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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章 19話 軋む天秤

 天秤。

 それは両端の皿に置かれた物体の重さを比較する道具だ。

 《極彩色(プリズム・)の天秤(フェアリズム)》は均衡させる。

 敵と味方。

 両者を比較し、平等になるように重しを加えてゆく。

 だが――天秤には2つの皿しかない。

 ならもしも――比較すべき存在が3つあったのなら――



「…………?」

(《極彩色の天秤》の出力が安定しない……?)

 助広は戦いの中で違和感を覚えていた。

 彼の能力は敵戦力の拮抗。

 誰にも負けることのない能力。

 そのはずなのに――

「はぁぁぁっ!」

 天が大剣を振るう。

 クルーエルの背後から、助広まで届く間合い。

「っ…………」

 クルーエルは地面に擦りそうなほど身を低くする。

 天の斬撃はクルーエルの頭上を空振りする。

 だが、助広も天の間合いの中にいる。

 ――体勢的に助広は回避を選べない。

 ゆえに十字架で大剣を受け止めようとするが――

(まただ……!)

 助広の体が吹っ飛ぶ。

 拮抗――しないのだ。

 明らかに押し負けていた。

 この戦いが始まってから何度か同じようなことがあった。

 本来ならあり得ない現象。

 力と力のぶつかり合いで負けるはずがないのだ。

 均衡。平等。

 それこそが《極彩色の天秤》の本質なのだから。

 わずかな困惑が助広の脳裏をよぎる。

「……なるほど。そういうことか」

 均衡が崩れたタイミング。

 それを思い返してゆく。

 同じ現象を比較。

 相違点は除外してゆく。

 あの瞬間、そこにある類似点をピックアップ。

 その共通項こそが、疑問を解決する答えだ。


(――《極彩色の天秤》の()()()()()()()()()()()()()


 原因は、三つ巴の戦場。

 厳密に言えば、攻守が切り替わったタイミングだ。

 均衡の能力が発揮されなかったのは、すべて攻守が入れ替わった直後だった。

 助広VS天。助広VSクルーエル。という図式が目まぐるしく入れ替わる。

 今、彼は二人の敵と戦っているのではない。

 二つの陣営と戦っているのだ。

 《極彩色の天秤》はあくまで、天とクルーエルを別の勢力として勘定している。

 ゆえに、戦いの中で《極彩色の天秤》の出力が何度も切り替わっている。

 そのためほんの一瞬、クルーエルと均衡した状態で天と、天と均衡した状態でクルーエルと対峙するタイミングが生じてしまっているのだ。

 ――もっとも、それだけでこんな事態にはならない。

 一番重要なのは、天とクルーエルの戦力差だ。

(クルーエルと戦っているときに天ちゃんに割り込まれたら、身体能力の差で押し負ける)

 天の身体能力はクルーエルを越えている。

 スピードもパワーも確実に勝っている。

 ゆえに『クルーエルと均衡している助広』では天の攻撃を受け止めきれないのだ。

(天ちゃんと戦っているときにクルーエルに割り込まれたら、身体能力では勝てる。でも、そもそも彼女の影は防御不能)

 クルーエルが操るのは消滅の影。

 ガードという概念を無視した攻撃だ。

 身体能力で勝っているかなど関係がない。

 そんなスペック差を貫ける能力なのだから。

 とはいえ、1体1で対峙しているのなら対処は難しくない。

 防げないなら、躱せば良いだけなのだから。

(天ちゃんとの戦いで姿勢を崩されたタイミングを狙われたら、対処しきれない)

 だが天に意識を割いているタイミングとなれば話が変わる。

 油断ならない速度で攻めてくる天。

 攻撃をさばくことに注意を向けていたら、消滅の影を躱しきれない瞬間がある。

 普通の攻撃なら防御すればいい。

 だが、クルーエルの攻撃は防げない。

 結果として、彼女の攻撃が有効打となるのだ。

「まさかこういう方法で、僕の能力を機能不全に追い込むだなんて驚きだよ」

 素直に助広は感心の言葉を口にした。

 正直、こんな方法で《極彩色の天秤》を無効化しようとするとは思わなかった。

 ALICE。《ファージ》。

 取るに足りないと思っていた相手が立ちふさがる。

 平静を保ってはいるが、心の奥底にはわずかな不快感がくすぶっていた。

(とはいえ、この方法は絶対的な優位を保証するものじゃない)

 もっとも、悲観すべき状況ではない。

 別に助広だけが不利な戦場というわけではないのだから。

(この方法が成り立つのは、心の底から三つ巴の戦いに身を投じているからだ)

 心のどこかで『助広を協力して殺そう』という思いがあったら成立しない。

 すぐさま《極彩色の天秤》は天とクルーエルを同じ陣営として扱う。

 そうなれば助広は、天とクルーエルを総合しただけの戦力を手にできるはず。

 ――隙さえあれば誰であっても討ち取る。

 そういう気概を持っているからこそ、《極彩色の天秤》は天とクルーエルを別陣営の敵として認識したのだ。

(機能不全によるギャップも対応できないほどじゃない。上手く立ち回れば充分勝てる)

 天かクルーエル。

 どうにか片方を落としてしまえばいつも通りだ。

 問題ない。

 そう助広が判断したとき――


「――そろそろか」


 ふと天が立ち止まる。

 彼女は二本の大剣を地面に突き立て佇んでいる。

 悠然とした姿。

 その姿は、神々しささえ感じさせる。

 隙だらけなはずなのに、手が出せない。

 助広とクルーエルは動くことができず、ただ天へと視線を向けていた。

 そしてついに、天が口を開く。


「――――――――《青灰色(アリスブルー・)の女神(メシアライズ)》」


 天の新たな能力は、アリスの名前を背負った能力です。

 アリスブルーという色の存在を知った時点で、これしかないと思っていました。


 それでは次回は『アリスブルーの空へ』です。



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