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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章 17話 迫る決戦の時

 また投稿画面で放置してました。昨日分です。

「神楽坂がいるのは北に約5キロ地点よ」

 蓮華はそう言った。

 彼女たちがここで足止めされている間に、彼も移動をしているらしい。

 なんとかヘリコプターの追跡のおかげで見失わずに済んでいるが。

「ヘリでオッサンを監視したのは良いけど、今度はこっちの足がないぞ?」

 美裂は上空を見上げる。

 彼女たちの移動手段を追跡に使ったため、彼女たちが戦場に向かう手段がないのだ。

「アタシだけなら問題ないけど……」

 蓮華は考え込む。

 彼女は自分の体を雷に変換し、雷速で移動できる。

 確かに彼女一人なら追跡は容易だろう。

 だが蓮華だけが向かったとしても戦力が足りるのかというと疑問が残る。

「そうでもありませんよ?」

 皆が思案する中、そう切り出したのは月読だった。

「天さん一人くらいなら、全員で協力すれば戦場に送れると思いますよ」



「なんといいますか――」

 アンジェリカは金髪を指に巻き付ける。

 月読の提案。

 それに従い、天たちは準備を整えていた。

 女神との修行を終えた天。

 彼女を決戦の地へと送り出すために。

「端的に言うと……アホっぽいですわね」

 アンジェリカはぼやいた。

「常識にとらわれないと言って欲しかったのですけれど」

 しかし気にした様子もなく月読は微笑んでいた。

 彼女のアイデアはシンプルだ。

 まず美裂の《石色の鮫(ストーン・シャーク)》で傾斜を作り出す。

 空中へと伸びる傾斜はカタパルトだ。

 カタパルトの始まりでは、天の両腕を左右から彩芽とアンジェリカが抱きしめる。

 さらに蓮華が後方から天の背中に触れていた。

 そして本命である天は、大剣を両手で前方に突き出している。

 大真面目なのだが、見た目で行けば少し間抜けだった。

「そういえば月読さんは何をなさっていますの」

 ちなみに、月読は少し離れたところで腕を組んでいた。

「現場監督です」

「はい?」

「現場監督です」

 月読の役割は現場監督らしい。

「それじゃあ――行くわよ」

「おう」

 蓮華が天の背後から手を回し、大剣の柄に触れる。

 紫電が走る。

 大剣だけではない。

 岩で作り出したカタパルトにも雷撃のレールが浮かび上がる。

 雷撃による磁力操作。

 そこからさらなる応用を重ね、レールガンの原理で大剣を天たちごと上空に撃ちだすのだ。

「天。任せたわよ」

 蓮華の雷撃が強まる。

 磁力の影響を受け、大剣が振動し始める。

 そしてついに、大剣が勢いよく射出された。



「ぅお――」

 天の口から思わず声が漏れた。

 大剣に引っ張られ、天たちは傾斜を駆けあがってゆく。

 そして、天たちは斜めに撃ちだされた。

 空中に投げ出された天たち。

 射出速度のおかげで飛距離はかなり稼げそうだ。

 だが――まだ足りない。

「もう一押しですわね――《金色の御旗(ゴールド・フラッグ)》っ」

 アンジェリカがそう唱えると、突如として突風が吹いた。

 風は周囲にあるビルの影響で渦巻いてゆく。

 偶然。

 アンジェリカの《不可思技(ワンダー)》は偶然を必然にする。

 この突風も彼女の能力が引き寄せた未来だ。

「わたくしはここまで、ですわね」

 アンジェリカは天から手を離した。

 彼女が離れたことで、軽くなった天たちはさらに風の影響を受ける。

 より高く、より遠くへと運ばれてゆく。

「今度は着地か――」

 放物線を描く天たち。

 しかし軌道も下がり始め、目標にしていた高速道路も近くに見え始めた。

 あとは着地だ。

 高層ビルほどの高さからの落下は、さすがのALICEといえどもリスクが大きい。

 だが――

「大丈夫ですよ」

 天の隣には彩芽がいた。

 迫りくる地面。

 彩芽は体勢を変え、天を抱きかかえる。

 ぐしゃり。

 着地の音は、そんな生々しいものだった。

 真っ先にクッションの役割を果たした彩芽の両足が折れる音だ。

 それだけではない。

 足2本で相殺できるほど落下の衝撃は小さくない。

 できるだけ衝撃から守られるように抱えあげられていた天の体からも嫌な痛みが走る。

 しかし――

「《黒色の血潮(ブラック・ブラッド)》」

 天の体から痛みが消える。

 衝撃で骨に入ったヒビが彩芽の体へと移動してゆく。

「お願い……しますっ」

 着地のダメージをすべて肩代わりしながらも、彩芽は天の背中を押す。

 思いを託すように。

 ここから先の戦いは、絶対的な個の力が必要となる。

 だから皆は、天に希望を託してくれた。

「――ああっ。行ってくる……!」

 この思いを背負って、天は戦わねばならないのだ。



「やっとだよ」

 助広がハイウェイに降臨する。

 前方をふさがれ、古舘はバイクを停止させた。

「どうやらショートカットしてきたようだ」

「さすがに簡単にはいかないか」

 クルーエルは息を吐く。

 そして、バイクから降りた。

「古舘、もう戻っていい」

「――しかし」

「ここにいては巻き込まれるぞ」

 クルーエルは古舘を見つめる。

「私は、お前を巻き込みたくない。これは、私自身の誇りをかけた戦いだ。お前といえど、巻き込まれることは赦さん」

 これはクルーエルのための戦いなのだ。

「……ああ。分かった」

 彼女の意志を汲んだのだろう。

 少しためらいながらも、古舘は引き返してゆく。

 このまま離れていけば、彼を巻き込むことはないはずだ。

(すまないな)

 クルーエルは心の中で謝罪した。

 無論、古舘への感謝はある。

 それでも、彼の立ち合いは赦さない。

 彼の身を気遣うという意味合いがないわけではない。

 しかし、それ以上にこれは矜持の問題なのだ。

 助広との決戦は、彼女に赦された最後の権利。

 ゆえに、独占したい。

 もしもこの決戦に割り込む権利を持つ者がいるとしたのなら――

「あはは……やっぱり運命ってやつはあるみたいだ」

 助広は苦笑いする。

 原因は分かっている。

 クルーエルの視界の端にも見えているから。

 ――赤い閃光が。

「来たか」

「来たんだね」


「ALICE」「天ちゃん」


 クルーエルと助広は来訪者へと視線を向ける。

 そこに立っていたのは一人の少女。

 ツインテールにした赤髪を揺らし。

 身の丈ほどの大剣を二振り掴んだ姿。

 見ればわかる。

 彼女が、以前とは比べ物にならないほど強くなっていることが。


「――待たせたな」


 少女――天宮天は勝気に笑った。


アンジェリカ「わたくしはここまでですわ」

天「アンジェリカが離れて重量が……あれ? 思ったほど――」

彩芽「………………」


 それでは次回は『三つ巴』です。



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