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7章  3話 始まりの場所

「そ、天ちゃ~ん☆」

 女神――マリアは何事もなかったかのように再び天へと駆けだした。

 どうやら天の言葉は聞かなかったことにしたらしい。

 マリアはにこやかに天を目指す。

 彼女はかなりの美少女だ。

 そんな彼女が両手を広げ、嬉しそうに近づいてくる。

 本来ならそれは喜ぶべきなのだろう。

 ――そう、本来なら。

「ふぬっ!」

「なんでぇ――!?」

 天はマリアの胸に肘鉄を撃ち込んだ。

 するとマリアは軽く吹っ飛び、芝生の上を後転する。

「なんでなんでなんでぇ!? なんでいきなり信者から信仰心ゼロアタックされてるの!? 信者なのに!」

「誰が信者だ!」

 マリアの言葉に天は抗議した。

「でも転生させたよ? 神の御業見せたよ? それで信者にならないとか失礼じゃないの?」

「押し売りで信者にするな!」

「うんうん。分かるよ。天ちゃんの場合は信者というより『死んじゃ』だもんね。転生してるし☆」

「上手くねぇんだよ!」

 久しぶりの邂逅。

 前から若干怪しいテンションだったが、どうやらマリアはこういう性格らしい。

 なんというか、気疲れする。

「ったく、なんで女に転生なんだよ……。おかげでどんな羞恥プレイを強要されたか分かるか……?」

 結局のところ、天がマリアに言いたかったことはこれだった。

 女性への転生。

 それに伴い、かなりの不都合や羞恥を強いられてきたのだから。

 ――最初は転生のために仕方のない処置なのかとも思った。

 しかし蓮華はそのままの肉体で転生している。

 つまり、天も昔のままで転生することが可能だったはずなのだ。

「………………」

「なんだよ?」

 無言のマリア。

 その意図が分からず、天は問いかけた。

 するとマリアは――

「え? や、やっぱり、責任者として、転生した子がどういう点が不満だったか聞きた……聞くべきかなぁ……みたいな☆」

「言わねぇよ!? なんでわざわざ傷口抉り直さないといけないんだ!」

 天は叫んだ。

 こんなところで羞恥の日々をさらす趣味はなかった。

「そんなぁ。これじゃあ、次も同じ失敗しちゃうかも☆ ………………わくわく」

「わくわくしてんじゃねぇ!」

「さあさあ、はよはよ」

「急かしても絶対言わないからな!?」

「……良いもん。あとで映像見て確認するから」

「そんなもん残ってるのか……!」

 どうやら監視付きだったらしい。

 日々への不安が増した。

 


「はぁ……もういい」

「いぇい、勝訴☆」

「執行猶予だ。無罪放免ヅラすんな」

 天が睨むも、マリアはどこ吹く風だった。

「………………えっと、誰なの結局」

 蓮華はこのやり取りについて行けていないようで、そんな疑問を口にした。

(マリアに見覚えがないのか)

 この世界も初めて見ると言っていた。

 どうやら本当に、蓮華は転生の際にここを訪れた記憶はないようだ。

「なあマリア」

「なにかなー?」

「蓮華を転生させたのはマリアじゃないのか?」

「え、あ、アタシじゃないよぉ!? 全然全然アタシじゃないよぉっ。怒られるのが怖くて嘘吐いてなんかないよぉ!?」

「分かった。嘘を吐いているのだけはよく分かった」

 天は肩をすくめた。

 不自然なほどの焦りを見せているマリア。

 どうやら蓮華を転生させたのは彼女に間違いないようだ。

「でだ。なんで蓮華を転生させたんだ? というより、なんで蓮華にだけ何も説明もしてないんだ」

 天はまずそう問いかけた。

 天宮天と瑠璃宮蓮華の差異。

 同じ転生者でありながら、マリアは蓮華とは会っていない。

 その理由が知りたかった。

「俺にはわざわざ会ったのに、蓮華には会わなかった。それって理由があるのか?」

 天の問い。

 それにマリアは腕を組んで唸る。

「んー。理由はなくもないけど、微妙に違うかなぁ☆」

「?」

「天ちゃんとわざわざ会ったことに理由はあるけど、別に待遇が違ったわけじゃないって話だよ☆」

「?」

 意味が分からず天は首をかしげる。

 天は女神から直接説明を受けた。

 蓮華は転生してから箱庭で説明を受けた。

 随分と待遇は違うような気が――

「んー。蓮華ちゃんにだけ説明をしていないっていうのは語弊があるかなあぁ」

「?」


「だって、天ちゃんにも大切なことは全然説明しなかったし☆」


 ――どうやら、随分と手抜きの説明をされていたらしい。

「――ふんぬッ」

「痛いっ!?」

 天の肘鉄が再び炸裂し、マリアの悲鳴が響いた。


 余談ですが、マリアは転生者を送り込む際、肉体を箱庭の死体安置室に紛れ込ませることで対応しています。

 天や蓮華のような、この世界に存在するはずのない死体がALICE化したのはそういう理由だったりします。


 それでは次回は『神の使い』です。



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