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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章 22話 アリスブルーの空へ3

 青い剣が赤い一線を描く。

 肩から腰にかけ、斜めの傷が助広の体に刻まれた。

「ッッ……!」

 戦いの中で初めてのクリーンヒット。

 助広の体がわずかに沈む。

「まだ逃がさねぇぞ」

 天は地を蹴り、その場で回転する。

 今度は赤い斬撃が助広を襲う。

 大剣が彼を断ち切る直前――彼の姿がブレた。

 彼はこれまで以上のスピードでバックステップしたのだ。

 しかし――

「逃がさないって……言ったよな?」

 天は大剣を投擲した。

 大剣は赤い彗星となり助広に迫る。

「ちっ……!」

 舌打ち混じりに助広は十字架で大剣を弾く。

 天の能力をもってしても容易く隙を見せない。

 それだけ彼の戦闘センスが優れているのであろう。

 だが――限界はある。

「終わりだ」

 助広の背後で、クルーエルが足を振り抜いた。

 とっさのことに助広のガードが間に合わず、彼は脇腹を蹴られた勢いで吹き飛ぶ。

 天との戦いに集中するあまり、クルーエルへの警戒が薄らいでいたのだ。

「はぁッ!」

 天は、助広が吹き飛ぶ場所へと先回りした。

 そして飛んできた助広の背中を蹴りつける。

 前のめりになる助広。

 彼の首へと、クルーエルは消滅の太刀を振り下ろす。

「っ」

 助広はクルーエルの手首を押さえた。

 しかし、彼女はもう一方の拳を握り――彼を殴りつけた。

 今度は天が助広の脇腹を蹴る。

 天とクルーエルは彼を前後から挟み込み、何度も打撃を加えてゆく。

 助広も致命傷になりそうが攻撃は防いでいるが、多くの打撃に身をさらされていた。

(このまま――このままこいつを……!)

 天は一心に助広を殴りつける。

 ここで彼を討つために。

 これは予感だ。

 拡張された演算能力が警告する。


 ここで助広を殺さねば、戦局が傾きかねないと。



(これは……追い込まれているねぇ)

 助広は思う。

 全身が痛い。

 天とクルーエルに挟まれ、何度も攻撃を受けているからだ。

 身体能力の高い二人に囲まれるとなかなか抜け出せない。

 致命傷を防ぐのが精いっぱいだ。

 幸い、天と同じ戦闘力を有しているおかげで今すぐ死亡の危機があるわけではないけれど、いずれは――

(これは仕方がないね)


(2枚目の切り札を開帳しようじゃないか)


 殴打の嵐に揉まれ、助広は決意する。

 決戦のために用意した秘技。

 そのうちの一つの使用を決めた。

(そのためには――)

「「はぁぁぁぁぁ!」」

 天とクルーエルの声が重なる。

 二人の蹴りが、顔面と腹に炸裂した。

 耐える間もなく体が吹き飛び、壁に叩きつけられる。

「終わりだッ!」

「後悔の時間さえ赦さん」

 天とクルーエルがトドメの一撃を放つ。

 天は大剣と地面に突き立て、そのまま振り上げる。

 大剣は道路をめくりあげ、ガレキの津波となって助広を襲う。

 クルーエルの掌から影が噴き出し、幾条もの糸となる。

 影の糸は蜘蛛の巣のように広がり、助広を狙う。

 どちらを受けても命はない。

 どちらも、防がねばならない。

 いや――

 逃げ腰になる必要はない。

(それじゃあ、天秤を傾けようか)

 助広は懐に手を入れる。

 不穏な気配を感じたのだろう。天とクルーエルの表情がわずかに変わった。

 だが止まらない。

 攻撃の出だしそのものを潰す。

 そう決めたのだろう。

 だが、構わない。


「遺物:マザー・マリア」



「…………!」

 気が付くと、天は曇天を見上げていた。

 彼女は四肢を投げ出し、地面に倒れている。

 おそらく、ほんの数秒だが失神していたのだ。

(さっきのは――)

 原因は分からない。

 助広が何かを取り出した。

 次の瞬間、天たちをすさまじい衝撃が襲ったのだ。

 何をされたのか理解するよりも早く、天は意識を失ったのだ。

 天が隣を見ると、頭を振るクルーエルの姿があった。

 彼女も天と同様に意識を飛ばされていたのだろう。

(今のは何なんだ……?)

 天は助広に目を向ける。

 特に変わらない助広の姿。

 しかし彼の手には――肉片が握られていた。

 あれがさっきの攻撃のタネなのか。

 そう判断し、天は肉片に目を向けた。

 《悪魔の眼》。

 未来を読み解くほどの演算能力を転用し、正体不明の肉片の詳細を看破する。

「マザー……マリア?」

 あの肉片は、箱庭の地下に封じられていたというマザー・マリアの肉片だ。

 それが悪魔の結論。

 助広はそれを気に入ったようで――

「そう。これはマザー・マリアを殺しておいたときに回収した物なんだよ」

 彼は得意気にそう話す。

 助広は笑う。

「確かに君たちは強い。だけど、単純な暴力ならマザー・マリアが最強だと言っていい」


「今、僕はマザー・マリアと天秤を釣り合わせた」


 マザー・マリアの戦闘力を再現するため、彼は死体を持ち帰っていたのだ。

 そして今、助広はマザー・マリアと同じ身体能力を得た。

 ――マザー・マリアは一撃で山を消し飛ばすほどの力を持っていたという。

 もしも助広がそれと同等の力を手にしたのなら――

「もう三つ巴だなんて、まどろっこしいことをしなくていいよ」


「君たち程度の重みじゃ、この天秤は釣り合わないからね」


 助広、2枚目の切り札は『遺物:マザー・マリア』です。

 マザー・マリアの死体に《極彩色の天秤》を使うことで、マザー・マリアの戦闘力を手に入れる奥の手となります。

 

 それでは次回は『世界調和』です。



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