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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章 エピローグ終 ALICE END 

「「「「「「「乾杯~~~~~!」」」」」」」


 少女たちの声が響く。

 続くのはグラスがぶつかる音。

「半年ぶりとはいえ……感慨深いな」

 天はジュースを口にした。

 現在、彼女たちはある一室に集まっていた。

 ――()()()()のとある一室に。

 助広が離反した際、マザー・マリアの覚醒と同時に崩壊した箱庭。

 あの後すぐに復興が進められていた新しい事務所がついに先日完成したのだ。

 そして今日が、半年ぶりに箱庭へと帰ってきた記念日というわけである。

「なんというか、訓練室がなくなってしまったのは少し寂しいですわね」

「……もう、必要のない施設ですから」

 アンジェリカの言葉に彩芽はそう答えた。

 だが彩芽も少しだけ切なそうな表情を浮かべている。

 ALICEが《ファージ》に対抗する牙を研ぐための訓練室。

 それはもう、この箱庭にはない。

 彩芽の言う通り、今の天たちにはもう必要のないものだから。

 分かっていても――言い知れぬ虚無感がある。

 ――天宮天は女神マリアによって転生することとなった。

 その目的は世界の救済。

 それが成った今、天宮天に与えられた生きる意味はなくなったといっていい。

 これからは自分で決めた意味に従って生きていくことになる。

「私物ごとぶっ壊れたからな。荷ほどきの手間がないのは幸いだな」

 美裂は背もたれに体を預けてそう笑う。

 とはいえ箱庭の崩壊によって本棚にあった漫画類などは軒並み駄目になったらしいので、美裂のそれはちょっとした皮肉あるいは空元気なのだろう。

「ぁぁ――」「そう……ですね……」

 そんな美裂の言葉に沈んだ反応を見せたのはアンジェリカと彩芽だ。

 天の記憶が正しければ、二人は方向性は違えども私物へのこだわりは強かった。

 アンジェリカは洒落たインテリアや小物を多く持っていた。

 彩芽も調理器具をいくつも所有していた。

 天には詳しいことは分からないが、高価だった物や思い入れのあった物もあったのだろう。

 幸いにして天は箱庭生活も短かく、私物といえば本や服だけだった。

 そのため被害は軽微だったのだが――

「蓮華は大事な物とか大丈夫だったのか?」

 天はふと気になって尋ねた。

 それらしい話を聞いた覚えはない。

 だが3年もすごしていたのだから、大事な物もあったのではないだろうか。

「そうね。アタシの場合は必要だから買ったものばかりだから、買い直しさえすれば問題なかったわ」

「それに――」

「?」

 少しだけ蓮華が言いよどむ。

 そして彼女は小さく咳払いすると――


「大切な者なら……無事だったし」


「――――」

 さすがに天も、さらに追及するほど野暮ではなかった。

 彼女はただ頬を掻く。

 気恥ずかしさのせいか、二人の間に妙な静寂が舞い降りた。

「そ、そういえば月読。妙にあなたの荷物が多かった気がするんだけど?」

 このままでは不振だと思ったのか、蓮華が話題を転換する。

 話の矛先を向けられたのは月読だ。

「……そういえば妙に何個もダンボールがあったな」

「運ぶのをお手伝いいたしましたが、とても軽かったですわね」

 美裂とアンジェリカも気にはなっていたようでそう口にした。

 それに対して月読は微笑む。

「それはそうですよ。あのダンボールは空ですので」

「ダンボールそのものを運び込んでやがった……!」

 天は崩れ落ちそうになった。

 工作のため、空箱を運び込んでいたようだ。

「開くのが楽しみですね」

「開いても何も入ってねぇだろ……!」

 どうやら彼女のダンボール工作はまだ終わらないらしい。

 数日後には、彼女の部屋が素朴な色で埋め尽くされているのではないかと心配になってくる。

「それにしても……上手く誤魔化しましたわね」

「あんま上手くいってなかっただろアレじゃ」

「まぁ……うふふ」

 意味深な視線を交わすアンジェリカ、美裂、彩芽の三人。

 小声で何かを言い合っていただけなら気にしなかっただろう。

 だが直前、三人の視線が天たちを掠めたような気がした。

「……なんだよ」

「気味が悪いわね……」

 蓮華も気づいていたようで、三人へと疑いの目を向けた。

 一方で猜疑の視線を受けてなお、美裂は笑みを浮かべていた。

「やっぱさ、そろそろハッキリさせないといけないと思っていたんだよな」

「ですわね」

「確かに……気になってはいましたけれど」

「もうそろそろ、年貢の納め時という時ですね」

 さらに美裂たちに合流する月読。

 どうやら天と蓮華だけが知らない思惑が蠢いているようだ。

「なあ天、蓮華」

「な、なんだよ……」「なによ――」

 楽しそうな美裂の笑顔。

 それが妙に悪魔的に思えて、わずかに天は身構える。

 蓮華も不穏な気配を察知しているのか、表情が少し険しい。

 何があっても良いようにと心の準備を整える天たち。

 だが美裂の言葉は、ガードを上から貫くような強烈な一撃で――


「ぶっちゃけお前らって――付き合ってるのか?」


「「ぶふぅぅっ!?」」

 多分それは、頷くよりも肯定だった。

 

 ――この日を境に、天と蓮華の関係性が明るみになったことは言うまでもないことだろう。


 これにて本編は終了です。

 4月――最終決戦

 7月――新生箱庭の完成

 そして続く『越章 ALICE ALIVE』は8月のエピソードとなります。

 明るみになった天と蓮華の関係。

 二人を茶化しながらも応援する仲間たちとのエピソード『とある日の朝』編

 天と蓮華が生前に住んでいた町へと二人旅をする『ALICE ALIVE』編

 の二部構成となる予定です。

 合わせて10話くらいになる想定となっております。


 それでは次回は『とある日の朝』です。


・株式会社ALICEよりお知らせ

 箱庭では、ファンの皆様の声をお待ちしております。

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