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転生したら赤髪ツインテールでした。しかもトップアイドル。  作者: 白石有希
終章 デッド・オア・ラストライブ
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終章  プロローグ 影は潜む

「んっ……」

 クルーエルは目を開いた。

 凍り付きそうなほど寒かった体は温かい。

 柔らかな布地が肌に擦れる。

「――これは」

 気が付くと、クルーエルは布団に眠っていた。

「どこだ、ここは」

 なかなか思い出せない。

 意識を失う直前、誰かに会ったような気がする。

 しかし意識が朦朧としていたため、記憶が薄いのだ。

(物好きもいるものだな)

 見てみると、クルーエルはシャツを着ていた。

 彼女は女性としてはそれなりに背の高いほうだろう。

 なのにシャツはかなり大きい。

 元の持ち主は、かなり大柄な人物だったということだ。

「! 目が覚めたのか」

 その時、近くのソファーから男が起き上がった。

 クルーエルに布団を貸したため、自分が眠る場所がなくてソファーを使っていたのだろう。

 律儀な男である。

「病院には行きたくないということだったが、あのまま無視するわけにもいかなかったからな。迷惑だったか?」

 男が立ち上がる。

 身長は2メートル近い。

 なにより特徴的なのは筋肉だ。

 クルーエルが着ているシャツと同じサイズであろう服が、弾けそうなほどに引っ張られている。

 マスキュラに劣らぬ筋肉だ。

「……誰だお前は」

 クルーエルは問う。

 外に倒れた不審な女。

 そんなものを拾ってきて、介抱するだろうか。

 ただの善意か。

 はたまた思惑があってのことか。

 それを見極めるため、クルーエルは男を見据える。

「ふむ。グレイトフル古舘といえば分かるかね?」

「知らん。分からん。誰だそいつは」

 クルーエルは冷めた目でそう切り捨てた。

 男――グレイトフル古舘は「知名度が……」などと言いながらポージングをしていた。

 あの動作もやはりマスキュラを彷彿とさせる。

「ならあえてこう名乗ろう。俺の名前は、古舘真治。本名だ」

 どうやらさっきの名前は偽名だったらしい。

 なぜそんなものを名乗ったのかは謎だが。

「まあいい……。古舘……だったか。どうして私をここに連れてきた」

 クルーエルは睨むように古舘を見つめる。

 嘘は許さないという意思を込めて。

 だが、古舘は彼女の圧力を意にも介さない。

 ただ歯を見せて笑う。

 ――白い歯がキラリと光った。


「人を助けるのに理由はいらないだろう?」


(人ではないんだがな……)

 彼が知らないのは仕方がないことなのだが。

「最初、君が怪我をしているのかと思った。だが、君は怪我をしていない。そして病気でもないと言う。とはいえ放置はできなかったからな」

 古舘は目を閉じて頷く。

 そして――頭を下げた。

「すまなかった。緊急事態とはいえ、レディを勝手に家に連れ込むことになってしまって」

 ――不安に思わせてしまっただろう?

 そう彼は言った。

 どうやらクルーエルの警戒心を、不安感からくるものだと解釈したらしい。

 しかし彼女は王だ。

 それも人間とは比べ物にならない戦力を持っている。

 相手が筋骨隆々の男だろうと委縮するほど惰弱ではない。

「君には、帰るところがあるのかな?」

 古舘が尋ねてくる。

 思い出した。

 そんな質問を、最初に会った時もされた。

「……もう、ない」

 そして、その答えは変わらない。

「そうか」

 古舘は静かにそう言った。

「君が良ければ、ここにいてもらっても構わない」

 彼はそう提案する。

(これをお人好しというのか……)

 初めて会った正体不明の女。

 そんな奴を家に招き入れ、何も聞かずに受け入れる。

 そこに企みがないのなら、底抜けの善人が馬鹿だ。

 いや。善人な馬鹿というべきだろうか。

(まだ、本調子には程遠いな)

 クルーエルは視線を落とす。

 眠っている間に体力はある程度戻っている。

 だが戦闘となれば心もとない。

 休める場所は必要だろう。

「そういうことなら……少しの間、世話になる」

「そうか」

 古舘は笑った。

 暑苦しい満面の笑み。

 だが、不思議と悪い気はしなかった。

 クルーエルは小さく息を吐く。

 仲間を失ったことで、傷心していたのだろう。

 だから彼のぐいぐいと踏み込んでくる態度が心地よかったのかもしれない。

「それでは――」


「友情のプロテインだッ!」


「?」

 立ち上がる古舘と、首をかしげるクルーエル。

 残念ながら彼女は『ぷろていん』が何かを知らなかった。

「……ぷろていん、とはなんだ?」

「我々の肉体と強化してくれる夢の飲み物だ」

「人間は、いつの間にそんな薬物を作り出したのだ……?」

 どうやら人間はまだまだ飛躍するつもりらしい。

「共に肉体改造しようではないかっ」

「……改造手術までするのか……?」

 人類は狂気に侵されていた。

 


 クルーエルとグレイトフル古舘。

 こうして、二人の奇妙な共同生活が始まるのだった。


 筋骨隆々なナイスガイ・グレイトフル古舘。

 彼は単純な筋肉男ではなく、システマやCQCなどの格闘術にも精通しています。

 そのため実はかなりの助広メタだったり――

・一般人なので《極彩色の天秤》の対象外

・対等条件なら、ほぼ確実に勝てる近接格闘能力

 多分、助広相手に20%くらいの確率で勝てそうという。

 いくつか隠し球があるので、助広が本当に負ける確率は低いとは思いますが。


 それでは次回は『不気味な静寂』です。



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