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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章  7話 一瞬の均衡

 すみません投稿忘れてました。前日分です。

 今日はあと1話投稿します。

「――――――――」

 トラップが同時に起動する。

 矢が。毒ガスが。薬品が。

 助広へと多重に襲いかかってくる。

 躱せる場所は――ない。

 致命傷とはいかずとも、かなりのダメージを覚悟しなければならない状況。

(ここからの戦いを思えば、まだ余計なダメージを受けていられない)

 助広には目的がある。

 この戦いに勝てれば良いわけではない。

 もっと先を、到達すべき結末を思い描かねばならない。

 そのためには、このトラップ群を無傷で潜り抜ける必要がある。

「仕方ないなぁ」


「使おうか――切り札」


 最終決戦のために用意しておいた切り札の内の一つ。

 それを選択した。



「ッ……! なんだ……!?」

 それは爆発だった。

 激しい轟音が、風圧が氷雨を襲う。

(さっき――)

 氷雨の目は捉えていた。

 トラップに飲み込まれる直前、助広が自爆した。

 どうやら腹回りに爆弾を巻いていたようだった。

 見た目だけで言えば、逃げられぬと悟っての自害。

 だが、彼がそんなことをするようには思えない。

(爆風でトラップを弾く……? いや、爆弾のダメージのほうが大きい)

 重傷を避けるために即死したのでは意味がない。

(おそらく奴はまだ――)


「ふぅ。びっくりしたね」


 巻き上がる砂煙の中。

 彼は悠々と現れた。

 爆発などなかったかのように、動きには一切のダメージがない。

「なんだ……それもお前の能力か?」

「そうだよ。シンプルに《一瞬の均衡》って呼んでいるんだけどね」

 助広はへらりと笑う。

「攻撃を受ける直前『迫る攻撃と平等』になることで、攻撃の威力と肉体強度を釣り合わせる。つまり、あらゆる攻撃を無効にできるってことさ」

 これまでの助広は、己と敵とを平等にしてきた。

 しかし能力の対象を『攻撃』そのものに指定することで、その攻撃の威力と同じだけの『防御力』を手に入れる。

 ふざけた話だ。

 それが事実なら、助広にはあらゆる攻撃が効かないということになる。

「まあイメージほど無欠の能力ってわけでもないよ。タイミングがシビアだから、敵の攻撃に合わせて――っていうのは難しいんだよね」

 彼の言葉を借りるのなら『一瞬』の均衡なのだ。

 完璧なタイミングで能力を使用しなければならないのだろう。

 遅ければ身体強化が間に合わない。

 早ければ迫る攻撃の威力が最大値に到達しておらず、途上時点の威力に合わせた防御力しか獲得できない。

 それこそ一瞬のズレも許されない攻撃なのだ。

「トラップは爆風で吹き飛ばし、お前自身は『爆発と平等になる』ことで自爆のダメージに耐えたわけか」

「そうだよ。自分の意志で爆発するだけなら、タイミングは合わせやすいからね」

(状況は最悪……の中ではマシなほうか)

 状況は悪化している。

 勝負を決める予定だったトラップを無傷で潜り抜けられてはどうしようもない。

(形勢は不利だが、代わりに奴の切り札を見ることができた)

 絶対防御というべき力。

 アレを知らずに戦えば、思わぬカウンターを喰らう羽目になったかもしれない。

 そう言う意味では、有意義な攻防だった。

「今、撤退のこと考えていただろう?」

「…………」

 助広が見透かしたように言った。

 さっきの攻防には意味があった。

 しかし、ここから逆転は苦しい。

 なら次の行動は撤退だ。

 命を守り、確実に情報を持ち帰る。

 それが最善。

 だが最善であるからこそ、助広も同じ答えに至った。

「分かるよ。君なら、現時点で手に入れた情報を共有することに力を尽くすってね」

 助広は懐から何かを取り出した。

 それはリモコンのような機械であった。

「でも、もう終わりさ」

 スイッチは少なく、それほど複雑な端末には思えない。

 この状況から考えると――

「起爆スイッチか」

「ご名答」

 助広はリモコンを掲げる。

「《一瞬の均衡》を見せたら、これも見せようって決めていたんだ」

 彼の笑みが深まった。

「戦いなんて無意味になるような、ボードごと対局をひっくり返すような暴挙をさ」

「お前まさか――」


「今から、この路地一帯を爆破する」


 自分ごと――ですらない。

 この路地ごと氷雨を爆破するというのだ。

 自分が巻き込まれるのは大前提。

 しかし自爆のダメージは《一瞬の均衡》で相殺できる。

 デメリットといえば目立つくらいで、ほぼ無条件に氷雨を殺せる一手。

「君が相手なんだ。最初から、勝負の土俵になんて立つつもりはないさ」

 範囲攻撃で圧殺する。

 単純明快な答えだった。

「ちっ……!」

 氷雨は予備のサーベルを投擲した。

 世界がスローモーションになってゆく。

 拡張された時間の中で、助広の指がスイッチを押し込もうとするのが見えた。

 起爆を止められるのかはギリギリのタイミングだ。

「させないよ」

 助広はリモコンを持っていない手で十字架を振るい、サーベルを叩き落とした。

 もう起爆を止める術はない。


 そして、路地が爆炎に包まれた。


 神楽坂助広が最終決戦に向けて用意した切り札は『3つ』あります。


 それでは次回は『意地』です。



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