気になる点といえば――)

 天の視線が遠くへと向かう。

 そこにあったのは白い壁。

 5メートル近い壁は敷地の内外を隔てる結界のようだ。

 考えすぎかもしれないが、あの拒絶感はどこか刑務所を思わせる。

「で、そういえばそっちの名前聞いてないんだけど」

 天は二人に問いかける。

 二人は天の名前を知っているが、彼女は二人について何も知らない。

 それはあまりに不公平だろう。

「おや。そういえば名乗っていなかったね。社会人失格だ」

 男性は頭を掻くと、首だけで振り返る。

「僕の名前は神楽坂(かぐらざか)助広(すけひろ)。よろしくね、天ちゃん」

「アタシの名前は瑠璃宮(るりみや)蓮華(れんげ)よ」

 一方、青髪の少女――瑠璃宮蓮華は腰まで伸びたポニーテールを揺らしながら歩いてゆく。

 振り向くどころか、立ち止まりさえしない。

「彼女も悪い子じゃないんだ。気を悪くしないでくれるかい?」

 そう助広はフォローを入れる。

 別に天も、これくらいで怒るつもりはない。

「分かったよ。よろしくな神楽坂のオッサン。蓮華」

「いやぁ。助広で良いよ」

「――瑠璃宮さんでしょ?」

 天の言葉に対する二人の反応は正反対だった。

「じゃあ間を取って――助広のオッサンと瑠璃宮な」

 そう天は呼ぶことにした。

 オッサン呼びが続行したことに助広は苦笑し、呼び捨てが不満なのか蓮華が背中越しにため息をついた。

「そういえば、ALICEって何なんだ?」

 天は助広に問いかけた。

 少なくとも、蓮華に聞くよりはまともな返答が返ってくるだろうと予想して。

(俺が目覚めた時、確かにALICEと言っていた)

 状況から考えて、何らかの固有名詞だ。

 そして天の知識から推測するに、一般的な言葉ではない。

 文脈から察するに天宮天を示す単語だったようだが――


「ALICEは……いうなれば、人知れず世界を救う救世主ってところかな?」


「救世主……」

 思い当たる節はある。

 女神に託された役目。

 それもまた救世主だった。

(つまり、なるべくして俺はALICEになったわけか)

 生まれる場所まできっちり管理されたうえでの転生だったらしい。

「救うってことは、当然だけど脅威があるってことだよな?」

「へぇ? 普通は、救世主であることに疑問を持つことから始まると思うんだけど」

「…………」

 助広の指摘のせいで、わずかに眉間にシワが浮かぶ。

 確かに、救世主という言葉をすぐに受け入れるのは不自然だったかもしれない。

 とはいえ、言ってしまったものは仕方がない。

「建物といいアンタらといい。普通じゃないしな。普通じゃない事情があってもおかしくない。だからとりあえず、全部聞いてから判断しても遅くないって思っただけだよ」

「――なるほど」

 一応、助広は納得したらしい。

「それなら移動時間の有効活用として、とりあえず一通り話すとしようか」

 ――といっても、詳しいことは後になるけれどね。

 そう前置きして、助広は語る。

「ALICEが救世主であるのなら、その脅威は《ファージ》だ」

「《ファージ》……」

 一瞬、明確な敵対者が存在しない可能性も考えていたが、どうやら戦うべき存在はいるらしい。

「これまた色々と端折ってしまえば、いわゆる化物だ」

 助広はあくまでポイントを絞ってそう話す。

「化物がいるのなら英雄が必要だ。その役目を与えられたのがALICE」

 ――こんなところかな?

「要は、化物を倒して世界を救ってくれって話さ」

「マジでめちゃくちゃ端折ってないか?」

「本質的に必要な情報なんてこれくらいのものさ」

 そう助広が笑う。

 彼の言う通り、ALICEの存在価値を知る上では最低限の説明をなしたといえるだろう。

 後で詳細を聞けるというのならば、今のところは問題ない。

「ほら着いた」

 気が付くと、天たちの前には分厚い扉があった。

 そこには暗証番号を打ちこむためのキーボードなどがあり、近未来的な印象を抱かせる。

「番号は後で教えるから、とりあえず――っと」

 助広が手早く数字を打ちこむと、扉が開く。

 風情を感じさせる外観とは逆に、建物内部は宇宙船の中にでも乗り込んだかのような落ち着かない雰囲気となっている。

 自動でスライドする扉を見ながらそんなことを思った。

「ここは?」

「戦闘訓練室だね」

「…………は?」

 思わず天は聞き返す。

 戦闘。あるいはバトル。

 今の発言が聞き間違いでなければ、あまりに性急すぎないだろうか。

「戦闘訓練室だよ。今から、君の潜在能力を測定する」

「あ、ああ……さすがに、いきなり戦いはしないよな」

 こっそりと天は胸を撫で下ろす。

 転生してから10分で、いきなりバトルは荷が重い。

 測定というからにはあくまで――


「もちろん実戦でね」


「ふざけてんのかお前!?」

 ――どうやら、呑気に構えてはいられないらしい。


 次回はチュートリアル戦闘となります。


 現在判明しているALICEメンバー

 ・天宮天

 ・瑠璃宮蓮華

 ・???

 ・???

 ・???

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